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2006.10.01

販促会議「質問編」顧客視点”入門講座 

10月1日発売の「販促会議11月号」が発売されましたので、
前号の記事をバックナンバーとして掲出いたします。

久々に”CRM”について論述してみました。

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第7回「CRM・One to Oneはどこへいった」

 前連載では大きく取り上げなかったが「顧客視点のコミュニケーション実行するにあたり欠かせないCRMやOne to Oneは、今どうなっているのか」という読者からの質問があった。今月はそこを掘り下げていこう。

■CRMはダーティーワード?
 ITバブルも輝かしき2000年当初、米国ではCRMやOne to Oneのソリューションが多数発売され、各企業に導入されていった。して、その結果は……芳しくなかった。ここの顧客に適切なパーソナライズされたコミュニケーションを行おうとする思想は大変正しいものであった。しかし、一人の顧客に整合性のある全社統一されたメッセージを企業から発信しようとした場合、社内各部署に分散して収納されている当該顧客の購買データ・アンケートデータ・ウェブサイトでの行動データなど、いくつものデータを一つに統合しなければならない。
統合データベースの構築は口で言うほど簡単ではない。データ形式、項目、取得時期、それぞれがバラバラなデータを一つのデータベースに統合する。その困難の前にプロジェクトは立ち往生する。何億(ドル!)もの投資をしたのにだ。かくて、米国ではCRMは「ダーティーワード」と化してしまった。その証拠に、米国で「CRMコンサルタント」の名刺を出すと眉をしかめられるほどだ。

■日本のCRMはどうだったか?
 2000年当時、日本でもCRMブームは起こった。しかし、幸か不幸か、当時の日本はデフレ不況の真っただ中にあり、大きな投資は出来なかった。結果的にこれが幸いした。全社DBの統合など当初から考えず、ゼロスタート、つまりCRMのための会員組織をつくり、その会員とのコミュニケーションを行うというスタイルを取った。これならスモール・スタートが可能となる。また、CRMとOne to Oneは言葉の上ではよく混同されていたが、実行上、One to Oneは目指していなかった。One to Oneは一人の顧客に当該顧客の一連のデータを引き出し、それに対して最良のレコメンデーションを行うということだ。しかし、CRMは國焼くのセグメンテーションを精緻化し、細かなセグメンテーションにレコメンデーションルールを設定し顧客名だけは本当にパーソナライズするというレベルのものだ。
 本当のOne to Oneと実態は「マス・カスタマイゼーション」であるCRM。似て非なるものと言葉で言う以上に実行上の労力は違う。
 余談だが、筆者は三度目にレスター・ワンダーマン(ダイレクトマーケティングの創始者)と会った時、彼のまえでうっかり「One to One」という言葉を使ってしまった。すると彼の反応は激しかった。「いいか、若いの。あれは理論だけのコンサルタント上がりのブードゥーマーケッター(インチキ師)の言葉だ」と言うのだ。One to Oneの提案者ドン・ペパーズとマーサ・ロジャーズ。実は、レスター・ワンダーマンとドン・ペパーズは仲が悪かったようだ。

◆ではCRMはどこへ行った?
 現在、日本のCRMは「顧客管理」もしくは「顧客への最適対応」という概念と実態のレベルがかい離した状態で存在していると言えよう。では、その実態とは、前述の通り全社顧客データ統合から始めるなどというビッグスタートではなく、アルプロジェクトのソリューションの一つとして組み込まれて実施されることが多い。例えばあるプロジェクトで顧客アプローチ及びそのレスポンス対応が必須となる顧客に「何を」提示するかは「CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)」の役割だ。それを「誰に」提示し、レスポンスがあった際「誰か」を特定して、履歴を表示するのはCRMシステムの役割だ。
 つまり、今日のCRMは概念レベルではかつてのままで、システム的にはほかのシステムと連携しながら全体の一部として生き残っているというのが実態なのだ。

◆今後のCRM実行のチャンス
 前述の通り、今日の日本のCRMは気高い思想から遠く離れた、いささか情けない状態にあると言える。しかし、昨今本格的なCRM、もしくはOne to Oneの実現まで含んだ実行のチャンスがやってきているのだ。
1.企業の相次ぐM&A 
 各メディアを連日にぎわしているM&A。大手、中堅、外資、日系が入り乱れて「こんなところが」と驚くことしきりの毎日である。M&AとCRMに関係があるのか?……ちゃんとあるのだ。M&Aして二つの企業が一つになる。一人の顧客が両方と取引していたら……請求書はバラバラに来る。販促のDMは同じものが二通来る。パーソナライズされたウェブサイトがあったら、それぞれに異なるID、パスワードでアクセスしなければならない。顧客にとってこんな不都合を許せるはずがない。
 それを避けるためには「顧客データの統合」をイヤでもやらざるを得ない。「顧客データの統合」は、一社で何のやるべき理由も無ければ、大きなコストも労力もかかるため先送りされる。しかし、ひとたびM&Aが起こってしまえば、それは避けては通れないプライオリティーのかなり上位にあるアクティビティーと化すのだ。「顧客データの統合」というインフラさえ整えば、あとは「誰に」「何を」や「いつ」といった実施を考える第一歩に建つことが出来るのである。

2.J-SOX法への対応
 これは顧客視点というより、法改正の影響であるが、目前に迫る日本版SOX法の施行も、実はCRMとかんけいがある。本家、米国SOX法と日本版の一番の違いは、日本は「ITを使用すること」が義務付けられていることだ。これは、米国には「インフォメーションライブラリアン」という企業内情報の収整理理担当者が存在することによる。例えば、役所が「何々の購買に関する資料を用意するように」と指示すれば、3時間~4時間で整えてくる。まさに人間サーチエンジンである。これは“Realtime Disclose” という条項を実現するためである。ところが日本にはインフォメーションライブラリアンがいない。そのため、「ITを活用するように」とのお達しが下ったわけだ。人間を前提にした“Realtime Disclose”であるからこそ3時間~4時間の猶予が与えられている。ITで“Realtime”と言われたら、文字通りに「その場で抽出して提出」となるだろう。これを実現するには「データ統合」が欠かせなくなる。現在のように社内のあちこちにデータが散在していたら、ととえも“Realtime”は実現できない。やはりイヤでも全社データ統合が必要となるのだ。かくして、思わぬところから顧客データも統合され、CRM実行の環境が整うこととなるのだ。

◆これから何をなすべきか
 前述の通り、日本のCRMは米国のように過大な投資をしなかったおかげで「失敗」の烙印を押されはしなかった。しかし、通常のキャンペーンなどで、その考え方が受け継がれただけで、大きな成功もしていない。ところが、上記のような経済環境の変化と、政府の圧力によって、期せずしてCRM実行のインフラ構築のチャンスがやって来た。しかし、それはあくまでインフラである。「インフラ上で何をするのか」を考えねばならない。しかも、M&Aの場合のシステム統合もJ-SOX対応も、そんなにのんびりシステム設計を行うわけがない。とすれば、どのようなCRMを実行するために、システムにどんな昨日を追加して欲しいかという「システム機能要求」を早急にシステムの主幹部門に提出しなければならない。そのためにも、CRMのコンセプト、ロードマップ、アプリケーションなど、決めなければならない事は多い。しかし「大変だ」と言うなかれ。降ってわいた様なチャンスに乗るにはとにかくスピードしかないのだから。ここは各企業の知恵の見せ所だ。


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