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8 posts from May 2006

2006.05.28

五感を解放して街を、人を眺めてみよう

 街ゆく人を眺めてみれば、首から提げられたミュージックプレイヤーはやはりアップルのi-Podのシェアがダントツであることが分かる。しかし、他社の機種も健闘しているのか、ミュージックプレイヤー愛用者の総人口の多さには驚いてしまう。多の人が両耳にイヤホンを付け、好みの音楽に身を委ねて街を歩いている。

 さらにここにきて、ワンセグ放送対応の携帯電話が売れ行き好調で、道を歩くにも携帯画面のテレビをちらちら見ながら、番組内容をイヤホンで聴いている人が登場しはじめた。

 金森もミュージックプレイヤーは持っており、それで音楽を聴きながら街を歩いたこともある。しかし、五感のうちの聴力を別の世界に捕らわれていると、街や人々の姿から見えてくるものも随分と少なくなってしまう。いわんや、ワンセグ放送を見ながら聴力と視力の半分を別の世界に捕らわれていたら、ほとんど周囲の様子は分からないだろう。

 金森はタウン・ウオッチからの考察をあちこちで記したているが、街や人々の様子をよく観察し、そこから様々なことを考えてみると色々なものが見えてくる。しかしそのためには、人間の感覚機器である五感の全てを駆使して、情報を受け止め、また注目・傾聴することが必要である。確かに、好きな音楽を聴きながら街をブラブラするのも楽しいであろう。否定はしない。だが、たまには新しい発見のため、イヤホンを外して街を歩いてみることをお勧めしたい。

 蛇足ながら、ワンセグ放送を見ながら街を歩くことに関してはいかがなものかと思う。危険である。

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2006.05.21

「インフォメーション・ライブラリアン」という仕事

日曜日だけはなるべくは仕事をしないようにしている。そうしないと365日働いてしまいそいになるため、自己管理の意味からだ。
しかし、今日はどうにも仕事が終わっていない。
が、意志薄弱故、家族全員揃っている状況でホームオフィスで集中力を保てない。
致し方なく、地元の公共図書館へ。
しかし、ここの最大の問題は「キーパンチがうるさいのでパソコン禁止」なのだ。
困った。ネットからのネタ集めもままならない。

しかし、すばらしいサービスかあった。
「情報サービスコーナー」のブースに陣取り、司書の方に「こんな情報が欲しい」と依頼すると、適合する書籍や白書などを集めて来てくれ、各資料の特徴を解説してくれるのだ。
無論、地元の公共図書館なので、グーグルのクローラーのような広範な検索は望めない。しかし、こちらの意図を理解して集め、解説までしてくのは本当にありがたい。

実は、こうしたサービスの担当者は「インフォメーション・ライブラリアン」といい、米国ではナレッジマネジメント関連の集まりの常連だ。

しかし、日本では「司書」というと、書籍の貸借手続きと整理という、利用者ニーズとは別のところにいる存在、という印象だった。
しかし、現実に、地元の公共図書館に「インフォメーション・ライブラリアン」が存在したのだ。

確かにインターネット検索は便利だ。だが、昨今、検索結果の質と真偽の判断が困難になっているのは事実だ。
やはり、時々はこうした人的サービスがありがたいときもある。元資料の数には限りはあるものの、担当者とのやりとりでインスパイアされ、新しい発想も湧く。

インフォメーション・ライブラリアン様、感謝しかりであった

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2006.05.19

「街頭配布にもの申す」

日経BizPlusの連載が更新されました。

今回は実際に起こった出来事から、その根本を深く洞察してみました。
これぞ、タウンウオッチングの醍醐味なのですね。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm


----------------<以下バックナンバー用転載>-----------------------

「危ない!」。思わず振り払ってしまったのは、街頭配布のパンフレットだ。筆者の胸の高さを狙って突き出されたそれは、横を歩いていた我が娘の目を直撃しそうになった。身長120センチ強の子供の目は、配布物を受け取らせるのにちょうどよい高さだったのだろう。

■街頭配布の場景 

 駅前を見回してみれば、ティッシュペーパーやパンフレット、チラシ、フリーペーパー、試供品などが、場所を奪い合うように配られている。なかには 黙って配布物をおずおずと突き出す者もいるが、「お願いします!」と威勢のよい声を張り上げ、スピード感たっぷりに通行人の胸元に差し出すスタイルが主流のようだ。

