« December 2006 | Main | February 2007 »

4 posts from January 2007

2007.01.30

販促会議 「質問編」顧客視点”入門講座 

販促会議の連載を掲出します。
予告通り、BtoBについて2回連続で執筆しました。
2月1日発売の本誌には第11回(通算第23回)が掲載されていますので、連載はあと1回で終了です。
現在、最終回を執筆しています。
2年間の長きに渡って、マーケティングの基礎を「顧客視点」で洗い直すという作業をやってきました。
全て書き上げたら、この連載原稿を書籍用に改変していこうと思っています。

-----------------------------------------------------------------------

第10回「我が社はB to Bの会社なのですが」

 読者の方から「我が社はB to Bの会社なのですが、その場合のマーケティングのキモとは何でしょうか?」という質問を頂いた。確かに当連載では主に個人顧客向け(B to C:Business to Consumer)寄りの論説が多かった。法人顧客向け(B to C:Business to Business)のマーケティングは、いくつかの点でB to Cと大きな違いがあり、そのままでは応用が難しい場合も少なくない。そこで今回と次回の2回にわたってB to Bにおける要諦を記す。

■まずはB to CとB to Bの違いを認識せよ
顧客が個人であった場合のマーケティングのキモとは何かと考えれば、今までの連載を思い出す以前に、自分自身の一生活者としての購入意思決定プロセスを考えてみればわかるだろう。まず、自分自身はその企業にとって、どの程度の上顧客であるかはともかくとして、数多存在する顧客の一人でしかない。しかし、法人顧客は業種にもよるが、対象となる数が限られている。つまり、B to Bの第一に怖いところは、B to Cと違い、一個客を喪失したときのダメージが大きいことだ。B to Cの場合でも顧客、特に上顧客は大切にしなくてはならないが、B to Bの場合、顧客一社の喪失がその企業の命取りにもなりかねない場合すらあるのだ。
次に、購買動機に注目してみよう。B to Cの場合は購入者自身が満足か何らかの便益を得ることを目的として、ある時は衝動的に、もしくは習慣的な購入が行われることが多い。対してB to Bの場合は、企業の利益を目的として、計画的かつ合理的な判断の下に購買が決定される。購買担当者はその取引の内容によって、自身の業務評価にかかわる場合もあるため真剣である。
さらに購買プロセスを考えよう。B to Cの場合、購買関与者は本人か、その本人と親しい少数の人間に限られ、購買決定までの期間も短い。逆にB to Bの場合、購買関与者は多人数であり、企業内の複数部門にまたがって存在することも少なくない。そのため、その調整や意思決定に時間を要することも特徴的だ。

■DMU(Decision Making Unit =意思決定構成単位)を見つけて攻略せよ
 さて、B to C とB to Bの対比によってその特徴がわかったら、まずはその中の一番目のキモをおさえよう。それは「DMUを見つけ出し、その各々に対する攻略方法を練ること」である。DMUを日本語に直すと「意思決定構成単位」などというわかりにくい表現になってしまうが、要するに企業内で商品(製品)を購入(導入)しようとする場合にかかわってくる人々の総称である。代表的なのは、導入の検討・申請をするキーマン。その申請によって購入(導入)の意思決定をするディシジョンメーカー。キーマンの検討やディシジョンメーカーの意思決定に何らかの影響を与えるインフルエンサーなどがいる。また、新規取引の場合は、キーマンに行き当たるまで突破しなくてはならないゲートキーパーが存在する場合もある。さらに、前述のキーマン以外のディシジョンメーカー、インフルエンサーが複数存在する場合もある。そして、各々の関心事が立場によって随分と異なるのが難しいところだ。

