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2007.09.05

温暖化対策にもマーケティングの視点を

「ネクタイを外してオフィスの室温を28℃に」。・・・特別に暑かった今年の夏、多くの人がネクタイを外した。
しかし、室温は? クールビズ、何やら掛け声だけになっていないだろうか。

日経BizPlusの連載・ニッポン万華鏡(カレイドスコープ)が更新されました。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm

今回は日本最高気温の40.9℃が記録された日に書いた記事をさらに拡大して、
環境問題全般について考えてみました。

では、ご覧ください。


----------------<以下転載>---------------------


「温暖化対策にもマーケティングの視点を」


 岐阜の多治見市と埼玉の熊谷市で国内最高気温の“40.9℃”を記録した8月16日。筆者の事務所横、サラリーマンの街頭インタビューでおなじみの新橋SL広場の寒暖計は38℃を指していた。灼熱の広場をクライアントとの打ち合わせに向かうため、スーツを着てネクタイを締めて歩く。やはり人から奇異な目で見られる。そりゃそうだ。暑すぎる。


■クールビズ普及の原動力が「耐え難い暑さ」では・・・


 梅雨明けから一転して猛暑となった今年の夏。流通各社も例年の夏物セールの時期を遅らせてもう一稼ぎを目論んだ。内閣府が7月に調査し、8月上旬に発表したクールビズに関する調査では、賛成83.5%に対し、実践派は46.6%にとどまったが、梅雨明けが遅れた7月の調査結果は当てにならない。筆者は新橋だけでなく、ネクタイ・スーツ族のメッカ、丸の内界隈ものぞいてみたが、お盆休みでいくぶん閑散としたオフィス街でも、ネクタイ姿はまばら。多く見積もっても全体の3割というところか。


 環境省が鉦(かね)や太鼓で呼びかけてもなかなか弾みがつかなかったのに、猛暑一発で状況が変わるとは、やはり人間は生理的欲求の支配が強いということだろうか。しかし、暑いからネクタイを外す、では、暑さが収まればまた元通りだ。第一、クールビズの主旨はネクタイを外すことではない。温暖化防止のための消費エネルギー抑制策として、オフィスの室温を28℃以上に設定しようというもの。ともすれば本来の意味が忘れられがちであることは否めない。ネクタイを外し、さらに冷房でヒエヒエ感を満喫しているようでは、全く意味がないのだ。


■「社会的手抜き」をいかに防ぐか


 人はその性として「社会的手抜き(social loafing)」を行ってしまう。これは、「集団の人数が増えれば増えるほど、一人ひとりは本気を出さなくなっていく」という現象を言う。例えば学校で体育マットを何人かで運んでいる時、一人二人、こっそり力を抜いている人間がいるという状態。または、運動会の綱引きの時、全員が渾身の力を振り絞っているかというと、実はさほど本気を出さない人間も混じっているというケース。心当たりはないだろうか。


 環境問題で言えば、「北極の氷がかつてないスピードで消滅していることが示すように、このままでは地球環境が大変なことになる」と叫ばれている。正論だ。しかし、大変だと思いつつも、多くの人はイマイチ自分自身の問題として実感がわかない。正直なところ、ネクタイを外したくらいでは室温28℃は快適とはほど遠い。温度設定が自由になる部屋ではつい、エアコンの温度を下げてしまう人も少なくないだろう。


 人の気持ちを読み、どうしたら具体的な行動を促すことができるかを考えるのはマーケティングの基本であるが、同じことは企業のマネジメントや行政にも言える。社会的手抜きは、各自の責任や貢献度が、本人にも周りからも、分かりにくいために起こると言われている。


 ビジネスシーンに例えれば、営業担当者に日々、営業日報を入力しろと言っても、実行する人間は少ない。「個々の担当者が入力を怠ると業績見通しが狂い、全社的な判断を誤りかねない」と言われても、「自分がしなくても、他の誰かがやるだろう」「自分がやっても、結果は大して変わらないだろう」という心理が働くからだ。


 営業日報の入力率を高めるポイントは、担当者が入力・公開することで上司から適切なアドバイスや同僚から有益な情報をもらうことができる、セールスチャンスをモノにできる、機会損失を起こさない、などの個々人の得るベネフィットを具体的に理解させ、成功の実体験をさせることにある。そうすることでモチベーションの向上が図られ、日常的に励行されるようになるのである。


■ベネフィットを明確にし、成功体験を積ませる


 環境問題も同様だ。頭では「何かしなくては」という気持ちを持っていても、現実にはどの程度の効果があるのか見えにくいし、手間や我慢を伴うことも多い。人は易きに流れるものだ。こうした人々の背中を押すためには、いかに取り組みやすく、効果も見えやすくするか、といった一工夫がポイントになる。


 現在、ボルヴィックのソーシャルキャンペーンである「1L for 10L」が展開されている。「ボルヴィックお買い上げ1リットル当たり、10リットルの清潔で安全な水がアフリカの井戸から供給される」という仕組みであるが、これなら手間がかからないし、自らの貢献を定量的に確認でき、励みになる。


 単純なモチベーション喚起の方法としては、インセンティブの付与もある。連泊の際、タオルやシーツをそのまま使い続けることを呼びかけるホテルが増えている。洗濯による環境負荷軽減だそうだ。普段自宅でも頻繁に洗濯しているので、つい交換を頼んでしまう。だが、あるホテルでは交換を我慢すると、土産物コーナーで使える金券を配布したところ、好評で多くの宿泊者が協力したという。


 ある企業では「便座のふたを閉めると電気代が節約され、年間14,000キロリットルの温暖化ガスの削減と、800,000円の省エネが図れます」というステッカーがトイレに掲出してあった。残念ながら過半のふたは開放されていたが、試しに削減額をわずかであっても社員に配分してみてはどうか。それがどう変化するのか。まずは、数字などを用いその効用を具体的にすること。そしてそれが本人にとって何をもたらすのかを実感させることが肝要だ。


 インセンティブの付与だけでなく、スタイルとしての確立に成功している例は、スターバックスなどの「タンブラー持参」だろう。店の使い捨て容器を使用せず、タンブラーを購入し、持参すればドリンクが多少割り引かれる。しかし、利用者は割引だけが目的ではなく、カスタマイズもできるタンブラーのオシャレさや、持参し、環境負荷軽減に寄与しているという自負心が大きく作用していると言えよう。レジ袋削減のための、いわゆる「エコバック」も、最近は随分オシャレになってきた。街で持ち歩いても違和感のないデザインが、エコバッグ持参派のすそ野拡大に一役買っている。


 温暖化対策はもはや一刻を争う。しかし、「2050年までに温暖化ガスを半減」のような大きな目標を立てても、そのための仕組みが具体的でなければ、達成は望めない。環境対策では、まだ個人にひたすら我慢や手間を求めるアプローチも目立つ。7月7日に世界7大都市で同時開催された、地球温暖化防止を訴えたコンサート「LIVE EARTH」では、「小さなこと、できることから始めよう」というメッセージが繰り返されていた。異常気象が多発し、環境問題への関心が高まった今年の夏。どうしたら「社会的手抜き」を克服し実際の行動につなげることができるか、マーケティングの視点からも洗い直し、さらにきめ細かく対応していくことが必要だ。

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