 フリーペーパーは定期読者とおぼしき人はしっかり受け取るし、珍しい試供品も、進んで受け取りに来る人がいる。しかし、ティッシュペーパーはもはや飽和状態にあるのか、受け取らない人も多い。「オマケなし」のパンフレットやチラシに至っては、受け取っても捨てるのが煩わしいのか、身をかわして通り過ぎる人が多い。いずれにしても配布人たちは、「配布物を通行人に手渡すという行為」の本質を教えられず、業務に就いているように見受けられる。

■マーケティングにおける位置づけ

 マーケティングの観点から、「配布する」という行為の本来あるべき姿を考えてみよう。定番のAIDMA理論(Attention・Interest・Desire・Memory・Action =注意獲得・興味喚起・欲望喚起・購買欲求記憶・購買行動発動)で言えば、最初のAとI、つまり配布物を手渡し、注意を獲得し、内容を見させ興味喚起する役割を担っている。

 しかし、つぶさに観察すると、「街頭配布」という手法の効率の悪さに驚かされる。達成できているのはA=注意喚起の半分ぐらいであろう。受け取らない人は当然、注意も寄せていない。「お願いします!」と言われたところで何をお願いされているかも分からない。勢いに押されて反射的に手にした不要な配布物は、ろくに見られもせずゴミ箱に直行することになる。

 本来の街頭配布の意味を踏まえれば、特にパンフレットやチラシなどは「○○にご関心のある方は、ぜひお手にとってご覧下さい」と配布物の内容を告げ、関心のある人、もしくは必要のある人のみに手渡すべきなのだ。そして、受け取った人には「ぜひ□□というところにご注目ください」と一言添えれば、AIDMAのI=興味喚起までたどり着くだろう。

 無論、この方法では、大量にばらまくことはできない。配布人たちは雇い主から「とにかく数をまけ」と指示されているのだろう。かくして、冒頭の筆者の体験のように子供にぶつけんばかりの勢いで、反射的に受け取らせるような動きが横行する。しかしそれでは、パンフレットやチラシを作成したクライアントに効果を還元できようはずはない。いや、むしろ冒頭のような筆者の体験は、そのブランドの価値を損なう恐れさえある。街頭配布の本来的な意義を実現しなければ、マーケティングとして機能しないばかりか、逆効果になりかねないのである。

■街頭配布から考える“働くことの意義”

 アルバイトの求人欄などには「チラシ配布人募集」と書いてあり、「誰にでもできる簡単なお仕事です」とただし書きがある。実際、持ち場と配布物を指示され、機械的に「お願いします!」と声を張り上げ、相手の都合や周囲の迷惑も顧みず、人前にモノを突き出すという反復動作を行っている。露骨に無視されたり受け取りを拒否されたりしても、何の疑問も抱かず、自分の持ち時間いっぱいその行為を続ける。おそらく彼らは、何も考えないで仕事をこなしているのだろう。

 しかし、昨今、「労働」はもっと広い意味合いを持ち始めている。つまり、「働くことにより対価を得、生計を立てる」というだけではなく、「自己実現」や「知的好奇心の充足」、「仲間と共に働く喜び」など知性や感性と関連した要素が重視されるようになっている。その証拠に、就職面接で学生は口をそろえて「アルバイトで働いた経験によって、いかに自分が人間的に成長したか」をアピールする。

 街頭配布は、そうした「喜び」や「成長」とは無縁の、脳神経を全く刺激しない単純労働にすぎない。働くことによる喜びや成長は、知恵を絞り、さまざまな困難を乗り越えた先にある。それを知る前に、人間性をスポイルするような単純労働に慣れてしまうと、「働く」ということに対する価値観は「金銭を得ること」以外に形成されなくなってしまう。

 マニュアルに従い全く自分の思考を用いない労働には、「飽き」がくる。するとその仕事を辞める。しかし、また金銭のために同じような仕事に就き、また辞めるということを繰り返す。フリーターの増大が問題になって久しいが、問題の根本はこんなところにあるのかもしれない。

 もちろん、職業に貴賎はなく、単純労働にも、その仕事の効率や質を向上させる「カイゼン」の余地はたくさんあるはずだ。要は、本人の意識、または雇い主の意識付けの問題なのだ。


  ◇        ◇        ◇  

 街頭配布は年々増加しているように思える。このあたりで一度、効率と本来の意義を考え直してみてはどうだろうか。そうでなければ、今後も駅前には何の感情も持たない「配布マシン」が跋扈(ばっこ)することになる。