■DMU各々の関心事に注意せよ
 具体的な例を見てみよう。ある企業がコンピュータシステムを導入しようとした場合、キーマンはIT部門の担当者ということになるだろう。その担当者の関心事は、製品であるシステムの安定性(品質)とスペックの高さ。さらに、納期の正確性などにあるはずだ。また、システムのメンテナンスを外部委託している場合など、委託先の責任者は購入の意思決定の権限はないにしろ、直接導入したシステムのメンテナンスを行う関係上、インフルエンサーとしての意見を言うだろう。その際、メーカーの技術支援体制などを気にするはずだ。そして、キーマンとインフルエンサーは過去にそのメーカーと良好な取引を行われているのであれば、できるだけその企業を指名したがる傾向が強い。
その申請を受け、意思決定する部門の上司はディシジョンメーカーになるが、この立場の関心事は過去の取引関係などよりも、安定性(品質)とスペックの高さに絞り込まれる。要するに「結果」である。当然、購入(導入)の最終的な結果責任を負う立場である以上、当然だ。
さらに、インフルエンサーとして最もドライな存在が登場する場合もある。購買部門がその企業にある場合だ。担当部門長が意思決定したとしても、最終的に購買部門がOKを出さなければ、取引が成立しない。今日ではある程度の大きな規模の企業ではめずらしくない存在であり、その関心事はコストである。そのため、現場担当者が過去の実績や良好な取引関係などによって、特定企業との継続取引をしようとするのに対して、複数企業との競合環境を作りたがる。インフルエンサーとして購買部門が乗り出してくるか否かは大きな要因なので注意が必要だ。
以上のように、DMUを特定し、DMUごとに異なる関心事をおさえてアプローチすることがB to Bの場合非常に重要であると理解してほしい。

■新規開拓の場合:ゲートキーパー突破法を考えよ
 B to Bの場合、B to Cと異なり、購買関与者は多人数であり、企業内の複数部門にまたがって存在することも少なくないと先に述べたが、そもそもDMUがどこにどう存在するのか、新規開拓の場合は皆目わからない。又は、組織体制などがWEBで公開されており、おおよその攻略すべき部署がわかったとしても、この個人情報保護は進む今日、キーマンの個人名を特定して人的セールスをいきなり行うことはできない。そのため、B to Bの場合はセミナーや展示会の開催などによって、キーマンの名刺・アンケートなどを収集する活動が頻繁に行われる。しかし、そのようなコストや時間がかけられない場合、電話やDMなどでダイレクトなアプローチをかけることになる。「○○業務御担当者様」など個人名を特定せずに(スラッグタイトルという)届けられるDMを受け取ったこともあるだろう。担当者レベルにはまだこの方法でもアプローチできるが、役員やトップに対するアプローチを行おうとした場合は、秘書部門や総務部門が強力なゲートキーパーとして立ちふさがる。彼らの関心事は、役員やトップに無駄な情報で時間を浪費させないことである。そのため、DMはまず開封され、大方が捨てられてしまう。電話なら取り次がれずに丁重に断られる。
 以前、成功したトップ向けのDMアプローチは以下のようなものがある。まず、封書のあて先は秘書あてとして、レターにどのような主旨の案内であり、その企業にとってどのような便益を提供するものであるかを明確に述べた。そして、さらにもう一通封書の中に社長あての封書を同封し(メール・イン・メールという)、さらにそれを社長に秘書から手渡してもらう労に対するちょっとしたオファーも同封した。この結果、秘書はDMの主旨を理解し、社長にどのような主旨のDMが届いているかということを伝えて手渡してくれたのであろう。アプローチした企業の社長から、予想を大きく上回るレスポンスを得ることができた。つまり、ゲートキーパーというDMUは「役員やトップに無駄な情報で時間を浪費させないこと」という関心事に加え、「必要な情報は適切に伝達すること」であるという本質を考えたことが勝因である。

 以上、今回はB to Bのマーケティングの要諦としてDMUに関することを中心に述べたが、次回もB to Bのマーケティングを引き続き論説していきたい。

1_2

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.01.29

センター・アイデンティティーの確立に向けて:第3回

当社の期末が近づいているため、かなり厳しいスケジュールの日々を送っております。
というわけで、このBlogも更新できずにおりましたが、久々にバックナンバーをアップします。

