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2007.05.02

タクシー運賃値上げ:一体、誰のせいなのか

連休前半の終了と共に、好天も一休みの昨日。雨の中、濡れるうっとうしさも、さることながら、そんな天気は足の傷がまだ痛む。もったいないがタクシーを止める。
乗り込むと、金森と同世代とおぼしき中年運転手。いかにも「眠そう」。以前もこんなことがあった。ノルマ達成のため無理をしているのが容易に想像できる。眠られてはたまらない。こちらも変に多弁になり、いろいろと話しかける。もはや、乗せる方も、乗る方も命懸けである。
こんなにサービスレベルの低下した環境下でさらにタクシー各社は値上げを申請している。
おかしくないか?・・・と思っていたら、以下の報道が目に入った。
<東京都内のタクシー業者による平均18.7%の運賃値上げ申請について、内閣府は近く2度目の物価安定政策会議を開き、有識者らから意見をまとめる方向で調整に入った。(asahi.comより)>

タクシー業界を取り巻くマクロ環境を考えてみる。「PEST分析」を用いる。
・Political:政治的規制事項の影響要因はどうなっているのか?   
・Economical:経済環境はどのような影響を及ぼしているのか?
・Social:社会環境はどのような影響を及ぼしているのか?
・Technical:影響要因となるような技術的変化・革新等の要素はあるか?
PEST分析は以上の5つの切り口で客観的に環境分析を行う手法だ。
まず、「Political」である。一番大きいのはこの要素であることは誰の目にも明らかだ。一連の規制緩和の波に乗り、道路運送法改正法案が2002年2月1日から施行された。
これによって、新規参入や増車は今までの免許制、認可制から、車庫の確保など一定の条件さえ満たされれば自由にできるようになり、タクシーの供給過剰がおこった。
次に「Economical」であるが、上記の緩和策も、バブルの頃のように六本木交差点で空車を探して彷徨するような状況なら増車も歓迎だが、2002年当時はデフレ不況。企業はタクシーチケットを絞り、個人も呑んでも終電には間に合わせるといった変化があった。当時の政府や運輸省は、「(規制を緩和すれば、)サービスが多様になり、タクシーの利用が促進される」としていたが、市場や経済環境を無視していたとしか思えない。
「Social」も悪いことに先の二項目と呼応してしまっている。つまり、不況のさなか、利用者は減るものの、しかし、当時タクシー会社の新規採用・増車は不況下における失業者の受け皿となり、増車傾向に拍車をかけることになった。
「Technical」の要素としては、カーナビやGPSによって、効率的な運行や配車を行えるというメリットをもたらしてはいたものの、そもそも需要と供給のバランスが合っていなければ、そんなものに何の意味もない。
以上のことから考えれば、全く市場や経済状況を考慮せずに、機械的な「規制緩和」を行った政府と、恐らくは市場や経済状況はわかっていただろうが、「とりあえず増車をして、あとは運転手任せ」にした、タクシー事業者の問題であることがわかる。

現在、都内の運転手の年収は平均327万円という。確かに、低賃金を補うための長時間・過労運転が起こり、安全を確保できていないという悪循環がよくわかる。さらに、asahi.comの以下の報道も見逃せない。
<前回の物価安定政策会議は19日に開かれ、タクシー業界代表や国土交通省が、運転手の労働条件の悪化や燃料費の高騰など、値上げを申請した背景を説明した。
 しかし、内閣府によると、燃料費の高騰を反映させるだけなら2~3%の値上げで済む。同会議の委員からは「18.7%の値上げの根拠が不明」との意見が相次いだ。
 (さらに申請による)値上げによって乗客が減ったとき、運転手の賃金がどれだけ改善するのかといった試算の提示も次回の会合で業界側に求める。 >
そうなのだ、最初は燃料費の高騰をメインの理由にしていたはずだ。しかし、その高騰がとりあえずは一服を見せ始めると、「運転手の賃金」に論点をすり替えようとしている。しかし、値上げ幅は少なくない。もしこの通りの値上げになれば、利用者は長期的には戻ってくるかもしれないが、しばらくはビビッドに反応しさらに減少する。利用者が戻るまでのさらなる歩合給の減少を補うため、運転手の長時間・超過運転は一層進み、安全は脅かされる。

そもそも、政府の環境と需給を無視した「規制緩和」と、給料が運転手の歩合給メインであるため、とりあえず稼ぎ手である運転手と自動車を無計画に増やしたタクシー会社の責任は明らかだ。
それを利用者は「値上げ」され、運転手は「さらなる需要減」のリスクを抱え、利用者・運転手ともに安全が犠牲にされているのだ。タクシーを利用しない人も他人事ではない。自らがハンドルを握る車に「居眠りタクシー」が突っ込んでくるかもしれない。帰宅途中の子女の列に突入するかもしれない。
コトは単純に「値上げしたいです」「はいどうぞ」もしくは「ダメです」で済む問題ではない。しかも早急に手を打たなければ、いつ惨事が起きてもおかしくないのだ。

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Tracked on 2007.05.02 09:34 AM

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