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2007.06.05

ヤマアラシのジレンマ

今日も昨日の「S.E.Eカード」の続きを記したい。
ある会合で、別の百貨店の担当者と話す機会があった。その折、「S.E.Eカード」に関して感想を伺ったところ、やはり「百貨店の基本思想からは乖離している感がある」とのコメントであった。
少し詳しく聞くと、曰く、百貨店の売り場での基本は「動的待機」というものであるそうだ。つまり、お客様の側でじっと立って待っていたら、その店員の視線がやはり気になる。そこで、店員はお客様の視界に入っているようにしながら、何らかの作業をしながら、声をかけられるのを待つ。もしくはお客様が声をかけて欲しそうなそぶりをするのを待つというものだそうだ。
女性のお客様の多くは、店員に声をかけてくるか、何らか声をかけて欲しそうなそぶりを見せることが多いが、例外的に男性客、特に紳士売り場では店員からの接触を嫌う顧客もいるとのことであった。そこで、その会合に居合わせた、百貨店で買い物をよくするという男性に聞いてみた。すると、「やはり声をかけられるのには抵抗があるが、首からカードをぶら下げるような無様な姿は絶対したくない」とのことであった。彼も、上記の「動的待機」の話を聞いていたので、「そうした“基本”があるのであれば、それで十分。むしろそれが徹底できていないのが問題」と至極もっともな意見を述べていた。
結局、その会合の参加者同士で考え、以下のような結論に至った。
恐らく高島屋によほど声をかけられることが嫌いで、かなりのクレームをねじ込んだ顧客がおり、また、同店もやはり接客力が落ちていることも否めない。そこで、「S.E.Eカード」の試行に至った。それは致し方ないことなのかもしれない。但し、「声をかけない“おもてなし”」という表現と、顧客に首からカードをぶら下げさせるという、非常なる違和感を与える方法論に間違いがあったのだろうと。

そのあと、金森の頭には「ヤマアラシのジレンマ」という言葉が浮かんだ。記憶の範囲で記述すると「ある寒い夜、二匹のヤマアラシがいた。二匹は寒いので、身を寄せ合いたい。しかし、近づきすぎるとお互いを針で傷つけてしまう。だからといって、離れては寒さに耐えられない。やがて二匹は試行錯誤を繰り返し、傷つけ合わず、寒くもない距離感を見出した」というもの。念のため、“Wikipedia”で調べてみる。<以下全文引用>「自己の自立」と「相手との一体感」という2つの欲求によるジレンマ。寒空にいる2匹のヤマアラシがお互いに身を寄せ合って暖め合いたいが、針が刺さるので近づけないという、ドイツの哲学者、ショーペンハウアーの寓話による。 但し、心理学的には、上述の否定的な意味と「紆余曲折の末、両者にとってちょうど良い距離に気付く」という肯定的な意味として使われることもあり、両義的な用例が許されている点に注意が必要である。<引用ここまで>
ははぁ。金森の記憶は後者の内容であった。

で、この「ヤマアラシのジレンマ」。百貨店の店員と顧客の関係に置き換えてみたい。店員の接客スキルも低下している。顧客自身もインターネットの普及や、ものが飽和した時代において“目利き”になっており、あまりアドバイスを必要とするシーンは少なくなっている。しかし、店員も全く顧客にタッチしないというわけにもいかず、顧客もたまにはアドバイスが欲しい時もある。どうだろう。どこか「寒い夜の二匹のヤマアラシ」の姿のようではないだろうか。
このままでは、ショーペンハウアーの「針が刺さるので近づけない」という状態だが、それを脱し、「紆余曲折の末、両者にとってちょうど良い距離に気付く」という結末をやはり望みたい。だとすれば、明らかに「S.E.Eカード」の試行は過りであるとの考えを変えるつもりはないが、「紆余曲折」の過程だとすれば、是非ともその過ちに早く気付き、別の手だてを模索して欲しいものだ。買い物の楽しみ。そして、店員の気配りと適切なアドバイス。正に百貨店の価値がそこにあるのは間違いないと金森は信じている。

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Comments

とてもおもしろく拝読しました。
そうそう、チェックしていると、動的待機ができていないお店が多いですね。これがうまくできなくて、結局は顧客を怒らせてしまって例があったのでしょう。
あと1つ思っていることがあるのですが、別に欧米社会に迎合すべきとは思いませんが、こんな取り組みが広がってしまった日には、ますます海外でのお買い物は日本人は奇妙な顔で見られることだろうなあ、と思いました。店員と目もあわせずに入店し、商品を触りまくって黙って出て行くというさま。目に浮かびます。。。

Posted by: 鈴木 | 2007.06.05 08:11 AM

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