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2007.11.05

制約条件を活かせ!:馬路村の伝説

「土地を自由に使って建物を作れ」といわれた時、広い土地と狭小な土地のどちらがユニークに仕上がるだろうか。要するに、制約条件をどれだけ活かせるかが問題なのだ。

筆者は現在、地域活性化のプロジェクトに参画している。どうやらその世界では結構有名なようなのだが、含蓄のある話を聞いたので紹介したい。
高知県の山間に馬路(うまじ)村というところがある。空港からローカル線と山間の道を辿った先にある。東京からは優に5時間を超える。時間的には海外、例えば上海よりも遠いのだ。
そこは日本有数の杉の産地である。つまり、本当に山の中。
その村が有名なのは、今は杉の産出ではない。「柚子」である。柚子の加工品。農協が行っている通信販売での売上が年間33億を超えるという。人口僅か1,000人強の村がである。
馬路村を有名にしたのは、無農薬栽培の柚子の各種加工品の通信販売。しかし、それは初めから狙ってのことではない。様々な制約条件をクリアしていった結果としてそこに辿り着いたのだ。


ご多分にもれず、馬路村も高齢化問題を抱えていた。そして、杉以外には柚子の栽培を行っていたが、畑は急峻な山肌にある。農薬をかけようとしても老人には無理な話だ。従って、無農薬栽培を選択することになる。

無農薬で、しかも手がかけられない柚子の果実。当然、不揃いで見た目がよくない。そのまま販売しても低単価となる。それ故、搾汁したり、煮たり、乾燥させたりと様々な加工を施すことになる。結果として、玉で出荷するより加工度が高いため、高単価・高利益となる。

さらに、当初は全国の物産展などに持ち込み販売していたが、瓶詰めの搾汁液は重い。出荷の問題もさることながら、購入客から宅配を依頼されることが多くなった。それに応えるため、宅配・通信販売を開始した。

村で作った各種の柚子加工品の人気が高まった。しかし、生産をすると柚子のいらない部分が廃棄物となる。狭い村のこと、その始末に困る。何よりもったいない。そして、数を出さないように様々な生産物を考案し、さらにバラエティー豊かな品揃えとなる。

更なる人気の高まりに、一目、馬路村を見ようと見学者が全国各地から集まってくるようになる。しかし、これといって見せるものがない。そこで、生産工場や受注現場などを見学スポットとして整備した。また、使われなくなっていた製材工場や鉄道跡も整備し、ちょっとした見学コースを造った。さらに注目が集まった。


上記のように、馬路村は一連の取り組みを狙ってやったわけではない。村が抱える制約条件の解決に努めながら、愚直に市場の要望に耳を傾けていった結果だ。
今、日本中に地域格差が満ちあふれている。そして、地方は「あれもない、これもない」と声を大にする。中央は「これ幸い」と、いわゆる道路などのインフラやハコモノを提供する。しかし、そんなものは何も生み出さない。いや、むしろ維持費の負担が増すだけだ。全国で問題になっている、整備不良の橋梁がその実態を如実に現わしている。

地方の活性化だけではない。ビジネス全般のこととして考えても、とかく制約条件に縛られ、その対応・解決を考える前に思考停止に陥っていることはないだろうか。
地方の小さな村の取り組みから学ぶことは大きい。

参考:馬路村WEBサイト http://www.inforyoma.or.jp/umaji/
    馬路村農協 http://www.yuzu.or.jp/

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Comments

 確かにそうですね。実際に体験したことがあります。

 企業内ベンチャーにおいてです。その事業に関して、社内では
誰でもできると軽蔑していました。でも、実際に事業化した人は
いませんでした。実際に、製品を試作して、お伺いを立てても、
意見をする人はほとんどいませんでした。でも、販売し納入を
始めると、いろいろと具申してくるんです。しかも、部分的にです。
 
つまり、制約や具体的に誰もが目にできる物があって部分的でも
良いから意見を募る、あるいは、本人が言わずとも職場の第三者
や利害関係のある取引先からの意見をそのまま自分の言葉で
あるかのように堂々と自慢げに発言するという実態があるようで、
今となっては、笑える良い思い出です。
 
金森さんは、元電通マンと言う事ですので十二分に御存知だと
思いますが公務員に限らず、比較的大手の民間企業も同じく、
実績主義というか発生主義というのか、何か問題があったとき
初めて意見する、予算化するという部分があって、何だか無駄を
感じます。こんなとき、仮払費用的な予算で対応する経営者が
プロジェクトを支えることを期待するのは愚門でしょうか。
 
プレゼンテーションや報告文書も誰にも分かりやすくするときは
突っ込みがあって許可が下りないのが、分かりにくくしておいて
管理者の自尊心をくすぐる、あるいは、プライドを傷つける言葉を
添えると承認が得やすいって部分にも似ているような気がします。

 
何だか「制約条件」には、いくつもの応用編がありそうです。

Posted by: たぁ坊 | 2007.11.05 10:36 AM

小生、馬路村で製作されて有名になった、廃木材利用のカバン、〝モナカ〟を使っております。

が、渋谷でのセレクトショップにて購入時に店側から言われたのは、保証は一切致しません、とのことでした。素材からの制約によるところが大きいため(廃材を圧着させているため壊れやすい)傷や割れが発生しても保証のしようがない、と。

しかし、少なからず値段を払っているにもかかわらず、保証はしませんと言われましてもねぇ。。その辺り、過度に顧客を扱う必要はないと思いますが、極端に顧客をないがしろにするような〝公務員〟的な扱いは如何なものかと思いますね。。

半年くらい前に購入以来、雨のとき以外、今でも愛用していますけどね・・・・(笑)

Posted by: KEN | 2007.11.05 11:00 AM

金森さん久しぶりです!

地域活性化はやっぱり奥が深いですね。
自分も今、ニ箇所の活性化を同時にお手伝いしています。
何処もすでに「制約条件」が整った?からこその相談です。
広告を業にする人間には結構それが快感?だったり・・・。
でもプロジェクトの皆さんとお話合いをしていると「企業人」
の方々とは一味ちがう雰囲気が自分は好きです。
こうしたピュアな気持ちを忘れないためにも、このお仕事は
続けて行きたいですね。

Posted by: sugai | 2007.11.05 06:33 PM

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