LCAコミュニケーションズ社が発行しているコンタクトセンターの専門隔月誌「コンタクトセンターマネジメント」の連載、この連載は、金森の自説をコンタクトセンター向けにまとめ直して発表しています。

第3回を遅ればせながらお届けいたします。
あと1回、第4回で終了となります。


-----------------------------------------

第3回「顧客との良好な関係構築と自社の本質的価値をさらに深く考える」

 前号は筆者が事故で入院してしまったため執筆ができず、休載してしまった。まずはお詫びを申し上げたい。また、久々になるため、前回の内容を振り返るところから再開したい。
 前号ではセンター・アイデンティティーのステートメント化(明文化)のための準備作業として、第一に、センターに勤務するスーパーバイザーやコミュニケーターを巻き込みセンターの現状を的確にとらえるための環境分析から始めることをお勧めした。
 そして次に、センター・アイデンティティーの根幹となる「カスタマーインサイト」というフレームワークを解説した。その中でも、「Peace of Mind」とその要諦である「本質的価値」の理解が重要であると述べた。「自分が顧客に提供するものの真の価値はどこにあるのか」をとことん考える。そして「自分たちはこんな存在なんだ」という確信が持てれば、おのずと次に「それではお客様にはこんなふうに接しよう」という、とるべき行動が見えてくるからだ。
 しかし、残念ながら、筆致が至らなかったせいか、休載中に筆者のBlogを通じて質問のメールがいくつか寄せられた。そこで、今回はここまでのプロセスで伝え切れていない部分のモレ・抜けをなくすため、さらに別の切り口で論を補うこととしたい。

■鉄則:「顧客との良好な関係」は一足飛びには構築できない!
 前回示した、<Recognition><Time Saving><Peace of Mind>という3つの要素からなる「カスタマーインサイト」というフレームワーク。そしてその実行のためには、構成要素を逆さまに組み直しRecognition→Time Saving→Peace of Mindというステップで考えれば「どのように顧客を理解すべきか」もより明確になり、行動に移しやすいと記した。そして、読者から「今まで気付きませんでした。早速実行に移せます!」とメールを頂いた。だが、もう少し待ってもらいたい。ことはそう簡単には済まないはずだ。そもそも、「顧客との良好な関係」などというものは、一朝一夕で構築できればどの企業も苦労はしない。ものごとにはステップというものがあるだろう。
 マーケティングの教科書的には、顧客との関係構築のステップを5段階でまとめているものが多いようだ。「見込み客(Prospect)」→「顧客(Customer)」→「得意客(Clients)=反復購入や口コミに貢献する」→「支持者(Supporter)=企業に対する良き提案者」→「代弁者・擁護者(Advocator)=共感を示すサポーター」→「パートナー(Partners)=企業と共に新規機会を創出する」といった分類だ。しかしこのモデルだと少々複雑なため、筆者は3段階に簡素化して説明することにしている。しかし、5段階でも3段階でも注意しなくてはならないのは、このステップを「顧客進化」などと呼ぶことがあるが、「”顧客が勝手に進化する”のではなく企業側が“懸命に各種の働きかけをする”ことによって、”顧客との距離が縮まる”」のだという基本認識だ。その認識が逆転していると、顧客に対する認識も誤ったものになる。この点には留意し、顧客に対する謙虚さを忘れないことが重要なのだ。
 さて、その3段階での「顧客への働きかけ」の具体的な内容を見ていきたい。(図1)1_1

