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2007.05.30

「生き残れるのか?コンビニらしいコンビニ」

先日、青学の学生との会話から「コンビニの本質的価値」について考察した記事を掲出しましたが、最近特にコンビニ業界の厳しさに関する報道が多いので、もう一度整理をしてみました。


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「生き残れるのか?コンビニらしいコンビニ」

コンビニエンスストア業界の成長鈍化がささやかれて久しい。昨年夏に日本経済新聞社がまとめた「2005年度コンビニエンスストア調査」で既にそれは鮮明になっている。セブンアンドワイ・ホールディングス 鈴木敏文会長は「まだまだ成長余地はある」旨の発言をされているが、楽でないのは明白だ。そこで今回は、そのコンビニエンスストアが「顧客にもたらす本来の価値」とは何かから、「生き残る術」を考えてみた。

■業界内の過当競争激化は最高潮に
「成長鈍化」はやはり業界内での過当競争は激化が大きな要因であろう。筆者が10年以上前に「エリアマーケティング」を行っていたとき、コンビニエンスストアの出店候補地探しの常套手段があった。GIS(Geographic Information System=地理情報システム)を活用し、人口動態や各種商業統計データ、地図データをオーバーレイする。そして、「1キロ平方メートルのメッシュ内に夜間人口が5,000人~10,000人居住しており、同メッシュ内に競合となるコンビニの存在が1店以下である空白地帯」を探すというものだ。
しかし、今日、都市部でそんな「空白地帯」は見つけ出せそうにない。筆者の自宅は駅近くであるが、自宅を中心として半径200メートル以内に6店舗がひしめき合っている。  
加えて、ドラッグストアやスーパーの24時間営業など、他業態からの追撃も激しい。他業態を加えれば、筆者の自宅近辺の場合、その数は9店舗に登る。
とすれば、鈴木会長の言う「(業界全体の)成長余地」はともかく、個々の店舗のフランチャイズオーナーは「どうやって自店が生き残るか」と現状打破の一手を考えることが最大の関心事であろう。

■進む新業態への転換は正解か?
筆者は「苦しいときこそ、本質に立ち返る」ということを、どんなビジネスにおいてもお勧めしている。では、コンビニエンスストアの“本質”とは何か。それは、何と言っても「開いててよかった」である。日経新聞の「私の履歴書」によれば、鈴木会長が「コンビニをひと言で、と聞かれてとっさに答えた文句だ」と連載の第19回にあった。優秀な経営者は優秀なコピーライターでもあるのだなと、感心したものであるが、否、コピーレベルのものではない。“本質”を理解してビジネスを展開したからこそここまで繁栄したのである。
しかし、その「開いててよかった」は前述のとおり、もはや24時間営業化したドラッグストアやスーパーなど他業態でも生活者は享受できるようになっている。“本質”部分では戦えなくなった結果、最近目に付く動きが、いわば「新業態コンビニ」とでも言うべき展開だ。
ローソンが展開する「ナチュラルローソン」。「人と地球にやさしく、お客様の健康で快適な生活をサポートする商品を提供する」として、オーガニックやLOHASをイメージさせる品揃えと店舗設計で特徴を出し、新たなブランドとして確立を図っている。
一方、今までコンビニの品揃えとしてほとんど力を入れていなかった、「生鮮食料品の充実」に注力しているのが、「生鮮コンビニ」である。九九プラスが「ショップ99」という店舗ブランドを展開するや否や、各社が追随。ローソンは「ローソンストア100」、スリーエフが「キュウズマート」、am/pmジャパンは「フードスタイル」を展開。コンビニエンスストアと生鮮食品店の特徴を併せ持ち、さらに少量低価格で食材を提供する業態としてあっという間に街に根付き始めている。旧来の業態がじり貧であったコンビニ・フランチャイズオーナーがこぞって転換に乗り出そうという動きも見て取れる。
しかし、業態転換には大きなコストがかかるだろう。また、特に生鮮コンビニは既に同一商圏と思われる範囲に複数店舗が開かれ始めている。それだけが自店生き残りの道なのだろうか。

■コンビニエンスストア“本来の価値”にもまだ改善余地はないか?
 自宅近隣に多数のコンビニがあることや、得意のタウンウオッチで歩き回る合間に、各地の店舗で飲料を購入することなどから、筆者は相当な“コンビニ・ヘビーユーザー”である。入店したことのあるコンビニ店舗は相当な数に上るはずだ。そのヘビーユーザーからすると、フランチャイズオーナーは、業態転換を考える前に、自店の「サービスレベル」を見直すべきではないかと考えている。
 「開いててよかった」に続く、セブンイレブンの名コピーは「セブンイレブン、いい気分」であろう。こちらは現在、株式会社電通の常務執行役員である杉山恒太郎氏によるもので、コーポレートスローガンにもなっている。「開いててよかった」と「いい気分」はほとんどセットで人々の記憶に刻まれているに違いない。そして、「開いててよかった」がコンビニエンスストアの“本質”であるとしたら、さらに来店客が店舗で「いい気分」が体感できることもまた、コンビニエンスストアの“本質”たる価値なのではないか。
『convenientの語源は「共に(con)来る(venient)」であるため、「そばにいて(あって)便利な」が本義(ジーニアス英和辞典第3版)』である。まさにコンビニエンスストアの「開いててよかった」である。と同時に、convenientという言葉は「使いやすい」「便利な」の意味も持つ。そう考えると、「開いててよかった」と顧客が便利に利用して「いい気分」になれることまでがやはり“本質”なのだ。セブンイレブンだけではなく、それはどのコンビニエンスストアでも同じはずである。

