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【マーケティング講座】

お勧めマーケティング関連書籍

  • 金森 努: 3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング(DOBOOKS)
    初めての人から実務者まで、「マーケティングを体系的に理解し、使えるようになること」を目的として刊行した本書は、2016年に「最新版」として第2版が発売されました。 それから6年が経過し、デジタル技術の進化やコロナ禍という大きな出来事もあり、世の中は既に「ニューノーマル」に突入しています。 その時代の変化に合わせて本文内容の改訂、新項目の追加や事例の差し替えなどを大幅に行ないました。
  • 金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)

    金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)
    「マーケティングって、なんとなく知っている」「マーケティングのフレームワークは、わかっているつもりだけど業務で使いこなせていない」・・・という方は意外と多いのが実情です。 「知っている」「わかっている」と、「使える」の間には、結構大きな溝があるのです。 その溝を、最低限の9つのフレームワークをしっかり理解し、「自分の業務で使いこなせる」ようになることを目指したのがこの書籍です。 前著、「最新版図解よくわかるこれからのマーケティング」は、「教科書」的にマーケティング全体を網羅しているのに対して、こちらの「9のフレームワーク・・・」は、「実務で使いこなすための「マニュアル」です。 もちろん、フレームワークをしっかり理解するための、実事例も豊富に掲載しています。 「よくわかる・・・」同様、多くの企業研修テキストとしてもご採用いただいています。

  • 金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)

    金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)
    旧版(水色の表紙)は6年間で1万部を販売し、それを機に内容の刷新を図りました。新章「ブランド」「社内マーケティングとマーケティングの実行」なども設け、旧版の70%を加筆修正・新項目の追加などを行っています。本書最新版は発売以来、10ヶ月で既に初版3千部を完売。以降増刷を重ね、約1万部を販売していおり、多くの個人の方、大学や企業研修で「マーケティングのテキスト」としてご愛顧いただいております。

  • 金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)

    金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)
    ヒット商品ネタ51連発!このブログ記事のネタを選りすぐってコンパクトで読みやすく図表付きに再編集しました!

  • 金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)

    金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)
    打倒「もしドラ」!を目論んだ(笑)ストーリー展開のマーケティング本。初心者にもわかりやすいマーケティングの全体像に基づき、実践・実務家も納得のリアリティーにこだわりました!

  • 金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える

    金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える
    ペンギンの世界を舞台に「考えるとはどういうことか」「論理的思考(ロジカルシンキング)とは何か」を考える、スラスラ読めて身につく本です。初心者の入門書として、一度学んだ人の復習にと活用できます。

  • 金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本

    金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本
    マーケティングをストーリーで学び、「知っている」が「使える」になる本。1つ1つのフレームワークが、面白いように「つながっていく」感覚を実感してください!

  • 金森 努: “いま”をつかむマーケティング

    金森 努: “いま”をつかむマーケティング
    7編の取材を含む、2010年のヒット商品など約30事例をフレームワークで切りまくった「マーケティング職人・金森」渾身の1冊。フレームワークを学びたい人にも、フレームワークの具体例を知りたい人にも、朝礼で話せるコネタが欲しい人にも役に立つこと間違いなしです!

  • 長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語

    長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語
    「分かるとできるは違う」と言われるが、両者間には距離がある。実業務のどこで使えるのか気づけない。だから使えない。本書はお菓子メーカーのマーケティング部を舞台にした「若者2人の成長物語」を通して、戦略思考、論理思考、クリティカル・シンキングなどの、様々な思考法が展開されていく。ストーリーで「使いどころ」をつかめば、実践できない悩みの解消が図れるだろう。 (★★★★★)

  • ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

    ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
    フレームワークの「使用上の注意」は、「人の心はフレームワークだけでは切れない」を常に認識することだ。「行動経済学」に注目すれば、経済合理性に背く人の行動の謎の意味が見えてくる。謎の解明を様々なユニークな実験を通して、著者ダン・アリエリー節で語る本書は、「フレームワーク思考」に偏りすぎた人の目から何枚もウロコを落としてくれるはずだ。 (★★★★★)

  • セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践

    セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践
    「顧客はドリルが欲しいのではない、穴が空けたいのだ」や、「マーケティング近視眼(Marketing Myopia)」で有名なレビット教授の名著。製品とは何か。サービスとは何か。顧客とは何か。そして、マーケティングとは何かと問う、今まさに考え直すべき原点が克明に記されている名著。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
    コトラーはマーケティングは「製品中心(Product out)=1.0」「消費者中心(Customer Centric)=2.0」。それが「人間中心・価値主導(Social)=3.0」にバージョンアップしたと論じている。本書は「マーケティング戦略」の本というよりは、今日の「企業のあるべき姿」を示しているといえる。その意味では、「では、どうするのか?」に関しては、新たなソーシャルメディアの趨勢などに考慮しつつ、従来のコトラー流2.0を十分に理解しておくことが必要だ。 (★★★★)

  • 鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)

    鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)
    広告に関する本は、いわゆる広告論や広告制作の手法を述べていても、マーケティング理論を前提としたものは少なかったように思います。「マーケティングの中における広告ビジネス」を具体的にまとめました。さらに、当Blogで「勝手分析」した事例を企業取材によって、マーケティングと広告の狙いを検証しました。多くの現役広告人と広告人を目指す人に読んでいただきたいと思います。

  • 金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)

    金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)
    金森の著書です。フレームワークやキーワードやセオリー、事例をマーケティングマネジメントの流れに沿って102項目で詳説しました。フレームワークの使いこなしと事例には特にこだわりました。金森のオリジナル理論もあり!

  • 山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える

    山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える
    リーダーの戦略や、チャレンジャーがリーダーを倒す方法など、ポーター、コトラーの理論を更に実践的な事例と独自フレームワークで解説した良書。事例がちょっと古いが、今、読み返してもためになる。在庫が少ないので、中古本でも出ていれば即買いをお勧め。 (★★★★)

  • 金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)

    金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)
    このBlog記事一話一話が見開きで図解されたわかりやすい本になりました。ヒット商品のヒミツをフレームワークで斬りまくった、ネタ56連発。是非一冊!

  • 後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて

    後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて
    「レスポンス広告」とは資料・サンプルの請求や商品の注文を消費者から獲得するための広告のこと。そのための方法論は、ブランドイメージをよくするといった目的とは全く異なる。本書は多数の広告サンプル(精度の高いダミー)を用いてレスポンス広告のキモを具体的かつ詳細に解説している。「レスポンス広告の鬼」たる筆者ならではの渾身の1冊。 (★★★★★)

  • ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン

    ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン
    どんなすばらしいマーケティングプランも、結局は人が動かなければ成功しない。故に、リーダーシップ論が重要となる。本書はコッター教授の「企業変革8ステップ」が寓話の中でわかりやすく記されている良書である。金森絶賛の一冊です。 (★★★★★)

  • マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則

    マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
    2000年発売の良書。旧タイトル「ティッピング・ポイント」が文庫本化されたもの。クチコミの本ではなく、イノベーションの普及が何かのきっかけで一気に進む様を、各種の事例を元に解明した、普及論にも通じる内容。(うっかりリストに入れ忘れてました)。オススメです。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学

    野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学
    経済分野最強のジャーナリスト勝見 明紙と、経営学の大家野中 郁次郎先生という黄金コンビによる傑作。いくつもの企業でのイノベーション事例を物語風に紹介しながら、その変革の要諦を解明、さらなる提言をメッセージしている。読み応え十分。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの本質

    野中 郁次郎: イノベーションの本質
    最新刊の「イノベーションの作法」に比べると、少々こちらは「野中理論」の難しい部分が表面に出ているように思えるが、発売当初、ナレッジマネジメントの観点からしか読んでいなかったが、読み返してみれば、本書の1つめの事例である「サントリー・DAKARA」はマーケティングでも有名事例である。むしろ、本書での解説は、マーケティングのフレームワーク上の整合ではなく、そのコンセプト開発に力点が置かれており、その精緻な記述は圧巻であった。読み直して得した気分になったので、ここで併せて紹介する。 (★★★★)

  • グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業

    グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業
    だいぶ発売されてから時間が経ってしまったのですが・・・。 二度目に読んで、「お勧め」しようと思いました。 そのわけは、一度目は「いかに顧客と優良な関係を構築することが重要か」という当たり前なことを力説しているだけの本だと思ったからです。 事実、そうなんです。アドボカシー(advocacy=支援)という新しい言葉を遣っただけで。 ただ、その「当たり前なこと」のまとめ方が秀逸であり、我々マーケターにとっては「当たり前」でも、その考え方がどうしても理解できない石頭な人に読ませると、なかなか効果的だと分かりました。 さて、皆さんもそんな人が周りにいたら読ませてみては? (★★★)

  • レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」

    レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」
    ダイレクトマーケティングの創始者であり、金森の心の師でもある、レスター・ワンダーマンの「BEING DIRECT」(英文名)が12年ぶりに改訂されました。 詳しくは、Blog本文の10月16日の記事を参照ください。 必読の書です。 前版は電通出版だったので入手が少々面倒でしたが、今回は一般の出版社からの刊行なので、アマゾンで購入できます。この本の画像をクリックすれば、アマゾンのサイトにリンクしますので、是非! (★★★★★)

  • フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式

    フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式
    実は、この本は金森の入院中の頂き物。結構はまりました。 スウェーデンの売れっ子セミナー講師が自らのセミナーで用いている30の設問を、気の利いたイラストに載せて紹介している。「レンガの使い方を10通り挙げなさい」のような、「ん?どこかの自己啓発セミナーで聞いたな~」というようなネタもありますが、ひねりの効いた問いかけもいっぱい。ざっと流し読みしたら20分で読み終わってしまう絵本になってしまいますが、本気で問いかけの答えを考えると、なかなか論理思考も鍛えられます。金森もお気に入りの問いかけは出典を明らかにして、自分の企業研修で使わせてもらっています。 ちなみに、この本の2(続編)も出ています。2冊揃えば送料も無料。「あわせて買いたい!」。 (★★★★★)

  • パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う

    パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う
    重要な本をお薦めするのを忘れていました。この本も結構、私の座右の書となっています。「ミッションステートメント」の重要性もコラム等で繰り返し述べてきました。それがしっかりしていないが故に、会社自体が方向性を見失い、社員も求心力をなくす。また、顧客のことも忘れてしまう。ミッションステートメントは壁に黄ばんだ紙に書いてあるものを、朝礼で呪文のように唱和するためのものではないのです。社員全員、全階層がそれを本当に理解し、行動できれば会社に強大なパワーが生まれるはずです。この本は「強い企業の強いステートメント」が紹介・解説された良書です。 (★★★★)

  • エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学

    エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学
    もはや絶版でプレミアがついて現在ユーズドで3万円!(昨年までは2万円以下でした。定価は8千円弱)。 しかし、一度は翻訳版とはいえ原書を読みたいもの。 私のコラムでもよく取り上げています。 様々なマーケティングの入門書にも部分的に取り上げられていますが、誤った解釈も多く、「イノベーションの普及速度」などの重要項目も抜けています。 ただ、基本的には社会学の学術書なので、完読するのはチトごついかも。(それで星4つ。内容的には断然5つですが。)3万円ですが、手にはいるならラッキー。 10万円にならないうちに・・・? (★★★★)

  • ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業

    ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業
    すみません。これは宣伝です。 Blogにも「共著で実践的なナレッジマネジメントの本を出しました」と紹介いたしましたが、この度第二版(重版)ができました。 初版で終わったしまうことの多いビジネス書において重版はうれしい! まだお読みになっていない方は是非! (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪

    フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪
    これも分かっている人向き。 コトラーの中では「最も今日的な本」であると言えるでしょう。コトラー大先生と私ごときを並べて語るのは不遜の極みですが、私が旧社電通ワンダーマンのニューズレターや日経BizPlusの連載でしきりに訴えてきた内容が集約されている気がします。うーん、大先生と何か視点が共有できているようで読んでいて嬉しくなってしまった一冊でした。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト
    今度は分かっている人向け。そういう人はたぶんもう買っていると思いますが・・・。 コトラー特有の大作ではなく、マーケティングの中でも重要なコンセプトを80に集約して解説を加えた、ある意味他のコトラー本の「攻略本」とも言える。 常にデスクサイドに置いておき、用語集として使うもよし、ネタに困ったときにパラパラと眺める「ネタ本」としてもよし。マーケター必携の本であると言えましょう。 (★★★★★)