・Step 1:最低限のCSの達成段階
 「新規顧客獲得コストは顧客維持コストの5倍」などと一般に言われるが、その通り、企業にとっての最大のダメージは、マーケティングコストを投下し、せっかく商品の購入などの関係が構築できた顧客が離反することである。離反を防止するには、先の「カスタマーインサイト」の第一の要素”Recognition”つまり、「顧客を理解し、適切なケアを行う」というポイントを怠らないことが肝要である。それによって最低限のCS(Customer Satisfaction =顧客満足)は達成され、顧客の不満が解消。離反防止ができる。
・Step 2:満足度の向上段階
 一度顧客になってもらったら、その顧客には再度購入してもらいたい。そのために第一段階のステップを踏んできたのだから。企業の収益構造(レベニューモデル)として、再購入を前提としたマーケティングプログラムが構築されている場合も少なくない。つまり反復購入なくして早期に離反が起これば、マーケティングコストのROI(Return On Investment =投資対効果)は赤字となってしまう。確かに一度自社の商品・サービスを購入し、使用体験を持つ顧客であれば、初回購入に踏み切らせることよりも壁は高くはないだろう。しかし、再購入・反復購入という壁は一見低そうに見えるが厚く、突き破ることは難しいのである。なぜなら、関係ができたばかりの顧客の側から見れば、特段不満のない企業との取引を新規の他社に変える理由はないが、かといって、何が何でもその企業から再購入する理由もないからだ。これは、購入に際して関与度の低い商品の場合、より顕著である。ではどうすればいいのか。Recognitionは当然として、Time savingの要素を忘れないことが肝要だ。顧客に対してタイミングよく適切なお勧め(レコメンデーション)を行い、その商品の買い換え、または買い増し(アップセリング)、もしくは関連商品の購入(クロスセリング)の必要性を感じさせ、納得してもらい、購入結果に満足してもらうのだ。その際には、むやみやたらとお勧めを繰り返すのではなく、「顧客に最も必要なものを提供する」という基本精神を忘れないことである。
・Step 3:満足度の最大化段階
 反復購入を続けてくれる顧客と企業の間には次第に信頼関係が生まれ、強固になっていく。そして顧客がファン化する。この段階までくれば、顧客と企業の最適な関係が維持されさらに拡大されていくことになる。つまりPeace of mindが達成された状態だ。ここに至るまでには前段階でいかに努力したかが重要であり、最初からこの段階を狙ってできるものではない。さらに前の二段階と大きく違うことは、2段階目までは企業側の努力で顧客の背中を押すことができるが、最後の一段は、顧客自身が「納得と満足」を原動力として、自らの意思で階段を上がってくれる以外にないということである。
 しかし、この段階に至ると企業にとって嬉しいことに、顧客が企業(もしくは企業側の担当者)に対して積極的にコミット(関与)してくれることだ。つまり、顧客自身が満足している商品・サービスを友人・知人に勧めてくれるのだ。さらにこのタイミングを見計らって、何らかの紹介インセンティブを付与するMGM(Member Get Member =知人紹介)のプログラムを行うと非常に効果的である。

■「本質的価値」の理解のためにマーケティングの基礎で再考する①:STPの“P” 
 「カスタマーインサイト」というフレームワークにおいて、最も胆となる部分は、「いかに自社の“本質的価値”を的確に理解・定義できるか」ということだ。しかし、本当に理解することはなかなか難しい。そこで、従来のマーケティングのセオリーの中から近い考え方に触れることによって、理解を深めてみよう。
 まずは、マーケティングの基本中の基本である"STP"(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)である。ここでは中でも「ポジショニング」が重要だが、まずは一通り見ていこう。(図2)2_1

