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2006.06.07

「食のキーワードは"プロセス開示"」

日経BizPlusの連載が更新されました。

今回もタウン・ウオッチからの考察です。
タウン・ウオッチからコラムに展開するには、まず、注意深く街を観察して気になるコト、モノを発見し、
それについて以下に深く掘り下げて考えるか。また、水平的に同じような事象が他のシーンで
起きていないかを考えることだと思います。

では、今回の観察・考察の結果をご覧ください。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm

----------------<以下バックナンバー用転載>-----------------------


東京・銀座の新橋側の外れから有楽町方面に伸びた高速道路下の飲食店街である、銀座コリドー街。各種の名店・話題店が軒を連ねる激戦区で、店の入れ替わりも激しい。その街並みを眺めながら歩いていて、あることに気が付いた。

 最近オープンした店の多くは、外から「調理場の風景」が見えるような造りになっているのだ。店内の客席から調理場が見える「オープンキッチン・スタイル」の店は以前からあったが、店外からも見えるものはあまりなかったはずだ。

■“見せる”集客方法

 こうした造りの店が増えたのは、外食産業で、「プロセス開示」が集客に欠かせなくなってきたためだと想像できる。「こんなふうに料理人が一生懸命作っている」「おいしそう」と感性に訴えるのと同時に、「調理場の清潔さや食材の適切な取り扱い」もアピールしているのだ。

 昨今、BSE(牛海綿状脳症)、食品の不正表示、輸入農産物の農薬残留などの問題が相次ぎ、生活者の「食の安全性」に対する関心が高まっている。素性の明らかな食材を購入し、自分で調理する。それがもっとも安心できる食事だろう。

 食料品店では、有機栽培かどうかや原産地を明記しているのはもちろん、契約農家限定商品なども取り扱い、人気を呼んでいる。外食の際にも、高級店などは料理に使われている食材の産地などをきちんと説明するようになった。生活者が特に敏感になっている牛肉の場合、「但馬牛」のようなブランド名だけでなく「個体識別番号」まで示す店もある。これらが、来店客の食材への不安払拭(ふっしょく)に一役買っているのは間違いない。

 しかし、これまで飲食店では、店頭にメニューと調理サンプルが展示されているだけで、食材が加工される「中間プロセス」である調理に関しては「ブラックボックス」だった。混み合ったランチの時間帯など、調理場が見えるような隅の席に詰め込まれることがある。そして、興味本位にのぞいた調理場が、しゃれた客席に比べひどく雑然としていて不衛生に見え、思わず席を立ってしまった経験はないだろうか。

 そうした店舗と一線を画そうと、数年前から「オープンキッチン・スタイル」の店が増え始めた。そして、店外からもそのことが分かるよう、積極的にアピールするようになったようだ。

■マーケティング的に見た「プロセス」の意味

 以前から筆者は「マーケティングミックスの4P(Product・Price・Place・Promotion)に加え、2P(Process・Person)が重要である」と主張してきた。

 今回の例も正にその典型であろう。おいしい料理(Product)、適切な価格(Price)、よい立地(Place)、そして店構えそのものが、Promotionの要となっている。しかし、「店外から見える調理場」という店構え(Promotion)は、どのようなプロセスで、どのような人が調理しているのかを開示するというProcess、Personという要素(2P)があってこそ成立するものだ。かくして、「店外からも調理場が見える店」は、Promotionと Process、Personが融合し、来店客や見込み客の安心感獲得につながっているのである。

■重要性増す「プロセス開示」

 食の“見える化”は今後、さらに広がる気配だ。農産物の場合、産地や生産者名を公表するだけでなく、農業体験ツアーのように、生産現場を開放し、生産者との交流を図る試みが増えている。加工食品は成分やアレルゲンが表示されているが、表示外の微量アレルゲンが製造過程で混入した例も多い。ビール工場などの製造ライン見学コースなどはしばらく前から人気を集めているが、今後は観光客へのアピールのような理由ではなく、生活者の「安心欲求に応える」という意味で開示が必要になるだろう。

 もちろん、生産ラインのすべてを開示することはできないし、生活者が見たからといって、必ずしも何かを発見できるわけではない。しかし、生産者は見られるということで、今まで以上に設備を整えたり、働く人間が襟を正したりする効果が生まれよう。生活者も自分の目で見ることで、安心と同時に納得感が得られるだろう。そうして、これまで広がる一方だった供給側と生活者の距離が縮まり、品質も向上するという好循環が生まれるきっかけになるのではないだろうか。

 「食」以外でも、車に始まり各種工業製品でリコール問題が多発したことから、「製造過程のブラックボックス」に対し開示を求める声が高まっている。耐震強度偽装に揺れたマンション業界なども「構造説明会」と称し、建設中の物件を契約者や見込み客に見せるが動きが活発化している。裏返せば、それだけ生活者の不安や不信が高まっているということだ。人々の安全にかかわる分野を中心に、「プロセス開示」は必須になってくるだろう。

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