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2006.04.25

「文脈の崩壊をもたらす"小集団化"と"右脳ブーム"」

日経BizPlusの連載が更新されました。

今回はここ数年来思っていたことと、昨今の流行を合わせて原稿にしたためてみました。
間違いなく、今日の日本人はコミュニケーション能力が落ちてきていると思います。
回復のキーワードは標題にある「文脈」構成力であるというのが金森の持論です。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm


----------------<以下バックナンバー用転載>-----------------------

 最近「何の話をしているのかわからない人々」にしばしば遭遇する。筆者は仕事の幅が広いせいか、様々な人々と出会う。すると、出会った人々と「会話が成立しないケース」が少なからず発生する。どうやら、人々の「会話の仕方」が変わってきているように思えてならない。

■「言わずもがな」のムラ社会化も一因

 日本語はもともと「主語を省略しても内容が伝わる」という特性を持っている。しかし、最近は「主語を省略する」傾向が一層加速しているようだ。

 その一因として「専門領域の細分化(=専門特化)」「趣味・嗜好の多様化(=細分化したコミュニティーの発生)」「年代間の差異性の細分化」などで、同質の特性を持った集団(セグメント)が形成されていることが挙げられる。「小集団内」であれば、会話の主語は「言わずもがな」なので、問題を引き起こさない。しかし事情がわからない人がこうした「小集団」に入り込んで会話をすると、「何の話をしているのかがわからない」ということになる。

 「主語の省略」と同様、クセモノなのが「ワンフレーズ化」だ。筆者はあるマーケティングの講義で「このケースで企業の成功理由を説明してください」と問い掛けた。すると、受講生の回答はたった一言、「顧客満足!」であった。

 質問の意図は「どのような状況に、どのような施策が選択・実施され、成功に至ったのか説明せよ」である。確かに「顧客満足を獲得したこと」は成功の主要因ではあるが、そこに至る過程を省略してしまったら解答とは言えない。

 しかし、当の受講生は自らの答えに満足気だ。確かにマーケティングのクラスという「小集団」では、そのワンフレーズで途中の過程を推測できる。しかし、「推測を加えて理解できる」では、本当の意味で「説明した」とはいえないだろう。

 「主語の省略」と「ワンフレーズ」は小集団においてのみ、成立するコミュニケーションだ。しかし、それは「言わずもがな」が通用するムラ社会に限られている。社会で多様な小集団が多数構成されていくのに伴い、「隣ムラ」との会話はますます成り立たなくなっていくわけだ。

 文脈を構成しようとするのは「相手にきちんと伝えようという意思」の表れだ。しかし、居心地の良い小集団に身を置いている限り、その努力の必要はない。社会の細分化→小集団化→集団内でしか成立しない会話→「文脈力」の欠如→他人への働きかけの欠如→自己中心的・自己満足社会の拡大?? 何やら社会の危機を感じざるを得ない。

■最近はやりの脳力開発ブームへの疑問

 こうした「文脈力」を軸に考えると、最近の「脳力開発ブーム」にも何となく危うさを感じる。アンチエイジング(抗加齢)や教育など、ブームの背景は様々だ。しかしゲームソフトの内容を見てみると、ほとんどが「右脳強化」を目的としたものであることに気がつく。

 「右脳」はイメージ、直感、芸術性、創造性、潜在意識などを司っており、右脳を強化することで芸術的な感性やアイデアも開花するといわれている。しかし、「文脈を構成する力(=相手にこちらの意図を伝えようとする力)」を司るのは言語認識、論理的思考などを処理する「左脳」だ。左脳を置き去りにした脳力開発。ここでも「相手に意思を伝える力」という観点が欠落しているように思える。