 セグメンテーションとは、一般にそれに続くターゲティングにおいて、どのような顧客層を狙うのかを検討するための下準備であると考えられる。市場を幾つかの同じような「集合体」に分類するために、ジオグラフィック(地理的要因)=地域・人口密度等、デモグラフィック(人口動態的要因)=年齢・性別・所得・世帯規模・ライフステージ等、サイコグラフィック(心理的要因)=ライフスタイル・ロイヤルティー等の変数を用いることが一般である。そしてSTPセグメンテーションが完了したら、次は「どのような市場を狙うのか」というターゲティングを行うのが一般的である。
 そして次がポジショニングであるが、実はこのポジショニングこそSTPのうちで最も重要なパートであると言っても過言ではない。なぜなら、この後、具体的な「打ち手」を考えるには、自社及び商品の市場におけるポジショニングを明確に定義していなければ、それを検討することができないからだ。いや、むしろ「ポジショニング」がはっきりしてさえすれば、自ずとどのような顧客層に向けて、どのような売り方をしていけばいいのかも自ずと明らかになる。一つ企業事例を示すが、その典型がドイツの自動車メーカー、BMWである。同社は自社のポジショニングを「究極のドライビング・マシン」と定義し、そのポジショニングに反しない車作り、販売現場での応対、広告コミュニケーションと全てに一貫性を持たせ、それに共感する顧客層を確実に取り込んで離さないことで成功している。
 お気づきであろうか。この「ポジショニング」が明確になっていれば、「本質的価値」の理解がしやすいのだ。一度、自社及びその製品・サービスのポジショニングがどのように定義されているか確認してみることをお勧めしたい。

■「本質的価値」の理解のためにマーケティングの基礎で再考する②:製品特性分析
次に、マーケティングの基本ということであれば、やはり大家・フィリップ・コトラーが示した「製品特性分析」でも考えてみたい。同氏は製品の特性を分割し、「中核(ベネフィット)」「一般製品」「期待された製品」「拡大された製品」「潜在的製品」の5層に分割して様々な角度から見る方法を説いた。しかし、この5層だとやはり少々複雑なため、今回はこれも3層モデルに組み替えて考えてみよう。(図3)3_1

製品を「コア」「形態」「付加機能」に分割する。こうして考えてみると、「コア」が「本質的価値」に意味としては近くなる。それは、顧客に提供するべき中核たる「ベネフィット(便益)」である。それを取り巻く「形態」は、「ベネフィット(便益)」がどのような提供形態取っているかを表し、「付随機能」はさらにどのような提供形態に付加的な要素が加わっているかを洗い出すことができる。
具体例を挙げてみよう。「自動車」という製品を考えたとき、「コア」を簡単に定義すると「移動手段の提供」ということになる。そして、その移動手段がガソリンエンジンという内燃機関を備え、四輪で移動する「自動車」という形態で提供され、その自動車の基本性能としての安全性や移動スピードの速さ、故障をしないという製品品質なども「形態」の一部に含まれる。さらに、軽自動車である場合は手軽なことや維持費の安さ。プレミアムカーであれば、その高品質さとステータスなども品質・特徴として「形態」の一部として含まれる。さらにその外側にある「付加機能」は、アフターサービスや品質保証、そのメーカーとしての信用力などが重要となってくるだろう。
この製品特性分析は、さらに自社及びその製品・サービスの3層構造を、競合する業界・企業・製品・サービスと比較すると、より各要素が明確になる。(図4)4
特に、先の例で言えば同じ自動車業界同士の比較を行なうよりも、より幅広に競合の定義を行ない比較すると「コア」を中心とした差異や同質点が見えてくることによって、思わぬ競合を発見できる場合もある。
これも具体例を挙げよう。「自動車」の場合、「コア」を簡単に定義すると「移動手段の提供」であった。しかし、「移動手段の提供」であれば、あらゆる乗り物や交通機関が同じコアを持つことになる。その場合、考え方は二つある。一つは、その外側の提供形態を考えれば、移動の早さ(スピード)や航続距離を考えれば、自転車やスクーターは競合とはなりえなくなる。また、自ら運転することや所有することを考えれば、公共交通機関は競合ではなくなる。そのように提供形態に注目して競合を絞り込んでいくことが一つの方法だ。しかし、顧客が「移動手段の提供」という「コア」の実現のための提供形態として、「移動の早さ」「航続距離」「安全性」などのみに注目していた場合、自家用車を購入するか、タクシーや列車・新幹線・飛行機などを頻繁に使うかといった選択肢も考えられ、公共交通機関にお金を払うということも「自動車の購入」ということに対しては「競合」となりえてしまうのだ。その場合、第二の考え方に切り替えてみたい。即ち、「コア」の定義をもっと明確にするのだ。単なる「移動手段の提供」に加えて、自社の製品=自動車は顧客に「どのような移動の体験」を提供するのかと考えればよい。その際、外側の提供形態や付随機能の要素まで取り込んで補完してしまっても良いだろう。本来のコトラー理論とはだいぶかけ離れてしまうが、今回目的としている「自社、及びその製品・サービスの本質的価値」を探るためには有用である。前述の分析をそのような観点で、是非一度実施してみて欲しい。