 いや、「街頭配布」だけが問題なのではない。街頭配布を反面教師として、その業務の本来的な役割は何なのか、そして自分の働き方が形骸化していないか。創意工夫を欠かしていないか。そんなことを一度見直してみてはどうだろうか。


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2006.05.13

またもマーケティングとは関係のうすい話題ですが・・・

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やけに思慮深げな表情のゴリラは、雌の「ピーコ」。上野動物園の人気者だ。
麻袋をかぶっているのは寒いからではない。
どうやら掲示板を見ると、彼女のファッションであり、他にも「着替え」をたくさんもっているようなのだ。

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昨年もこのゴリラを見たとき、麻袋をかぶっていたが、係員が色々な布を彼女に提供したのだろう。
それ以来、コーディネートを楽しむようになったようだ。

かつて人間は「道具を使う唯一の霊長類」といわれ、その類の中で人間だけが特別に優れた存在であるという論拠になっていた。しかし、その後各地で道具を器用に使う猿の仲間の姿が発見され、その論拠を失った。

「ピーコ」を見ればわかるとおり、道具を使うという利便性を追求するだけでなく、ゴリラもファッションという感性を充足させるための行為をする。人間と一緒だ。

「人間は偉いから、他の動物を好きにしていい」と奢った考えの人々がゴリラを存亡の危機にさらしている。
彼らと人間は大して変わらないのだという認識をもっと広めたいものだ。

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2006.05.12

「質問編」顧客視点”入門講座 第2回「SWOT分析ができません!!」

・・・どうやら、バックナンバーのアップが1ヶ月ずれていたようです。スミマセン。
「販促会議」のバックナンバーは先日アップしたばかりですが、先月号分を急遽アップします。

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「質問編」顧客視点”入門講座 第2回「SWOT分析ができません!!」

 顧客のことをよく分かるためにも、まずは「自分自身のことが分かること」が重要だ。そこで、マーケティング環境分析ということで、前連載の第8回にSWOT分析と3C分析を紹介した。しかし、「それがうまくできないんです!!」という声がよく聞こえる。
 昨今の企業では、何か社内起案をするときには、何らか社内企画書を書き、SWOT分析を盛り込むことが義務付けられていることが多いようだ。試しに、筆者が社内研修を担当した企業で社内企画書のSWOT表を見てみた。・・・確かにダメだった。

■「ダメなSWOTの共通点」とは?
 前連載で「SWOTも顧客視点で」と注意事項を挙げたが、やはりそれができていない。項目によって「顧客の視点」だったり、「自社の視点」だったり、はたまた「競合の視点」だったりと、入り交じってしまっているのだ。
 第二にダメな点は「時間軸」。記述内容が「現在のこと」と「将来的なこと」。もしくは「過去の事実」など時間軸がバラバラになっている。
 そして第三に極めつけとして、S/W/O/Tの各々の分解を強引にしていることだ。確かにこの表を埋めていくと、「この事実は果たして強みなのか?弱みになるのか?」「これは機会なのか?脅威なのか?」と悩むことが多い。無理に分類すれば、意味はまるで逆になる。その結果で「そうか、これが当社の強みで、今が正に機会なのだな」などと経営判断がなされようものなら、目も当てられない。
 ポイントの一つ目は、悩んだのなら無理に分類せずに、線の中間にその要素を置いておけばいいのだ。「この要素は不確定要素が多く判別不明です」という分析者のメッセージが伝わる。もしくは、もう少し頑張るなら、その要素を線の中間に置き、プラス面とマイナス面を考察して線で結んで書き込んでおけばいいのだ。「判断の事実は足りないものの、分析者としてはこのように考察した」というメッセージが伝わる。何事も無理矢理と、説明不足が後に悲劇を生むのである。

■やはり「マクロ分析」から入ってみよう(図1参照)
 前回は連載の回数の都合もあり、「マクロ分析」は余り詳細には語らなかったが、やはりきちんと説明が必要なようだ。図1にあるような表を作り、まず、各々の項目がどのような環境にあるのかを列挙し、自社と競合のプラス面とマイナス面を埋めていこう。かなり体力のいる作業であるが、根性だ。
 まず、マクロ分析といえば、「PEST分析」から始めるのが本来は基本だ。「PEST」とは、P= Political:関連法案や規制など、政治的な影響はないか。E = Economical: 自社を取り巻く経済環境はどうなのか。好景気であればよい業種ばかりではない。また、自業界の先々の経済見通しも需要だ。S = Social:経済情勢だけでなく社会情勢全般を見渡すことが重要だ。人口動態や人々の関心に登っている社会問題など考慮せねばならない。T = Technological:現状の技術的な側面はどうなのか。自社にとって優位な技術、脅威となる技術などを明確にしておくことが重要だ。

