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2007.05.16

なくしてわかる不便さ:KIOSK

何とも不便な日々が続いている。「何かのどがイガイガするので、飴が欲しくなった」。「電車の車内吊り広告で気になった週刊誌が欲しくなった」。「ちょっとのどが渇いた」。そんな時、JRのホームや駅舎内に設置された売店、KIOSKは確実のその欲求を満たしてくれていた。
それが相次いで閉鎖されている。大方、JRのSuica戦略の一環で、何かすごい次の展開をする準備をしているのかと思っていたら、正社員をリストラし、パート・アルバイトへ転換しようとしたが、採用がうまくいかずに人繰りができなくなって休業、もしくは閉鎖が相次いだという何ともお粗末な結果のようだ。
流通業や、流通に品物を卸しているアパレルなどのメーカーは各社が、競争力強化のため非正社員を正社員化するという流れに逆行するような展開。
KIOSKの店員の多くが正社員であったとは知らなかったが、狭い店内に押し込まれた数多くの品物の価格を把握し、客が差し出した品々の合計価格を計算し、突き出された代金から釣り銭を差し出すという「瞬間芸」は正に「職人技」である。貴重な人材であったことは間違いない。
最近ではSuica対応のPOSレジに置き換わり、その職人芸よりも随分と時間がかかるようになってイライラさせられた覚えがある。POSレジに置き換えたことにより、職人芸ではなく、「誰でもできる仕事」になったため、非正社員への転換・リストラへとJRは考えたのであろうか。しかし、提示した時給が昨今の人材難にしては随分と低く、採用が間に合わなかったということが実情のようだ。
KIOSKが最近流行の「駅ナカビジネス」で、利用者にとっては「あれば利用するが、なくても構わない」というレベルの存在だったら、「あーあ、戦略間違えちゃったんだ(苦笑)」という程度で済む話である。
しかし、KIOSKがない生活は多くの駅利用者にとって不便・不利益になっている。

ここの所、当BlogでP.コトラーの「製品特性分析モデル」を取り上げているが、今回もそれで考えてみたい。「三層モデル」である。
三層で考える時、「製品」は、「中核」「実体」「付随機能」の三つに分けられる。
「中核」とは顧客が製品やサービスの購入で手に入れたい主たる便益を表す。
「実体」とは製品のブランド、品質水準、デザインやパッケージといった製品の特性を構成する要素である。
「付随機能」とは、上記に加えて、製品の中核価値に直接的な影響は及ぼさないが、その存在によって製品の価値を高めている要素を表す。
ここで注意しなくてはならないのが、以前、日経のコラムを転載し図表入りで以前紹介した「五層モデル」におけると異なり、三層は一番外側の「付随機能」までが基本的には「顧客から求められている価値」であると言えることだ。
五層モデルの外側二層「拡大」「潜在」などは製品によっては「無くてもいい」要素だ。しかし、三層モデルは卵の「黄身」「白身」「殻」に置き換えられるように、いずれもなくてはならない存在である。

さて、KIOSKであるが、「駅」もしくは「鉄道」というビジネスにおいては、上記の一番外側である「付随機能」に相当する。
鉄道の「中核」は当然、「安全な運行」であることは間違いない。さらに「実体」は「正確な運行」であろう。(ちなみに、この中核と実体を取り違えると、悲惨な鉄道事故につながる)。
そして、「付随機能」は各種の駅の設備や職員の対応に相当しよう。その中で、KIOSKは既に様々な駅設備と共に、利用者の生活にとけ込み、鉄道の中核たる「安全な運行」には影響は及ぼさないが、それがあることによって「駅」という存在の利便性という価値を高めていたのである。

事業者側は、ほんの「サイドビジネス」と考えていたのかもしれない。また、鉄道事業に占める売上・利益からすれば細微な存在だったのかもしれない。
しかし、利用者にとってはなくてはならない存在として生活に浸透していたのだ。意識すらしていなかったが、閉鎖されたホームのKIOSKの店舗に張られた「改札外のコンビニ・New Daysをご利用ください」の表示を見て、「そんなワケあるか!」と利用者便益を無視した姿勢に憤りを覚えた。
今まで意識もしていなかったが、なくなった事による不便さで、その存在が大きかったことが初めてわかった。
事業性のほどはわからないが、利用者の立場に立って、早期に解決を望まずにはいられない。
卵は「黄身」「白身」が重要であるが、「殻」もなくては「卵」として存在し得ないのだから。

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Comments

金森さんどうも。いつも楽しく読んでおります。
僕も気持ちは凄く分かります。先日も駅で「あれ?」っていう経験をしました。

でも、JRは「駅スペース活用事業」というセグメントを出しているので、決算の視点からすると(≒株主の視点からすると)、決して「付随機能」ではなく目立ってしまう。
同セグメント内においては、キオスクを含めて、4つの項目があげられてますが、キオスクの営業収益はマイナスで、一方でNewdaysは大幅な黒字。
マーケティングを取るのか?株主を取るのか?
結構難題ですね。

Posted by: 一ツ木や文右衛門 | 2007.05.18 01:25 AM

>一ツ木やさん、コメントありがとうございます

>キオスクの営業収益はマイナスで、一方でNewdaysは大幅な黒字。
>マーケティングを取るのか?株主を取るのか?
>結構難題ですね。

マーケティングは目先の収益だけでなく、全てのステークホルダー(一般の利用者、株主、従業員まで)を見据えるべきかと思います。
KIOSKの赤字状況が看過できないレベルまで膨らんでいたのだとすれば、廃止はやむを得ないのかもしれませんが、もう少し「部分最適」ではなく、「全体最適」を考えられないものなのでしょうかね。
KIOSKの廃止によって一般利用客の利便性が損なわれるのであれば、早急にNewdaysで代替すべきなのですが、そちらも人繰りがつかない状況。
利用客をないがしろにして感情的に悪化させれば、JRのドル箱としてどんどん育成したい「駅ナカビジネス」全般も利用客からそっぽを向かれることにもなりかねないのではないでしょうか。
そもそも、計画性に乏しい人員整理が元凶かと思うと、どうにもナサケナイ気がしてなりません。

Posted by: 金森努 | 2007.05.18 10:53 AM

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