■本質を見失うことこそ問題の原因
例えば、当たり前なサービスであるが、品出しをしている担当者が、少しでも会計待ちの客が溜まるとクローズしているレジをさっと開けて、「お次にお待ちのお客様どうぞと」誘導するといった対応。客を「待たせる」ということがあれば、顧客にconvenientでない状況を与えていることになり、それは“本質”にもとる。
最近はマニュアルが進化してきたためか、店舗でのオペレーションが磨かれてきているように思うが、そうした基本が励行されていない店舗も少なからずあり、二極化しているように思える。“コンビニ・ヘビーユーザー”たる筆者が様々な店舗を巡った経験から言えることだ。
基本が励行できていない店舗の従業員、時には「店長」と名札を付けたオーナーとおぼしき人物は、一様に「客」を見ていない。目の前には自分がやらなければいけない入れ替えるべき品物や雑誌の束がある。レジを一瞥はするものの、会計をする担当者は少なくとも1名はいるので、支払い待ちの客が2~3人並んでいてもさほど時間がかかるわけではあるまい。と、行ったような認識なのではないか。そんな店はどこか空気が淀んだように活気がない。業態転換をしても結果は同じだろう。
そもそも、「オーガニック」にしても、「生鮮」にても、全ての人がそれを望んでいるわけではない。個人的な感覚になるが、筆者はオーガニックやLOHASをコンビニエンスストアに求めようとは思わない。また、生鮮食料品もコンビニエンスストアよりは食料品スーパーに買いに行ってしまうだろ。それよりも、「コンビニエンスストアらしいサービスの充実」に注力してほしいと考えている。

■“本来の価値”に回帰した戦い方を!
 筆者が非常勤講師として教鞭を執っている講義でのことだ。その回は顧客満足に関する要諦を講義した。まず「顧客がそのビジネスに求める”本質的価値”」を理解すること。それを通じて「顧客に利便性と納得・満足を提供すること」。そのためには「顧客に対する理解を深めること」。すると、ある学生が講義終了後、質問に来た。「コンビニでバイトをしているが、自分の場合どういうことになるのか」と。そこで自分の考えを述べさせると、非常によい回答が返ってきたのである。曰く「自分はできるだけ担当している時間帯の馴染み客を覚えるようにしている。そして、例えばいつもタバコを買いに来る客にはレジに来たとき、注文される前に”いつもの銘柄”をスッと差し出すのだ」という。実に「いい気分」になれるconvenientなサービスではないか。
コンビニエンスストアといえば”マニュアルに基づいた画一的な応対”を思い浮かべてしまうが、「顧客の想定しているレベルを超える応対」を目指している”現場のアルバイト”の熱い思いを聞かされ嬉しくなった。と同時、他業態からの攻勢に遭い、安易な業態転換をするのではなくとも、まだまだ十分に戦えるのではないかと考えるに至った。
マニュアルが定められている場合、それは「最低限の顧客満足」を確保するため励行されるべきであり、それ基づいた一定品質のオペレーションが基本である。余り奇をてらった対応に走りすぎるのは問題だろう。しかし、マニュアル通りの応対を漫然と行うのではなく、それを超えようという担当者を採用し、さらに動機付けし、良好なサービスを提供させることは、店舗の経営にも大きく影響するだろう。また、アルバイトの従業員は同時にコンビニのヘビーユーザーである場合も少なくないだろう。とすれば、彼ら、彼女らがどのような対応なら自分自身でも嬉しいかをよく聞き出し、さらにマニュアルを磨き込んでいくことができれば、それは大きな武器にもなろう。

24時間営業という一番の特徴を浸食されたが故、「他業態の草刈り場になる」という業界全体の脅威論があるのは確かだ。しかし、個々の店舗の生き残りを考えるとき、同じ旧来型の「普通のコンビニ」でも繁盛している店とそうでないところ、優勝劣敗があることを忘れるべきではない。その理由は既に述べてきたとおりだ。「とにかく業態転換をして新たなチャンスを切り開こう」という短絡的な発想ではなく、本来の価値である「いい気分」を突き詰めることも忘れてはならない。

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