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2007.12.10

消費動向調査から漂う「疲れ」

博報堂が12月5日に消費動向調査の結果を発表した。
今年のキーワードは「原景消費」。
「自分の原点を見つめて体験し直す」という消費スタイルが進行したとのことだが、少々違うものも見えてくる気がする。

博報堂の調査結果全文は探せなかったが、以下で概要が確認できる。
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200712060018a.nwc

それによると、<デジタル技術の進化と商品・サービスの多様化により、過去に楽しみきれなかったあこがれや、やり過ごしてしまったことを、再び探してつながり直す機会が多く生まれたと>とのこと。そして代表商品は<日産「GT-R」などの国産高性能スポーツカーやデジタル貯金箱「人生銀行」、家庭菜園、エコバッグ、秘境ツアー>などだという。(上記URLに一覧表化されている)

「あこがれを手に入れる」「できなかったことをやり直す」というのはとてもポジティブな発想だ。だが、別の考え方をすれば、原点回帰ややり直しは先に進まないことも意味していないだろうか。
いや、人生の先に進まないというほどネガティブなことではない。消費に対してだ。
新しいこと、人とは違うことを求めて積極的な消費をするという、アクティブな生活者像があったとすれば、その対極にあるのは、過去の評価基準に沿ったものにあこがれたり、わかりやすもの、みんなと同じものを手に入れようとする姿と感じられるのだ。

代表例として紹介されている商品の数々。
トップの3つ、家庭菜園(栽培キット)、キッザニア、秘境ツアーはうまく解釈できないのだが、それ以下に気になるものが続く。
GT-Rは確かに 若き日のあこがれであった人も多いだろう。しかし、分類は「思い出の買い直し」とされているが、実際には購入に至らず、あこがれを思い出すだけの人が多いはずだ。それは、実際の購入対象にあこがれを超えるものがない状態であり、実購入意欲の減退ではないだろうか。

「人生銀行」「無限プチプチつぶし」は非本質的消費とも解釈できる。
実際の生活や人生にあまり関係も効用ももたらさないもので、無聊を慰める姿がそこに見える。

「メガマック」「ワンコインフィットネス」は「わかりやすい消費」の代表例とも解釈できる。
メタボリックやら様々な健康に気遣う食事が提唱され、それを遵守する重要性が繰り返し説かれる。しかし、「思い切り食べたい」という根源的な欲求には抗いがたい。その理性を超えた感情に「わかりやすく」応えた商品がメガマックをはじめとした、いわゆる「メガフード」だろう。
一方、やはり身体を気遣い健康志向を高めようと、フィットネスに通うといった志向も低くはない。しかし、フィットネスクラブの複雑な会員契約法や、トレーニングプログラムはいざ、入会・利用しようとすると高いハードルとなる。その点ワンコインは極めて「わかりやすい」。

残りの3つ、「ミッドタウン」「TSUBAKI」「クロックスのサンダル」。
みんなが良いと言っている。多少高いが外しはしないから購入する。そんな意識がこれらの商品からは感じられる。

実際には買わずにやはりあこがれるだけ。本質的でないもの。わかりやすいもの。みんなで外さない選択。それが代表例としてあげられた商品を別の解釈で考えたときのKBF(Key Buying Factor)だろう。
これらをつなぐものは、「面倒な消費はしたくない」「あれこれ考えるのは疲れた」という意識ではないだろうか。何年か前から「物欲の減退」を口にする人が増えている。もはやモノが満ちあふれ、本当に必要なモノはほとんどそろってしまったと。「消費に対する疲れ」。そんなキーワードで括れるような気がしてならない。

消費意欲の低減は「ニーズの低減」でもある。
ニーズとは何らかの不足状態であり、その不足状態を解消する対象物が「ウォンツ」である。
不足状態を感じないのは豊かな時代の表れではあろう。しかし、飽くなき好奇心があれば、何らかの不足状態は発生する。ところが、新しいモノを求めるのではなく、原点回帰だったり、わかりやすさや人との同調だったりするのはあまり前向きな感じがしないのだ。
際限なく欲求を満たすことは、昨今の環境負荷低減生活が推奨される中、慎むべきだろう。しかし、新しい消費の喜びを生活の張りにするようなポジティブな発想を持ち、その消費の対象物が現れることも望みたい。

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Comments

昔から「ハングリー精神」が大切だと言います。
 
いずれの点も、正に、この一言に集約できること感じています。
 
不足感がない、所謂、ボンボンは何も改善したり発想したりする意欲はありません。
現状に満足していると勘違いしているからです。でも、実際には、良い製品が発売
されると購入することも多い。実は、その状態が、各メーカーや企画会社の社員で
ある上流でない一般のサラリーマンにおいても当てはまる状態に陥っています。
従って、低迷しているんだと思います。
 
お金がほしい、モノが欲しい、旅行がしたい、何でも良いんです。
欠けていることがあれば良い訳で、お金持ちでも子育てから工夫すれば会得
できることですが、成人になって会社に入ってからでは残念ながら不可能だと
感じています。
 
そう言う意味では、最近の子供は豊か過ぎて、何でも揃っているからダメなんだと
思います。今の爺さんや婆さんたちが力があるのは、その経験を戦争によって
無理やり味わされたことが原動力になっていると思えてなりません。
 
世界の学力テストの結果を見てもそう感じることができます。先進国でも、後進国
でもなく、発展途上国は勉強に必死です。何でも良いから藁をも掴みたい気持が
万人にある証拠ではないでしょうか。
 
それから、回帰っていう現象ですが、これも悪いものばかりではないのではない
でしょうか。コラボレートと言う言葉が数年前に流行りました。温故知新という言葉
もあります。発展し過ぎて、訳が分からなくなったこと、あるいは、先人の考え、
言い伝え、諺に対して、あえて問うてみることで、それが、真に正しいか、時代に
マッチしているか等を再び確認することで、必要であれば、不足分をプラスしていく、
逆に不要ならマイナスして行く。あるいは、人間には、単に変化していることだけで
満足する人もいます。経済用語でファッション、ファンドというような分類のように
大筋は、単に、繰り返されている業種業界も存在する事実もあります。

Posted by: たぁ坊 | 2007.12.10 10:53 AM

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