 3Cは前連載で詳説したつもりであるが、もう一度おさらいしておこう。3C分析とは市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の頭文字を取ってたわけであるが、慣れてくるとPESTはらみっちり分析するのではなく、この3Cだけでかなりのことが整理できる。Customerは自社顧客だけを意味するのではなく、市場に広く存在する、顧客となりうるべき生活者を意味している、その意味からは「市場」という日本語訳の方が本来の意味に近い。市場全体を広く見渡し、自社のチャンスとチャンスロスの危険性を探ってみよう。Competitor =競合となりうる企業を洗い出し、それらの動きを観察し、市場全体の動向を把握する。Competitorといっても伝統的ライバル会社だけではなく、昨今では思いもよらぬ企業がCompetitorになることも少なくないので、できるだけ広い視野で捉えることが必要だ。Company =「自社の思い」や「将来の計画」などを廃して、現在のFACT(事実・現実)を中心に洗い出す。

■さて、この勢いでマーケティング・ミックスも洗い出そう。
 ここの時点まででかなり体力を使ったであろうが、もう一がんばり。自社と競合のマーケティング・ミックスを洗い出そう。Product = 製品:自社と競合の製品的な違い・強み弱み。Price = 価格:自社と競合の価格戦略の違い。例えば、新製品を上市するとき、高い価格で早期の資金回収を図りつつ、値崩れを防ごうとすることを「スキミング・プライシング」という。一方、値崩れは防げないと考えて、初めから安い価格で押しだし、一気にシェアを取ろうとする「ペネトレーション・プライシング」という。どちらで打って出るのかによって、価格の設定はかなりダイナミックな違いが出てくるはずだ。Place = 販路:自社と競合の流通経路の特徴と、経路に起因する売り方及び情報取得の方法の違い。特に商品の流れ「物流」と、お金の流れ「商流」、情報の流れ「情報流」は各々異なると理解すべきだ。エンドユーザーとの間に仲介者の存在の有無で、特に「情報流」は異なってくる。Promotion = プロモーション:間違ってもこの部分だけで狭義のマーケティングを考えないこと。また、メディアも多様化しており、同様にプロモーションの方法も昨今大きく変化している。とにかく幅広に考えてみること。

■マトリックスが埋まったら・・・ 
図1のマトリックスが埋まったら・・・といってもマトリックスを埋めるためには慣れたマーケターでも2時間はかかるだろう。新人マーケターであれば、一人で悩んでも仕方がないので、分からないところは、どんどん分かりそうな人に聞きに行くことをお勧めしたい。また、判断に迷ったときは、前述の通り、「仮置き」としてプラス要素とマイナス要素の中間に書き込んでおくことだ。

 さて、「SWOTはどうしたんだ?」とそろそろ言われそうなので、図2を参照されたい。ここまで苦労して書着込んできたマトリックスを、まず3Cの「Competitor」のところで上下に分けてみよう。Competitor以上の項目が「外的要因」。「Company」以下の項目が、「内的要因」である。さて、次に、各々の項目のプラス要因とマイナス要因の間に線を引いてみよう。さて、何が見えてくるか。左下の象限は「内的要因のStrong」だ。右下が「内的要因のWeakness」。左上が「外的要因のOpportunity」。右上が「外的要因のSleight」。ほら。SWOT表単独でマス目を埋めようとウンウン唸っていたのがウソのように、網羅的かつ・詳細にSWOTができあがっているであろう。
 当然、各項目をもう一度見直し、検証したり、迷ってプラスとマイナスの中間に置いた項目も、周りの項目を考慮して無理なくどちらかに入れられるなら、きちんと整理した方がよい。

 そして、この表が完成したら、S/W/O/Tの象限毎に、象限の持つ意味合い、つまり、状況は明るいのか暗いのか。原因は何か。解決するための打ち手は何かを検討する。それを四象限全て検討し、最後に全体として、自社の状況は明るいのか暗いのか。解決する打ち手は何かを検討する。つまり、この課程こそが「戦略の立案」で、マトリックスを埋めている課程は単なる「作業」にすぎない。その意味からも、単独のSWOT表などは、単なるパーツの一つに過ぎず、そこから戦略など出ようもないことが分かるだろう。
「急がば廻れ」なのだ。

