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2007.07.02

宣伝会議寄稿「データベースマーケティングの実施のための最新基礎知識」

過日ご報告したとおり、宣伝会議6月1日号に金森の原稿が掲載された。
同社との約束の1ヶ月が経過したので、当Blogにて寄稿原稿をアップする。

その号の特集の一つは「プチセレブな人も大満足"細心"配慮型データベースマーケティングの活用法」であり、データベースマーケティングの基本の解説を金森が依頼されたというわけだ。
宣伝会議6月1日号の内容はこちら
特集の概要はこちら と こちら

では、以下転載。

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「データベースマーケティングの実施のための最新基礎知識」


■データベースマーケティングの定義とその歴史
 「データベースマーケティングとは何か?」一言で答えるならば、次の通りだ。「データベースに顧客の各種属性や購買履歴、行動記録などを格納し、顧客像を分析。そのデータから細分化した顧客セグメント層、又は個々の顧客に最適なアプローチを行う手法」。つまり、顧客を一律に扱わず、「優良顧客には良いサービスを。そうでない顧客にはそれなりに」という、顧客価値に応じたサービスやアプローチによって効果・効率の向上を図ることがこの手法の眼目である。
その歴史は古く、1960年代に米国の通信販売会社が顧客の購買履歴に着目し、購入日・購入頻度・購入額で顧客をランク分けする「RFM分析」が開発され、そのランクに合わせたサービスの提供やアプローチの展開が行われている。

■データベースマーケティングが機能する前提
 通信販売会社のように多様な商品を持ち、顧客が様々な属性を持ち、多様な購買行動をとる業種などではうまく活用できるものの、業種・業態によってはシステム構築をしたが成果が出なかったというケースも散見される。なぜか。それは顧客セグメントや、顧客に属性がうまく付与できないことに起因する。つまり、データベースマーケティングが機能する前提条件として、「顧客を区分(セグメント)する意義」がなければならない。
例えば、ごく特定の上顧客と、それ以外は余り差異のない一般顧客にしか意味のある区分ができなかったとする。その場合、特定の上顧客などは個別に担当者が対応すればよく、一般客は一律に扱わなければ効率の低下につながる。百貨店を例に取れば「外商」と一般の売り場の関係である。この場合、一般顧客のデータは単純なセールDMの発送ぐらいにしか使えないことになる。とかく日本においては高度成長期以来「一億層中流意識」が長く支配しており、一部の富裕層を除いては購買行動に大きな差異がないケースが多かった。データベースを活用し、個々の顧客や細分化されたセグメントに対する個別アプローチを展開するより、一律のアプローチの方が効率的なため、マスマーケティングが長く支配的であった所以でもある。

■変わる生活者の意識と新たなデータベースマーケティングの活用環境
 統計的に見れば、決して日本は本格的な階層社会に大きく変容したわけではない。しかし、好景気を背景に、従来の富裕層ほどの大きな資産があるわけではないが、比較的可処分所得が高く消費意欲が旺盛な「プチセレブ」とも呼ばれる「新富裕層」が出現しているのは事実だ。一方、所得格差指標の一つである「ジニ係数」で見れば、日本はまだまだ格差が大きい社会であるとは言えないのだが、日々格差拡大論が交わされている中では、一般の生活者の消費はさらに選択的になっていくはずだ。このような環境になってくると、決して一部の富裕層以外は全て「一般客」として扱うわけにいかなくなる。さらに、旧来の富裕層と比べれば、新富裕層は絶対数が大きくなるだろう。そうした場合、担当者が個別に張り付くわけにもいかない。データベースの出番だ。ターゲット顧客層の抽出と、購買行動や嗜好に合わせたアプローチを行うことは本来データベースマーケティングの要諦である。

■新たなターゲット顧客層発見の方法とは
 前述のようなターゲット顧客層を抽出し、最適なアプローチを展開するにも、まずその特定ができなければ始まらない。様々な分析方法があろうが、基本に立ち返り「RFM分析」でも十分だ。行数の関係で詳細な分析補方は割愛するが、基本的には個々の顧客の購買状況を把握すること。「どれぐらい直近に、どの程度の頻度で、累積でどのぐらい、購入があるか」という状況を明らかにする。これによって、「取引が最近も継続しており、一定以上の頻度と購入実績(累積額)がある」という条件をかければ「優良顧客」を抽出することができる。
さらに、サービス業ではなく、物品販売であれば、どのような品物を購入しているかということと、自家使用なのか、ギフトなのかという使用用途がわかればよい。何かの商品購入のお勧めをする場合、どのような好みを持っているかといった、いわゆるサイコグラフィックな項目を属性として把握しようとすることもある。しかし、人の好みなどは移ろいやすく、せっかくアンケートなどで聞き出したとしても、実際に使い物にならないケースが多い。それであれば、具体的にどのような品物を購入していたかがわかれば、類似した商品のお勧めができる。また、amazon.comのように、購買履歴をパターン化して、似通ったパターンを判別した場合、次に買いそうな商品をお勧めすることも可能だ。(協調フィルタリングという)。ポイントは、過度な属性項目の把握や、取引の中で自動的に蓄積できるデータ(トランザクションデータ)以外の、アンケートなどのようなアドホックに取得しなければならないデータに依存することを避けることである。手間・コストがかかる割には効果がない。過去のデータベースマーケティングの失敗原因は多くそこに存在する。

■ターゲット層を満足させ、購買のモチベーションを上げるためのポイントとは
 データベースを用いる利点の第一は、「顧客を個別識別できること」である。例えば、ダイレクトメール一つにしても、挨拶文中が自分の名前で語りかけられ、以前購入した商品についてお礼の言葉などが記されていれば嬉しいものだろう。今日ではWebサイトのマイページなどで珍しくもなくなったが、「パーソナライズ」と呼ばれるこの手法はダイレクトマーケティングの基本である。さらに重要なのは、前述の「新富裕層」にフォーカスして考えた場合、ほんの一握りの「富裕層」であれば、担当者が名前はもちろん、購入履歴や嗜好まで頭に入れて対応することができるだろう。しかし、それよりも絶対数が多いはずの「新富裕層」相手では、属人的な対応は困難だ。また、前項のように何かをお勧めする場合も、その履歴を活用すれば、顧客にとって「自分を理解し、利便性を提供してくれている」という満足感にもつながる。そうしたアプローチを重ねることで、顧客の満足感を高めていくことが、顧客との関係を永続化させ、購入モチベーションを高めていくポイントになるのである。さらに、様々なお勧めや御案内を行った結果、顧客がそれを受け入れたか否かの結果を蓄積していけば、企業が提供するサービスと、顧客が求めるもののズレを修正し、精度を高めていくこともできる。

 経済環境の変化から、生活者の意識が変化している今日、データベースマーケティングは「古くて新しい手法」として活躍することは間違いないだろう。

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