次号では、さらに自社にとっての理想的な顧客とはどのような顧客なのかといった、センター・アイデンティティーのステートメント化(明文化)のために欠かせない要素をさらに掘り下げていく。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2007.01.05

どうでもいいことですが:Amazonのレコメン

金森はアマゾンのかなりのヘビーユーザーです。
そのかいあってか、以前はなかなかしっくりくるレコメン(商品推奨)はなかったんですが、最近ではかなり「これは!」というものが多く、メールやサイト内で出されるお勧めによって商品を購入していました。

が、今日、メールで久々に「大外れ」なレコメンがきました。
あまりに面白いので、以下に転載します。

---------------------------------------
Amazon.co.jpのお客様へ、

Amazon.co.jpで、以前に『アルプスの少女ハイジ 劇場版』をチェックされたお客様に、DVD『日本沈没 スタンダード・エディション』のご案内をお送りしています。 DVD『日本沈没 スタンダード・エディション』、2007年1月19日発売予定です。 今なら¥ 997OFF。ご予約は以下をクリック。
---------------------------------------

アマゾンのレコメンは、似たプロフィールや購買傾向、サイト内行動傾向を持つユーザーが購買した商品を、別の未購入ユーザーに提示する「協調フィルタリング方式」のはず。
だとすれば、本当に「アルプスの少女ハイジ」を買った多くのユーザーが、「日本沈没」を発売前に商品検索したりしているんでしょうか???
フシギです。

皆さんも???というレコメンに出会われたら、情報をお寄せください。
ちょっと研究してみたくなりました。

| | Comments (4) | TrackBack (0)

2007.01.03

販促会議「質問編」顧客視点”入門講座 

新年明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。


---------------------------------------------

年末に販促会議の最新号が届きましたので(年末進行)、バックナンバーを掲載します。
この連載も本稿で第9回。残り3回です。
実際の連載では10回まで進んでおり、11回まで原稿を入稿しています。
10回、11回はBtoBについてで、12回は総まとめでもしようかと考えています。

---------------------<以下バックナンバー>-------------------
 「ネットによってもたらされる多くの情報をどう取捨選択し、どうコントロールをすればいいのか?」・・・この「質問編」が始まってから何度か読者の方からいただいた質問である。これは企業と生活者との関係だけでなく、ネットユーザーである生活者同士の関係についても悩む方が多いことを物語っている。が、正直筆者は答えあぐねていた。突き詰めれば、「ネット時代における今後の情報の取り扱い方」「今後の商売のしかた」に行き当たってしまうからだ。それを今回は突き詰めてみようと思う。 
援軍は8年ぶりに改訂第2版が刊行された、我が心の師であり、ダイレクトマーケティングの開祖である、レスター・ワンダーマンの著書「BEING DIRECT」(邦題:ワンダーマンの「売る広告」)である。

■レスター・ワンダーマンと「BEING DIRECT」
 同氏は筆者前職のグループ会社のファウンダーであり、1967年11月29日にマサチュセーッツ工科大学にてダイレクトマーケティングを広く世界に紹介した開祖でもある。また、タイム誌が選んだ「20世紀の最も偉大な広告人」の一人にも列せられている。
その同氏の著書、「BEING DIRECT」が8年ぶりに加筆改訂され、日本版も発売された。同書を筆者が人に紹介するときには、「ビジネス冒険小説」と例えているが、正に冒険小説のように読み進めて行くにふさわしい生き生きとした彼の体験談と共に、ダイレクトマーケティングの真髄が記されている。そして今回の第2版では旧版の最終章にさらに一章、「第27章・インターネット」が加わっている。全編を読み直しつつ、最後はこのあたりを手がかりにしようと思う。

