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2007.09.26

「皇室御用達の傘に整合性の美を見る」:定番のヒミツ第6回

日本実業出版社の季刊誌「ザッツ営業」好評発売中です。

ザッツ営業 http://www.njh.co.jp/that/that.html

同誌に連載中のコラム「定番のヒミツ」第6回が掲載されています。

この連載は「世の中には常に売れ続ける”定番”と呼ばれるものがある。なぜ定番は売れ続くことができるのか。当連載はその謎をマーケティングのセオリーから考察する」という主旨です。
が、第1回の「BMW」以外は、「銀座伊東屋」「L.L.Bean」「万年筆・モンブラン」「江戸和竿」と金森の嗜好・持ち物リストの感が漂ってきましたので、次回からはちょっと装いを新たにしたいと思います。
なので、今回は最後の「金森ワールド」ですね。
ご覧ください。

以下、転載。

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「皇室御用達の傘に整合性の美を見る」

 世界一雨に濡れることを嫌うという国民性からか、日本の年間傘消費量は約1億本に登るという。全国民が毎年1本は購入している計算だ。その数はビニール傘や安価な中国製傘が無造作に使い捨てられていることも表している。
 対極にあるのが皇室御用達、「前原光榮商店」の傘である。通常の傘の倍、16本の骨が描く優美なシルエットを知る人は多いだろう。傘の中心部の「中棒」はその精度で開閉のスムーズさが大きく異なる。また、中棒に埋め込まれた「ハジキ」と呼ばれる上下2つのバネの指あたりの良さ。16本の骨の先端にある「玉留め」もフォルムの仕上げとして画一な形状ではなく、1つひとつ鋳造される。他にも細かなこだわりと技術が様々である。
 最近では16本骨のフォルムを真似た模倣品も散見されるが、細部を見ればその機能美の違いは一目瞭然であり、細部が組み合わさった全体としての完成度は比べるべくもない。「前原光榮商店」の傘は1万円台半ば~高価なものは20万円以上。模倣品とは桁が1つも2つも違うが、その価格なりの価値が厳然と存在する。

 ものづくりの現場では「神は細部に宿る」という言葉がしばしば用いられる。提唱者と解釈には諸説あるが、筆者は20世紀モダニズム建築家のミース・ファン・デル・ローエとする説を信じる。彼は無駄を徹底して排除した建築作品と「Less is more(より少ないことは、より豊かなこと)」という言葉を遺している。「神は細部に宿る」は無駄を削ぎ落とし残った部分にこそ、細部に至るまで妥協を許さず、素材や意匠を凝らすことで全体としての造形美が完成するという意味に解釈できる。「前原光榮商店」の傘にはまさに、神が細部に宿っており、全体としての優美さが醸し出されているのである。

 マーケティングのセオリーでは「安易に打ち手に走るな」といわれる。広告や製品パッケージをどうしよう、価格をどういじろうなどという施策を単独で考えるのではなく、それらが確たる全体戦略を前提に如何に整合しているかが成功のポイントなのだ。前原の傘や、ミースの建築同様、ビジネスの世界もまた然り。

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