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2006.09.17

「病床にて『サービスの本質とその向上策』について再考してみた」

入院中でアップできなかった日経ビズプラスの最新原稿を、遅ればせながら掲出します。

本文冒頭にあるように、この原稿は携帯メールで入稿しました。
このボリュームを携帯で打つのは結構しんどいだけでなく、全文が何度もスクロールしないと見られないので、文章の前後関係の整合が取れなくなってしまいます。
携帯で長文を打つときの要注意点ですね。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm

--------------<以下、バックナンバー用転載>---------------------

事故に遭い病院で3週間、絶対安静となった。ベッドから起き上がれず、この原稿も仰向けのまま携帯メールに記している。そんな状況で、病院の患者へのサービスからヒントを得て、サービスの本質と、その向上策について考えた。

■マニュアル文化と非マニュアル文化

 サービス業におけるマニュアルの功罪については以前から、様々な議論がなされている。ある老舗の販売店では、「マニュアルを作った瞬間、従業員はそれ以上のサービスをしなくなる」と、マニュアルをあえて作らず、「どうやったらお客様に喜んで頂けるか」という「自ら考えさせる教育」を徹底している。

 しかし、世の中にはマニュアルによって業務プロセスをきちんと定義し、その通り実行することが必要不可欠な業種も多い。マニュアルは業務を「モレ・ヌケ」なく実行するためには欠かせない機能なのだ。マニュアルというとファストフードやコールセンターが代表格だが、病院などにはより高度な業務のプロセスを規定したマニュアルがある。人命を預かる医療の現場でそれがなかったら大変だ。

■マニュアル&「プロセス深度」

 マニュアルが存在する業種でも、「担当者によって、どうしてこんなに対応が違うのだろう」という場面に遭遇することはよくある。

 ちょうど入院中に体験した例であるが、現在筆者は動けない。少々下ネタになるが、シビンを使用している。用を足し、ベッドの柵に掛けておくと看護師が回収してくれる。ある看護師は、通路からベッドの反対側の柵に手を伸ばしてシビンを取り、筆者の顔の上を通過させた。別の看護師はベッドを一回りして壁とベッドのすき間に入り、回収した。どちらが丁寧かは言うまでもないだろう。

 日常の患者への接し方にも、ずいぶん差があることに気付く。「尿の出が悪い」と訴える患者に、言い方もあろうに「それは仕方がないと先生もおっしゃってました」と答える看護師。かと思えば、着替えの際に「背中がかゆい」「あせもになった」などと訴える患者に、「汗を吸い取るようにパジャマの下にタオルを入れてみましょう」とか、「軟膏(なんこう)を使っていいか先生に聞いてきます」など、とにかく一生懸命対応してくれる看護師。マニュアルの一つの「プロセス」としてみれば、顔の上を通過させようが、素っ気なく回答しようが、「排泄援助」「身体の清拭」「寝衣の交換」といった“項目”をこなしているという意味で同じだ。しかし、患者にとって、結果の差は歴然である。

 その違いは何か。筆者は「プロセス深度」と名付けた。病院のマニュアルは該当する事象に対し、どのような対応をすべきかが規定されているが、「患者をおもんぱかる」という行為は、マニュアル外の「相手の立場に立って、個人が考える」部分に属することとなる。そのため、プロセスを「どこまで深くやるのか」は、最終的には個人の判断となる。「患者の状況をいかに改善するか」「どこまでやれば患者は満足したり安心したりするのか」という発想が優秀な看護師にはできる。

 しかし、看護師が個々の患者の満足度で評価される仕組みにはなっていない。それがひいては高い離職率や、就労希望者が少ないといった問題にもつながっているのではないだろうか。

■SLAによって開示されるサービスの標準レベル

 話を戻そう。実は、マニュアルに基づいて供されるサービスに対価を払っている我々顧客にとって、マニュアル自体は「ブラックボックス」なのだ。マニュアルに規定されているであろう、サービスの下限も分からない。「結果が見えない対象を購入する」ことに対する顧客側の抵抗感からか、「サービス・レベル・アグリーメント(SLA)」という考え方が生まれた。当該サービスの一つ一つに対して、どの程度のレベルを提供するかを顧客とサービス提供社(アウトソーサーなどクライアントから業務を受託する会社)相互が細かに取り決めていくのだ。

 例えば、システムメンテナンス・サービスの場合なら「障害から何分で復旧させる」とか、コールセンターであれば、「通話中でない『応答率』を95%以上に保つ」など、内部的なマニュアルに規定されている項目を顧客と共有し、サービスの最低線を維持・向上させる。

 しかし、このSLA、クライアントと一度取り決めたら、そのレベルは「できて当たり前」。レベルを下回ろうものなら責任を問われかねない厄介なものだと、サービス提供社の担当者から聞いた。しかも、多くのサービス提供社はSLAを下回り、クライアントからクレームを受けた担当者にはしっかりペナルティーがあるのに、SLAを維持、もしくは大きく上回った担当者には若干の報奨があればいい方だそうだ。これでは担当者のモチベーションは上がらない。

■「プロセス深度」こそ、評価の仕組みづくりを

 そこで、先に筆者が提示した「プロセス深度」と組み合わせて考えてみたい。マニュアルやSLAは、あくまで最低線か標準レベルを設定したものだ。ならば、SLAを大きく超えたサービスを提供された時、顧客はその内容をサービス提供社に告知する仕組みを作るのだ。また、SLAが規定しにくい職種である、先の看護師のようなサービススタッフにも、期待水準を超えて顧客が「感心した/満足した」時に、モバイルやカードなどで投票する機会を用意するのだ。方法、考え様はいくらでもあろう。そして、顧客の意見を定量的・定性的に集計し、優秀な担当者を個別に報奨しモチベートするのだ。

 こうした仕組みを既に取り入れている職場も一部にはある。しかし、高いレベルのプロセス深度が個人の「やる気」「サービス精神」に依存している職場はまだまだ多い。

 サービス向上の源泉は担当者のモチベーションである。マニュアルやSLAで縛り付けるだけでなく、「褒められてうれしい」という、根源的な感情を育成するところから再考してみてはどうだろうか。むろん、報奨を狙ってスタンドプレーに出る者もいるだろう。しかし、そんなものは長続きしないし、受け手にも真心と下心の差は伝わる。

 大切なのは、スタッフ全体のモチベーション向上と、ボトムアップの仕組みづくりなのである。

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