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2006.05.08

「続”顧客視点”入門講座:第1回」

 前号までで、「”顧客視点”入門講座」は連載12回、1年間で一区切りをつけた。しかし、筆者にもまだまだ伝えたいこともあり、読者からもいろいろな質問が寄せられている状況だ。そこで編集部の御厚意に甘え、前12回で記した内容に具体的な例示を加えたり、別の角度から説明し直すなどして、「顧客視点」というものをもう1年かけてより完全に伝えていきたいと思う。

■「カスタマーインサイト」は分かったが・・・
筆者に寄せられる質問の中で最も多いのが、前連載の第4回で紹介した「カスタマーインサイト」をいかにすれば実現できるのか?というものだ。「カスタマーインサイト」をもう一度おさらいしよう。
 カスタマーインサイトとは、「顧客の心を洞察する」という意味であり、<Recognition><Time Saving><Peace of Mind>という3つの構成要素からなる。(図1)
<Recognition>は顧客の存在を適切に認知・評価すること。顧客のプロフィールデータや購買行動データ、来店履歴やWEBへの来訪・利用履歴などを用いて把握すること。言ってみれば商売の基本である「大切なお客様のことはちゃんと分かっています!」という態度を示すことにつながる。
<Time Saving>は利便性の提供、若しくはボトルネックの解消である。これも商売からすれば当然のことであり、「お客様にお手間は取らせません!」という姿勢を示すことだ。
<Peace of Mind>は理解するのが少し難しい。その意味するところは「本質的な価値」の提供によって、顧客に安心感と満足を与えることである。結果、顧客は「ああ、これでよかったんだ!」という気持ちになり、顧客と企業及び担当者の相互信頼関係が生まれる。
ざっと説明すれば上記のような内容になり、「ふむふむ、これは重要だ」と頭では理解できる人も多い。しかし、これを実現しようとした場合「じゃあ、具体的にはどうすればいいんだ?」ととたんに途方に暮れてしまう人が多いようだ。

■まずは「本質的価値」の理解から
 カスタマーインサイトにおける最重要ポイントは「本質的価値」の理解だ。自分は顧客に対して何を提供しているのかということが理解できていなければ、商売は始まらない。しかし、それを理解しないまま、セールスマニュアルに乗っ取って型どおりのセールス活動を展開している例が散見される。
 前連載で「本質的価値」の具体例として、生命保険は「保険証券」や「補償額」などではなく、「加入していることによって得られる、万が一の時の安心感」であると述べた。保険証券という目に見える物質や、補償額という数字だけに捕らわれるのではなく、その根本にある顧客が欲しているものを洞察するのが要点なのだ。
 どうしてもうまくそれが見つけ出せないというのであれば、オーセンティックなマーケティングのフレームワークを利用してみればいい。フィリップ・コトラーが示した「製品特性分析」(図2)を見てほしい。製品は大きく「コア」「形態」「付加機能」の三層に分かれて考えられる。「コア」とは顧客に提供するべき「ベネフィット(便益)」である。筆者のいう「本質的価値」に意味としては近い。さらに注目すべきは、そのベネフィットがどのような「形態」で提供されているのかという点である。例えば、「安全・快適にスキーに行くために車を四輪駆動車に買い換えよう」と思っている人がいたとしよう。その人にとっての製品の「コア」は「安全・快適な移動手段」である。それを実現する「形態」として「四輪駆動車」をまずは想定しているという状況だ。ここで自動車の販売担当者が「さすがにお目が高い。当社の四輪駆動車はこんなにパワーがあって、ステアリング特性も・・・」などとスペックを羅列しても、その顧客には響かない。顧客の欲しているのは「安全・快適にスキー場に移動すること」なのだ。別の「形態」でそれを実現する方法を考えれば「新幹線でスキーに行く」ということでも実現できる。いや、新幹線の方が確実に安全であるし、眠ったりお酒を飲んだりすることができるので快適性も数段上だ。そうした顧客の心を汲み取って、顧客の最も欲しているベネフィットに沿って「コア」と「形態」の魅力を説得しなければ、顧客は「まあ、別に四輪駆動に買い換えなくても、たまにスキーに行くときは新幹線を使えばいいか」とあっさり購入を棄却してしまうだろう。

