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2007.01.03

販促会議「質問編」顧客視点”入門講座 

新年明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。


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年末に販促会議の最新号が届きましたので(年末進行)、バックナンバーを掲載します。
この連載も本稿で第9回。残り3回です。
実際の連載では10回まで進んでおり、11回まで原稿を入稿しています。
10回、11回はBtoBについてで、12回は総まとめでもしようかと考えています。

---------------------<以下バックナンバー>-------------------
 「ネットによってもたらされる多くの情報をどう取捨選択し、どうコントロールをすればいいのか?」・・・この「質問編」が始まってから何度か読者の方からいただいた質問である。これは企業と生活者との関係だけでなく、ネットユーザーである生活者同士の関係についても悩む方が多いことを物語っている。が、正直筆者は答えあぐねていた。突き詰めれば、「ネット時代における今後の情報の取り扱い方」「今後の商売のしかた」に行き当たってしまうからだ。それを今回は突き詰めてみようと思う。 
援軍は8年ぶりに改訂第2版が刊行された、我が心の師であり、ダイレクトマーケティングの開祖である、レスター・ワンダーマンの著書「BEING DIRECT」(邦題:ワンダーマンの「売る広告」)である。

■レスター・ワンダーマンと「BEING DIRECT」
 同氏は筆者前職のグループ会社のファウンダーであり、1967年11月29日にマサチュセーッツ工科大学にてダイレクトマーケティングを広く世界に紹介した開祖でもある。また、タイム誌が選んだ「20世紀の最も偉大な広告人」の一人にも列せられている。
その同氏の著書、「BEING DIRECT」が8年ぶりに加筆改訂され、日本版も発売された。同書を筆者が人に紹介するときには、「ビジネス冒険小説」と例えているが、正に冒険小説のように読み進めて行くにふさわしい生き生きとした彼の体験談と共に、ダイレクトマーケティングの真髄が記されている。そして今回の第2版では旧版の最終章にさらに一章、「第27章・インターネット」が加わっている。全編を読み直しつつ、最後はこのあたりを手がかりにしようと思う。

■ネットがもたらした情報格差の消失、そして氾濫
 ワンダーマン氏はかねてより「成功する全ての会社が知る19のルール」を提唱しており、その中に「The Customer, Not the Product, Must Be the Hero (主人公は製品ではなく顧客である)」と語り、中心的思想としてきた。しかし、今日その関係はどうなっているだろう。かつてはモノの売り手と買い手の間には厳然たる「情報格差」が存在し、それが売り手の利益の源泉にもなっていた。しかし、インターネットはそんな格差を根底から破壊し、売り手と買い手は対等になった。いや、ともすれば買い手の方が情報をたくさん持っているような時代に。つまり、ワンダーマン氏が予言した「顧客が主人公の時代」は既に達成されたのだ。例えば「kakaku.com」などのような比較サイトの登場は、売り手の利益構造を白日の下に晒すことに成功した。
 しかし、見方を変えれば格差は残っていることもわかる。「売り手」と「買い手」という関係においてではなく、情報を「持つ者」と「持たざる者」という新たな関係においてだ。「情報検索能力は現代のリテラシー(読み書きの能力)である」とまで言われ始めている。しかし、例えば情報を収拾することはできても、「判断」することは能力だけでなく、個々人の性格や今までの経験に依存する部分も少なくない。
集まってくる情報。その中の企業発の情報を除けば、それは、「売り手と買い手」という対立構造という判断軸を持たない、「個人が発信した情報」である。それが膨大になっている。さらに、個人が発信した情報は基本的には「個人自らが購入・使用し、そのファンになり、自主的に他者に勧めている」という情報である。元東京大学大学院教授・丸の内ブランドフォーラム代表の片平英貴氏が提唱している消費者行動モデル「AIDEES(Attention・Interest・Desire・Experience・Enthusiasm・Share)」がそれだ。(Experience(経験)し、対応の良さにEnthusiasm(惚れ込み)、人にShare(推奨)するというモデル)。ただし、これはさしずめ「性善説モデル」と言えよう。ここに推奨する個人の「商売っ気」は考慮されていない。
 ネットの世界では今日「アフィリエートブーム」である。ちょっとした「商売っ気」で本当に自分が気に入ったモノを人にも勧めてお小遣いにもなるというレベルならまだ良い。しかし、「アフィリエイトで月○百万円!」などという書籍が店頭に並ぶようになったら、ネット上で個人が推奨しているからといって、その情報の発信者はその商品にEnthusiasm(惚れ込み)という状態になっているか疑わしくなっている。
推奨情報の氾濫によって、再び生活者は判断基準を喪失してしまいつつあるのだ。

