英語じゃなくて国語だろ?
気になるニュースがあり、某SNSの日記にも昨日記したが、改めてこちらで展開したい。
「ゆとり」見直しで素案-教育再生会議分科会 (時事通信社 - 03月14日 23:10)
素案の概略は、ゆとり教育見直しの具体案として、「授業時間数の10%増加」のための具体案、
(1)春休みや夏休みの1週間程度の短縮
(2)早朝授業の実施
(3)土曜日を活用した補充学習
(4)7時間目の授業導入・・・以上が提示されたというものだ。
「詰め込み教育」「偏差値偏重教育」への批判から「ゆとり教育」が導入され、
しかし、学童・学生の明らかな学力低下が見られるに至り、再度授業時間を増やそうとするものである。
「明らかな学力低下」となるまでに「前兆」はあったはずなので、もっと早期な対応が望ましかったと思うが、その試行錯誤の過程は致し方ないだろう。
また、自分の世代で考えれば、土曜間毎週半日授業があったし、宿題も「ドリル」が山ほど出て、泣きながらやった覚えがある。
学力向上のための第一歩として「授業時間数の10%増加」は、まぁ評価できよう。(もっと増やすべきだと思えるが)。
しかし、素案の最後に気になる部分があった。
『義務教育段階での英語学習の重要性を強調。小学校からの英語教育も「積極的に取り組むべきだ」と提言している。』とある。
「小学校からの英語教育」?
「授業時間数の10%増加」したとしても小学校で考えれば新教科である「英語」に時間を取られれば、その他の科目に割ける時間には自ずと限界が出る。
しかも、なぜ、「小学校からの英語教育」が重要なのだ?
英語じゃなくて国語だろ?
10%増加させるなら、全部国語の時間にすべきだ。
具体的には読書と感想文の執筆を宿題にし、その発表と、それに対する議論を授業時間に行うような取り組みもいいだろう。
現在、教育において問題になっているのは、「読解力の低下」のはずだ。
つまり、明確に「国語力」が低下しているのである。
「算数(数学)」も計算問題はできても、文章問題の誤答が多くなっている。読解力がないからだ。
読解力だけではない。「文章構成力」も低下しているはずだ。
大学で学生にレポートを書かせると、その内容は惨憺たるものである。
成績を付けねばならないという義務感以外にも、よほどの勇気と忍耐力、さらに集中力を奮い立たさねば、読む気にすらならないものがほとんどだ。
ビジネスの世界でもどうにもコミュニケーションが成立しない人が増えている。
相手の話を理解する力と、論理的な思考力が欠けているとしか思えない人も散見される。
そのくせ、企業が「新入社員に求めるもの」は、毎年「コミュニケーション力」が上位にランクされる。
「思考は言語によって構成される」。
ビジネスマンの間では、論理的思考が流行だ。「ロジカルシンキング」、「クリティカルシンキング」。
確かにビジネスの世界に出てから、さらに自らの思考と表現方法を見直し、磨きをかけることは価値あることだ。
しかし、幼少期にきちんとした「国語力」が身についていなければ、ぐずぐずの地盤に高層建築を作るようなものだ。
「国家の品格」の藤原正彦氏は「祖国とは国語」という本も執筆され、いかに「国語力」の重要性を説いている。
金森は英語コンプレックスから批判しているのではない。
まずは「国語」なのだ。
英語が重要なら、中学以降の教育のしかたを見直せばよいではないか。
繰り返すが、「思考は言語によって構成される」のである。
何故、金森がここまで国語の問題にこだわるかと言えば、金森の専門領域は「マーケティング・コミュニケーション」であるからだ。
これ以上、「コミュニケーションの取れない人」が増加することは看過できない。
以下の過去のコラムを一読されたい。
「文脈の崩壊をもたらす"小集団化"と"右脳ブーム"」
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2006/04/post_2beb.html
最後に「祖国とは国語」に加え、「言葉」に関した良書を紹介したい。
左のお勧め書籍欄にアップしておく。
太田 直子氏「字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ」。独特の切り口で言葉の乱れを指摘している。
さらに「読解力」に焦点を絞った書籍として、西林克彦氏の「わかったつもり」。
是非ご一読いただきたい。
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