■ネットがもたらした情報格差の消失、そして氾濫
 ワンダーマン氏はかねてより「成功する全ての会社が知る19のルール」を提唱しており、その中に「The Customer, Not the Product, Must Be the Hero (主人公は製品ではなく顧客である)」と語り、中心的思想としてきた。しかし、今日その関係はどうなっているだろう。かつてはモノの売り手と買い手の間には厳然たる「情報格差」が存在し、それが売り手の利益の源泉にもなっていた。しかし、インターネットはそんな格差を根底から破壊し、売り手と買い手は対等になった。いや、ともすれば買い手の方が情報をたくさん持っているような時代に。つまり、ワンダーマン氏が予言した「顧客が主人公の時代」は既に達成されたのだ。例えば「kakaku.com」などのような比較サイトの登場は、売り手の利益構造を白日の下に晒すことに成功した。
 しかし、見方を変えれば格差は残っていることもわかる。「売り手」と「買い手」という関係においてではなく、情報を「持つ者」と「持たざる者」という新たな関係においてだ。「情報検索能力は現代のリテラシー(読み書きの能力)である」とまで言われ始めている。しかし、例えば情報を収拾することはできても、「判断」することは能力だけでなく、個々人の性格や今までの経験に依存する部分も少なくない。
集まってくる情報。その中の企業発の情報を除けば、それは、「売り手と買い手」という対立構造という判断軸を持たない、「個人が発信した情報」である。それが膨大になっている。さらに、個人が発信した情報は基本的には「個人自らが購入・使用し、そのファンになり、自主的に他者に勧めている」という情報である。元東京大学大学院教授・丸の内ブランドフォーラム代表の片平英貴氏が提唱している消費者行動モデル「AIDEES(Attention・Interest・Desire・Experience・Enthusiasm・Share)」がそれだ。(Experience(経験)し、対応の良さにEnthusiasm(惚れ込み)、人にShare(推奨)するというモデル)。ただし、これはさしずめ「性善説モデル」と言えよう。ここに推奨する個人の「商売っ気」は考慮されていない。
 ネットの世界では今日「アフィリエートブーム」である。ちょっとした「商売っ気」で本当に自分が気に入ったモノを人にも勧めてお小遣いにもなるというレベルならまだ良い。しかし、「アフィリエイトで月○百万円!」などという書籍が店頭に並ぶようになったら、ネット上で個人が推奨しているからといって、その情報の発信者はその商品にEnthusiasm(惚れ込み)という状態になっているか疑わしくなっている。
推奨情報の氾濫によって、再び生活者は判断基準を喪失してしまいつつあるのだ。

■どうすれば信用できる推奨関係を作れるのか
 以前、筆者は旧連載「顧客視点入門」の第3回にて推奨行為に関して、以下のように述べた。(この時は“推奨”ではなく“紹介”という語句を用いた)
『”紹介”は、紹介者が程度の差こそあれ、ある程度のリスクを負う行為であると理解すべきだ。例えば自分が勧めたものが被紹介者である友人・知人に気に入られなかったら、恐らく気まずい思いをするだろう。それが高額なものであったら関係が悪化するかもしれない。そのリスクを冒してまで紹介という行為に踏み切るのは、顧客自身がその商品・サービスに満足し、間違いないと確信しているからにほかならない。』
しかし、上記は主にリアル(オンフライン)の場合に限定される。ネットはその匿名性や伝播の範囲が広いこと、利用や情報の発信が気軽なことなどが相まって、以前筆者が述べたリアルの場合ほどシリアスな気持ちなくして推奨行為が繰り返されている。そして、それが今日の情報氾濫につながっているのだ。
では、どうしたらいいのか。一つの解決策は、「情報として置いておけば、誰かがクリックするであろう」という、垂れ流し的発信をネットユーザーは避けるべきなのだ。「自分は、このような理由で、このような人に、この商品を勧める」という「推奨の背景情報」を明確にすることだ。そうすれば推奨する側も成果が上がるだろう。
再びワンダーマン氏の「19のルール」の中から紹介しよう。「Answer The Question “Why should I?” (「なぜ私に?」に答えること)」。
つまり、情報を発信する者は責任を持って、「その商品をどのような理由で、どのような人に勧めるのか」を明確にすることを暗黙のルールとする文化の形成が望まれる。もちろんそこに悪意や虚偽が混在しないことは当然である。