■「本質的価値」が分かったら次は・・・ 
前項で本質的価値に関しては理解できただろうか。では次にはどうすべきなのか。まずは(図3)を見てほしい。「何だ、今までの図を逆さまにしただけじゃないか」と言うなかれ。Recognition→Time Saving→Peace of Mindというステップは、「どのように顧客を理解すべきか」という考え方の流れを示している。それを実行に移すには、Peace of Mind→Time Saving→Recognitionという、逆の流れで一つ一つ要素を確認していきながら、顧客に向かい合う準備をするのだ。
 前項で述べたとおり、まずは「自分が顧客に提供するものの真の価値はどこにあるのか」をとことん考える。そして「自分たちはこんな存在なんだ」という確信が持てれば、おのずと次に「それではお客様にはこんなふうに接しよう」という、とるべき行動が見えてくる。さらにそこまで分かれば、今までの顧客との接触がいかに表面的であったかも分かるだろう。「お客様のこんなところも理解しなくては」と思うようになるに違いない。この流れは今までの自分の営業や販売における顧客との接触を省みるためのものなのだ。

■カスタマーインサイトの達人になれば・・・ 
前連載と今回でカスタマーインサイトを理解するためのフレームワークを詳説したが、フレームワークを埋めていくことが目的化してしまわないことが重要だ。マーケティングにおいては様々なフレームワークが使用される。本連載においても今後も様々なフレームワークを紹介することになるだろう。しかし、フレームワークの本来の目的は「ものごとを客観的に、モレ・ヌケなく把握する」ために使うことにある。飽くまでそれは、顧客とのコミュニケーションにおける部品であり、道具でしかない。その点を間違えないよう留意が必要だ。本当にそのフレームワークを使用し導出することに慣れれば、逆にフレームワークなど使わずに一気に結論にたどり着けるようにもなる。本当の商売人とは、そうしたものなのだろう。そんな例を一つ。

 それは、もう10年以上前にうかがった、噺家・桂文珍師匠のお話である。曰く、「大阪で980円カメラのワゴンセールをやってました。そこはさすがに客の心が良くわかる大阪の商人がすることで、東京だったら『激安!』と(POPに)書くところを、ズバリ一言書いていた。『写る』だ。980円が安いのは当たり前。見ればわかる。それよりもカメラを手に取った客に『安っすいなー。でも”ちゃんと写るんやろか?”』と思わせないことが大切なんですな」。脱帽である。

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2006.05.02

デザインの力

東京駅の通路に掲示された「IKEA」のポスター。
そのユニークな取り扱い商品群のデザインはひときわ目を引き、通りかかる人の足を止めさせます。

折しも結婚式の帰りとおぼしきカップルが、しばらくたたずみ、「こんなの家にあるといいねぇ」などと話していました。

商品のデザインの力。それが強力なら、それだけで広告が成立してしまうのだなと、純粋に感心してしまいました。

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2006.05.01

AIDEESモデルとは?

以前の「伊東屋」の記事に関連して、ある方から「AIDEESモデル」に関するご質問を頂いたので、ここで公開します。

AIDEESは日経MJ4月14日のトップ記事になったので一気に有名になりましたが、まだあまり一般的でないように思います。ニフティーが随分熱心に自社のサービスモデルがAIDEES二以下に適合しているかアピールしていますが・・・。
http://www.nifty.com/buzz/concept/aidees.html

Enthusiasm = 熱狂 するほどのファン化した顧客でなければ、Share=推奨は起こりません。推奨行為には、「推奨した相手が同じような評価をしなければ、相互の関係が気まずくなる」というリスクを伴っています。そのリスクテイクをあえてしてまで推奨すると言うことは、顧客満足が最大化している事を示します。その意味ではAIDEESは「ネットマーケティングのこれからの新しい生活者行動モデル」などと言われ始めているようですが、リアルの世界でも何ら変わりません。(ネットの世界の方がShareがしやすく、かつ伝播する範囲・速度が桁違いであるという点が確かにありますが、Enthusiasm = 熱狂という前のプロセスが完遂していなければShareは起こりません。

Shareをするもう一つの理由に、「自分の買ったモノがいかにすばらしいものであるか」を人に伝え、「自らは正しい買い物をした」と思いたいという「認知的不協和の低減化」を図る心理があります。こちらの場合であれば、AIDEESモデルよりAISASモデルの方が説明力がありますね。(AISASモデルは宣伝会議社刊「ホリスティック・コミュニケーション」に詳説されています)。

以上、何かご質問があればコメントをください。

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