■どうすれば信用できる推奨関係を作れるのか
 以前、筆者は旧連載「顧客視点入門」の第3回にて推奨行為に関して、以下のように述べた。(この時は“推奨”ではなく“紹介”という語句を用いた)
『”紹介”は、紹介者が程度の差こそあれ、ある程度のリスクを負う行為であると理解すべきだ。例えば自分が勧めたものが被紹介者である友人・知人に気に入られなかったら、恐らく気まずい思いをするだろう。それが高額なものであったら関係が悪化するかもしれない。そのリスクを冒してまで紹介という行為に踏み切るのは、顧客自身がその商品・サービスに満足し、間違いないと確信しているからにほかならない。』
しかし、上記は主にリアル(オンフライン)の場合に限定される。ネットはその匿名性や伝播の範囲が広いこと、利用や情報の発信が気軽なことなどが相まって、以前筆者が述べたリアルの場合ほどシリアスな気持ちなくして推奨行為が繰り返されている。そして、それが今日の情報氾濫につながっているのだ。
では、どうしたらいいのか。一つの解決策は、「情報として置いておけば、誰かがクリックするであろう」という、垂れ流し的発信をネットユーザーは避けるべきなのだ。「自分は、このような理由で、このような人に、この商品を勧める」という「推奨の背景情報」を明確にすることだ。そうすれば推奨する側も成果が上がるだろう。
再びワンダーマン氏の「19のルール」の中から紹介しよう。「Answer The Question “Why should I?” (「なぜ私に?」に答えること)」。
つまり、情報を発信する者は責任を持って、「その商品をどのような理由で、どのような人に勧めるのか」を明確にすることを暗黙のルールとする文化の形成が望まれる。もちろんそこに悪意や虚偽が混在しないことは当然である。

■企業の場合の推奨(レコメンデーション)
 では、企業が行なう顧客への推奨(レコメンデーション)を考えてみよう。企業が顧客に行なうレコメンデーションはダイレクトマーケティング、CRMの華と言っていい。その成否で収益は大きく変わるし、顧客が一層、Enthusiasmするような推奨が実現できれば、顧客ロイヤルティーは高まり長期間の関係構築も望める。その答えこそが『「なぜ私に?」に答えること』である。これはワンダーマン氏が元来、企業と生活者との関係について述べたものである。一つの成功例としてはAmazonのやり方であろう。Amazonから推奨のメールや、Webサイトでの表示がある場合、必ず、本人に関連した推奨理由が明記されている。過去に購入した本と同じ筆者の新刊、同じジャンル、同じようなジャンルの購入パターンが多い商品等々、一見「なぜこれを私に勧めるのか?」と思っても、その理由が明記されているため、それをそのまま購入するか否かはともかく、納得はできるし推奨されたものの内容をよく吟味してみようという気にもなる。また、Webサイトにおいては、レビュアーといわれる読者であり推奨者の評価も記され、さらにその推奨文がどれくらいの人に参考にされたかの情報まで付加されている。少なくとも、筆者自身はこのやり方は非常に理に適っていると感じ、一ユーザーとしても気に入っている。

■レスター・ワンダーマンの説く「商売の原点」
 同氏は実は西アフリカ・マリ共和国に住むドゴン族の研究家としても名高く、氏の撮影した写真、収集した美術品はニューヨークのメトロポリタン美術館の永久コレクションとなっている。
注目すべきは、この度加筆改訂されたワンダーマンの「売る広告」の最終章、「インターネット」の中に記されているドゴン族の市におけるやりとりの様子だ。(以下抜粋)・・・「個々のセールスは、議論、値引き交渉、おしゃべりの混じったアフリカ的商談の儀式である。買い手と売り手の要望と期待が合って、交渉が合意された時、彼らは拍手と同時に『バハマ』という。文字通り『我々はよくやった』がその意味である」・・・つまり、情報を出す側、受ける側、売る側、買う側もお互いの手の内を出し合って、対話を重ね、十分納得と満足のいく着地点に至り商売が成立するのだ。何と、根源的ではあるが、忘れられている重要なことであろう。
 どうも、今日のネット文化は、急速に広がった空間的広さから「出会い頭」的な情報交換や商売が多く、また、利便性ばかり追求され、「納得・満足の形成」が情報の送り手と受け手、売る側と買う側の双方とも軽視し性急になっている。
 冒頭の読者からの質問、「ネットによってもたらされる多くの情報をどう取捨選択し、どうコントロールをすればいいのか?」には、レスター・ワンダーマン氏の紹介するドゴン流を筆者なりに解釈してお答えしたい。つまり、情報の送り手と受け手、売る側と買う側の双方が納得と満足が得られるまで、お互いの手の内を出し合って、対話を重ね「バハマ!」と言えるようになることだ。

※出典:ワンダーマンの「売る広告」 顧客の心をつかむマーケティング
レスター・ワンダーマン・著  藤田 浩二・監訳  株式会社電通ワンダーマン 監修
翔泳社・刊

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