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2006.09.19

販促会議10月号「質問編」顧客視点”入門講座

8月1日発売の「販促会議10月号」の連載です。
こちらもアップが遅れておりました。
バックナンバーとして掲出いたします。

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第6回「自分に合ったマーケティング環境分析手法の習得を」

 新連載の第2回で、自社を取り巻く外部環境と内部環境をマクロ分析(PEST)からミクロ分析(3C)、さらにはマーケティングミックス(4P)まで一気に洗い出し、そこからSWOTを導出する手法を紹介した。読者から「SWOT表を前に頭をひねりながら確信も持てず作っていたのが、一つ一つの要素を丹念に洗い出していくことでウソのようにすっきりと答えが出せました」といううれしい反応があった。以前にも述べたが、S/W/O/Tというマスを強引に一気に埋めようとしてもうまくいかないものなのだ。急がば廻れ。是非、以前ご紹介したフレームワークをご活用いただきたい。

■ 5forcesモデル(5つの要素)はどこに行っちゃったんですか?
さて、上記のように「スッキリ!」とした読者が多くいた反面、別の反応もあった。「5forcesモデル(5つの要素)はどこに行っちゃったんですか?」というものだ。確かに以前紹介した3つのフレームワークを結合してSWOTを導き出す手法からは5forcesモデル(5つの要素)を割愛している。では、その理由を説明する前に5forcesモデル(5つの要素)事態を知らない読者もいるであろうから、簡単に解説しよう。
5forcesモデル(5つの要素)とは、ハーバード・ビジネス・スクールハーバード大学経営大学院教授・マイケル・ポーター(Michael E. Porter 1947年~)が、著書『競争の戦略』(邦訳:ダイヤモンド社、1980年)で紹介された。自社の属する業界の5つの競争要因から、業界の構造分析をおこなう手法である。企業が利益を上げようとした場合、その業界がどの程度魅力を持っているかが重要である。成長著しい業界でも競合が激しく、新規参入も次々とあるようでは簡単に利益を上げられようにはない。逆に、目を向けるものもいなくなったような業界でも、競合が撤退し、新規も参入しないとなると、やりようによっては一定の利益を確保することができるだろう。それを5つの要因から考えてみようというのが5forcesモデルである。
5つの競争要因とは「供給企業の交渉力」=商品を作る原材料を供給してくれる企業がどの程度供給価格に変化を付けてくるかという要素。「買い手の交渉力」=自社の商品を購入してくれる企業が、納入価格にどの程度交渉力を持ってくるかという要素。「競争企業間の敵対関係」=同じ業界内の競合企業との力関係、という3つの内的要因がまず挙げられる。加えて外的要因として「新規参入業者の脅威」=現在競合関係にない企業が突如参入してくる可能性。「代替品の脅威」=自社が提供している商品より魅力的な商品が開発され代替されてしまうという可能性、という2つ要因を合わせて5つの要因から業界全体の魅力度と競合環境を測るものである。(図1)

■5forcesモデルの特徴
5forcesモデルを使うと第3回に筆者が紹介したような、細かな洗い出しをしなくとも業界の競合環境と、自社の位置づけが見えてくる。さらに、その位置づけから「どのように今後戦うべきか」という方向性まで見えてくる。うまく使いこなせれば優れものであることは間違いない。
特に(図2)に示した「競争地位戦略」は自社の置かれた立場を正確に把握し、どのような戦い方をすればよいかを明確化できる出色ものである。図の解説をしよう。まず、表全体は自社にどの程度の経営資源を競合となりうるべき企業に対して持っているかを表している。それを大きく表頭に「量的要素」、表側に「質的要素」に分類し、各々の多寡によって4つの象限を作る。「量的要素」とはどれだけ資金力も含めて「規模の経済」で戦えるかを表している。「質的要素」とは「技術力」をはじめとした企業としての独自性をどの程度有しているかである。
「リーダー」は質的にも量的にも経営資源に恵まれた、業界マーケットシェアNo.1の企業となる。戦い方としては、競合の動きも気にはするが、むしろシェアNo.1という地位を活かして、市場全体のパイを広げ、収益拡大を図っていくことになる。
「チャレンジャー」は質的経営資源には恵まれているものの、量的経営資源がリーダーに対して劣っていることが特徴だ。そのため、業界では2位、3位のポジションに甘んじていることになる。当然、「リーダー」の座を狙うことになるが、そのためには得意な製品分野や、市場に戦力を集中し収益を最大化する戦略を取る。
「ニッチャー」は質的経営資源には優れているものの、量的経営資源がリーダーのように豊富でない。故に、戦い方は良質な経営資源を活かして専門分野に特化し、高い技術力を発揮し「オンリーワン」企業を目指すことになる。
「フォロワー」は質的にも量的にも経営資源に恵まれていない。どうあがいてもリーダーに取って代わることなどはできない。できることは「模倣」である。リーダーやチャレンジャーが開発した技術を模倣し、こなれてきたそれを使い、徹底したコストダウンを図ることによって、じわじわとシェアを浸食していくのだ。

■5Fと3C、何が違う?
いかがであろうか。5forcesモデルがいかなるものか、どのように使用すべきものなのかわかっただろうか。確かにうまく使いこなせば有用なモデルであることに間違いはない。企業戦略の方向性がはっきりとする。
しかし、ここからは筆者の個人的な好みの問題であり、ポーター支持者からは反発もあるであろうがあえて述べたい。マイケル・ポーターは優れた経済学者である(事実、1982年に35歳の若さにして史上最年少のハーバード大学・正教授となっている!)が、そもそもマーケターであるのかという疑問が筆者にはある。
マーケティングとは「売れ続けるしくみ作り」である。資本主義のルールである、利益を上げ続けることは至上命題である。しかし、「売れ続けるしくみ」を作るためには、まず、「顧客と市場」を見ることが最重要であると考える。過去、連載で述べてきた「カスタマーインサイト」などは、「いかにして顧客の心の中を理解するか」を突き詰めて考えたフレームワークである。しかし、ポーターの専門は「競争優位戦略」である。「マーケティングも競争優位戦略の一部である」と言われることもある。しかし、筆者はその両者には厳然とした違いを感じている。「競争優位戦略」は「戦うべき相手にいかに勝つか」が眼目であるのに対し、「マーケティング」はあくまで「顧客を理解し、受入れてもらう方法を考えること」が要諦である。
5Fと3Cの違いを見てみよう。5Fは前述の通り、まず、競合を特定していき、それらに対する戦い方を固めていく。それに対して3CはCustomer=市場という1つのCを熟考し、自社の顧客になってくれる生活者とはどんな人なのか、それは市場の中のどこにいるのかを考える。そして次に、Company=自社がその顧客や市場に対して何ができるのかを考える。そして最後にCompetitor=競合となるような企業などの存在を洗い出し、どのように対抗していくかを考える。つまり、3Cはまず、Customer=市場ありきであり、5Fとはアプローチな全く異なるのだ。

とはいえ、フレームワークとは課題解決のための道具にしか過ぎない。どのように優れたフレームワークでも、そのマス目を埋めていくだけでは単なる「作業」に過ぎない。そこから、「具体的な打ち手」につながる「意味合い」を出せなければ何の意味もない。その意味からすれば、多少無責任な言い方かもしれないが、5Fでも3Cでも自分が使いやすいフレームワークを使えばよい。「使いこなせてこそ」なのだ。

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