■企業の場合の推奨(レコメンデーション)
 では、企業が行なう顧客への推奨(レコメンデーション)を考えてみよう。企業が顧客に行なうレコメンデーションはダイレクトマーケティング、CRMの華と言っていい。その成否で収益は大きく変わるし、顧客が一層、Enthusiasmするような推奨が実現できれば、顧客ロイヤルティーは高まり長期間の関係構築も望める。その答えこそが『「なぜ私に?」に答えること』である。これはワンダーマン氏が元来、企業と生活者との関係について述べたものである。一つの成功例としてはAmazonのやり方であろう。Amazonから推奨のメールや、Webサイトでの表示がある場合、必ず、本人に関連した推奨理由が明記されている。過去に購入した本と同じ筆者の新刊、同じジャンル、同じようなジャンルの購入パターンが多い商品等々、一見「なぜこれを私に勧めるのか?」と思っても、その理由が明記されているため、それをそのまま購入するか否かはともかく、納得はできるし推奨されたものの内容をよく吟味してみようという気にもなる。また、Webサイトにおいては、レビュアーといわれる読者であり推奨者の評価も記され、さらにその推奨文がどれくらいの人に参考にされたかの情報まで付加されている。少なくとも、筆者自身はこのやり方は非常に理に適っていると感じ、一ユーザーとしても気に入っている。

■レスター・ワンダーマンの説く「商売の原点」
 同氏は実は西アフリカ・マリ共和国に住むドゴン族の研究家としても名高く、氏の撮影した写真、収集した美術品はニューヨークのメトロポリタン美術館の永久コレクションとなっている。
注目すべきは、この度加筆改訂されたワンダーマンの「売る広告」の最終章、「インターネット」の中に記されているドゴン族の市におけるやりとりの様子だ。(以下抜粋)・・・「個々のセールスは、議論、値引き交渉、おしゃべりの混じったアフリカ的商談の儀式である。買い手と売り手の要望と期待が合って、交渉が合意された時、彼らは拍手と同時に『バハマ』という。文字通り『我々はよくやった』がその意味である」・・・つまり、情報を出す側、受ける側、売る側、買う側もお互いの手の内を出し合って、対話を重ね、十分納得と満足のいく着地点に至り商売が成立するのだ。何と、根源的ではあるが、忘れられている重要なことであろう。
 どうも、今日のネット文化は、急速に広がった空間的広さから「出会い頭」的な情報交換や商売が多く、また、利便性ばかり追求され、「納得・満足の形成」が情報の送り手と受け手、売る側と買う側の双方とも軽視し性急になっている。
 冒頭の読者からの質問、「ネットによってもたらされる多くの情報をどう取捨選択し、どうコントロールをすればいいのか?」には、レスター・ワンダーマン氏の紹介するドゴン流を筆者なりに解釈してお答えしたい。つまり、情報の送り手と受け手、売る側と買う側の双方が納得と満足が得られるまで、お互いの手の内を出し合って、対話を重ね「バハマ!」と言えるようになることだ。

※出典:ワンダーマンの「売る広告」 顧客の心をつかむマーケティング
レスター・ワンダーマン・著  藤田 浩二・監訳  株式会社電通ワンダーマン 監修
翔泳社・刊

| | Comments (0) | TrackBack (2)

« December 2006 | Main | February 2007 »