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July 03, 2006

「質問編」顧客視点”入門講座 第3回「ネットユーザーの変化がめまぐるしくて・・・」

「販促会議」の8月号が発売されましたので、前月号のバックナンバーを掲出いたします。
今回は特に、昨今のネットユーザーの心理に迫ってみました。
ご参照ください。


 前連載の第7回では広告業界の定番理論「AIDMA」モデルから、ネットユーザーの台頭によって生活者の購買行動の心理変容が「AISAS」モデルへと変化していることを述べた。つまり、「AIDMA」のAとIは従来と同じであるが、「検索」という手段を手に入れた生活者は、関心を持った物・サービスがあれば必ずといっていいほど何らかの検索エンジンで「Search(検索)」をする。その結果、購買=「Action(行動)」に至った後、今度は買った物・サービスに対して、友人・知人だけでなく第三者にも掲示板やBlog、SNSサイトなどを通して情報を広く「Share(共有)」するようになったのである。
 確かにこのモデルはネット社会である今日の代表的な生活者の購買行動モデルとして理解できる。しかし、前連載時に「代表的なパターンは理解できたが、もう少しどのようなタイプの生活者がいて、それぞれにどのような打ち手があるのかを知りたい」。というご要望を頂いた。そこで今回は、生活者のタイプ分類とその特徴、打ち手を解説しよう。

■モノの購入に対する意思決定と情報収集の態度に注目してみる
まずは図を参照してほしい。縦軸に生活者のモノの購入に対する意思決定能力の強弱を置いた。「誰かに相談しなければ購入の意思決定ができない人」。つまり「依存的な生活者」だ。周りにそのような人はいないだろうか?「あ、自分がそうだ」という読者もいるかもしれない。しかし、逆に何も人に相談せずに突然何かを購入して、人を驚かせるような人もいる。それを「自立的な生活者」と呼ぶことにする。ちなみに筆者は後者である。 
次に横軸を見てもらおう。情報収集の態度が受動的であり、あまり積極的な情報収集を行なわずに、自然と入ってくる情報に身を委ねている人々である。その逆に、常に能動的にアクティブな情報収集を行なっている人々もいる。
こうすると、四つの象限の中に四タイプの生活者のセグメントができる。以下、そのタイプ毎にその特徴と適切なコミュニケーションの方法を考えてみよう。

■「我が道を行く生活者」
左上の「自立×受動」の象限の生活者は人の話しもそこそこにしか聞かないし、ネットからの情報収集も行なわない。企業やマーケターの立場からすれば非常に手強い相手だといえよう。では、どのようなコミュニケーションの打ち手があるのだろうか。
はっきり言って、「打つ手なし」である。何を伝えようとしても自分の中の価値基準が絶対なので、何らかの心理変容や態度変容をコミュニケーションによって促そうとしても動かない。このような層にマーケティングコストを投下しても費用効率が非常に悪い。結論からすれば、「手を出さないことが一番」である。幸いにして、このような特性を持った生活者の比率は高くない。他のタイプの生活者を狙うべく、話しを先に進めよう。

■「昔気質の生活者」
情報過多の時代といわれて久しい。ネットに触れなくてもテレビは多チャンネル化し様々な情報を送り込んでくる。街ではこれでもかと思うほどフリーペーパーが振り撒かれ、しかも多くの人が「タダだから」とつい受け取ってしまっている。「情報の洪水」。既に個人の「可処分時間」の中では処理できない情報量が生活者の周りには流れ込んでくる。
その情報の取捨選択に精一杯で、自分から能動的にネットに情報を取りに行くことなどできないし、モノの購入も自分の意思だけでは決定できない。とすると、何を基準に判断しているかと言えば、数多の情報の中でも一番権威がありそうな情報源(メディア)を信用する。つまり、このタイプの生活者とのコミュニケーションは、今まで通りのマスのコミュニケーションで十分であるといえる。但し、このタイプの生活者も徐々に「希少種」になりつつあるだろう。