 「文脈力」はこまぎれの知識からは生まれにくい。例えば、日本語能力の向上という意味では、平成4年から始まった「漢字検定」がある。年を追う毎に受験者数は増え、10年間で200万人を突破した。しかし「漢字検定」はあくまで読み書きの能力を測るものであり、文章の構成力を問うものではない。日本の学生の数学(算数)では「数式を解く能力の低下」ではなく「文章問題の文脈を理解する能力の低下」が指摘されている。「漢字能力」と「文脈力」の関係と、「計算力」と「文章問題を読み解く力」の関係――いずれも問題の本質は同じではないだろうか。

■美しい日本語・正しい日本語を鍛えるには

 「文脈力」の訓練は、文章を書くことに尽きる。「書く」という行為は不特定多数の人に理解してもらおうと努力するが故に、「相手が理解できるようにする」ため文章の構成に力を注がざるを得ないからだ。

 「文章を書く機会は昔より増えている」との反論もありそうだ。本当にそうだろうか? 流行のブログ(Blog=日記風簡易ホームページ)は、「誰が読んでくれるか分からないけど、とりあえず思ったことを書いてみよう」と文章を綴るのでは訓練にならない。「モノローグ」には「人に何か伝えよう」という意識はないからだ。

 「携帯電話からのメール」は「特定の相手にのみ向けられたメッセージ」である故に、思いついたことを打ち込んでいるに過ぎない。文章を書くのとは、頭の働きは全く異なる。

 パソコンや携帯は打ち込む時間も短縮できるし、頭に浮かんだことを次々と文章にできる。しかし、「書く」は原稿用紙のマス目をカリカリと埋めていくことが基本だ。それは頭に浮かんだことを腕とペンを使って、文字として出力していくという手間のかかる作業。ある意味、肉体労働だ。アタマでは何度も「この表現で正しいのか? 人に伝わるか?」という推敲の作業が行われている。

 ところがペンと原稿用紙がパソコン・携帯に置き換わったとき、そうした思考回路は脇に押しやられる。手軽さと軽便さの裏返しとして「読み手に伝えようとする意識」が希薄になり、「文脈力」はないがしろにされてしまう。

■「文脈力」欠如は過度のコンピューター依存の産物?

 コンピューターは情報の処理はできるが、ストーリーを組み立てることはできない。それは人間の役目だ。しかし、その人間の側が情報処理とストーリー構成を連携させる能力を喪失し始めている。急増する陰惨な事件も「この行為によって、どのような結果が引き起こされるのか」という因果関係をイメージできなくなっていることが一因ではないだろうか。

 コンピューターの普及に伴い、私たちは以前では考えられないほどの情報にさらされている。当然「情報処理のため」脳を使う場面は増えた。いきおい、左右の脳の連携という脳の一番大切な機能を十分使わなくても済む場面が増えている。

 社会のデジタル化は今さら止められないだろう。だからこそ右脳だけでなく、左脳を鍛える機会こそもっと増やすべきなのである。今日の右脳ブームは、「感性」「創造」を無視した「左脳偏重教育」の反動でもてはやされている側面が強い。しかし、それではバランスのとれた脳の教育にはならない。「読み手に伝えようとする意識」を持ち、論理構成力・文脈構成力を養うには左右の脳をバランス良く鍛える教育機会「文章を書く」の重要性を見直す必要がありそうだ。

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コメントありがとうございます。NIKKEI NETの記事を勝手に引用した、私のBLOGにご本人からコメントいただけるとは、想像もしていませんでした。

また参考にさせていただきます。

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» 文脈崩壊現象 [自論自答 『組織行動論』]
NIKKEI NET Biz Plusコラム「文脈の崩壊をもたらす小集団化と右脳ブーム」を読んで。最近「何の話をしているのかわからない人々」にしばしば遭遇する。と筆者(金森 努氏)は述べる。そして以下のように続ける。日本語はもともと「主語を省略しても内容が伝わる」という特性を持っている。しかし、最近は「主語を省略する」傾向が一層加速しているようだ。 その一因として「専門領域の細分化(=専門特化)」「趣味・嗜好の多様化(=細分化したコミュニティーの... [Read More]

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