■「賢い生活者志向」
「賢い買い物をしよう」とネットで能動的に情報収集をする。しかし、モノの購入意思決定が人の意見に左右されがちなタイプの生活者は、ネットで拠り所とするのが「口コミサイト」だ。購入予定商品の話題が取り上げられている掲示板やblogを覗いてまわり情報収集をし、そして最終的には現実の友人・知人などに相談して態度決定をするというのが代表的なパターンだ。このタイプの生活者は現在の所、かなりの数が存在すると推測される。
 では、この層に対する有効なコミュニケーション方法とは何だろうか。それは本誌の2月号でも取り上げられた「ネット口コミ」である。個人の掲示板やblogでは自社商品に対してネガティブな評価や誤解、根も葉もない中傷などが巻き起こっていることも少なくない。
そのため、最近は企業自らが自社商品に関するblogサイトを立ち上げ、生活者にそこで思い思いに個々のblogを立ち上げさせて、各blogの新着情報やランキング情報を提供し盛り上げている。本誌2月号の特集でも紹介されたキリンウェルフーズの「リエータカフェ」http://www.lieta-cafe.com/ などは「あなたのD(ダイエット)ライフを楽しく賢くサポートする無料BLOGサイト」と宣言がなされ、明るく楽しい世界観をうまく作り出している。今まで企業は「自社のサイトでユーザーに自由に書き込みさせて、ネガティブな話しでも盛り上がったら大変である」と二の足を踏んでいた。しかし、うまく明るい世界観を演出することができれば、全体としてポジティブな話題が多くなり、仮にネガティブな話しが多少出ようともサイト全体として自浄作用が働き、やがて消えていく。同サイトが貢献したのか、「リエータ」は前年比4.5倍の売上を記録したそうだ。もはやこうした取り組みを見送る手はないだろう。

■「自称賢い消費者」
購買プロセスの全てを全て自己管理し、「賢い生活者」たらんとする層も最近はずいぶん増えてきた。前連載で紹介した、家電量販店の店先で「kakaku.com」の携帯版で当該商品の最安値を検索し、店員と交渉するような人々だ。何でもネットでガンガン検索して価格だけでなく、商品の性能や競合商品との比較など、あらゆる情報収集をして、全て自己判断で購入を決定する。
 このパターンの生活者は企業にとっては強敵であろう。しかし、増加するこの層に対して何か打ち手を考えなくてはならない。答えは「誠意ある情報開示」である。具体的に言えば、WEB-FAQの整備だ。WEB-FAQはメールでの質問を劇的に削減させることができるなど、オペレーション面での効用も大きいが、365日、24時間情報収集ができ、しかもそれが非常にわかりやすくできていたとすれば、この層の情報取得欲求にはもっともマッチすると言えよう。FAQは既購入者からの使い方や故障などに関する質問に対応するものという固定観念を捨て、むしろ購入検討層への訴求に効果的であると認識し、それに見合うFAQコンテンツの整備を行なうことをお勧めしたい。

■WEB-FAQによる「エモーショナルなブランド訴求」
 「賢い消費者志向」層は前述の通り手強い。しかも今後どんどんそちらに生活者はシフトしていく気配がある。とすれば、「誠意ある情報開示」はいいとして、もっと企業として積極的な打ち手はないのかという質問が寄せられそうだ。あるのだ。打ち手は。それも前述のFAQをうまく応用して「エモーショナルなブランド訴求」をするということが可能となる。
 なにより事例を見た方が分かりやすいだろう。BMW Japanサイトの1クラスのコンテンツにそれがある。http://www.bmw.co.jp/1series/ このサイトの「One World. One Philosophy」というコンテンツ、BMWのこだわり通している哲学をフラッシュを用いたQ&A形式で紹介しているのだ。例えば、「誰にでも一目でBMWとわかる顔つきにこだわるのは、なぜですか?」というQuestionが掲出されている。そのAnswerをクリックすると、詳細な答えが表示される。回答の全文は文字数の関係で紹介できないが、主旨としては「速度無制限のアウトバーンを走っているとき、車のバックミラーに特徴的なBMWのフロントマスクを認識したら、先行している車は速やかに車線を譲るだろう。アウトバーンでは高性能な車が後方からきたら道を譲るのが暗黙のルールとなっているからだ」。というような内容である。BMWのポジショニングは「究極のドライビングマシン」と自社で規定しており、そこから「駆け抜ける歓び」という名コピーも生まれている。こうしたBMWの世界観に関心のある人にとっては、このAnswerはたまらなくグッとくるだろう。他にも数々のエモーショナルなブランド訴求を目的としたQ&Aが多数展開されている。

 今回は「自立×依存」「能動×受動」という軸で生活者のネット利用と購入態度形成過程を整理してみた。前述の通り、世の中の流れとしては右上の象限に生活者は徐々にシフトしてきているが、まずは自社の顧客がどの象限に多いのかを見極め、適切な打ち手を考えて欲しい。

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