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2006.03.14

「夢や希望を忘れていないか?~新しく紡ぎ出されたきらめく言葉に触れて~」

日経BizPlusの連載が更新されました。

今回は3月3日に行なわれた、宣伝会議賞贈与式の模様を元にコラムを書いてみました。販促会議誌に連載を持っていることからご招待いただいたのですが、広告会社に10年7ヶ月も席を置いた者としては懐かしくも貴重な体験でした。
では、ご一読ください。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm

----------------<以下バックナンバー用転載>-----------------------

 昨年よりやや遅れたが、関東地方でも春一番が吹いた。寒の戻りがあった日には頬をなぶる風にまだ冷たさが残るが、それでも日差しにはどこか明るさが感じられる。「春寒(はるさむ)」「三寒四温」「一雨ごとの暖かさ」・・・この時期にはすぐそこまで来ている春を待つすてきな言葉がたくさんある。そんな季節に、筆者は春の訪れを告げるかのような、新たに紡ぎ出された「温かい言葉たち」に出会う機会を得た。

■ アイデンティティーのよりどころとしての広告

 先日、宣伝会議賞贈与式に出席した。宣伝会議賞は、広告とコミュニケーションの専門誌を発行している宣伝会議が主催している「若きコピーライターの登竜門」で、今回で43回を数える。今回の応募総数は20万件を超え、過去最高を記録したとのことだ。それを現役第一線で活躍するコピーライターが一次審査にかけ、さらに広告界の重鎮15人が最終選考を行う。グランプリを目指すファイナリストに残るのはわずか9人。通過率0.0045%の極めて狭き門なのだ。

 筆者は同社が発行する雑誌に連載を持っていることから来賓として贈与式に招待された。招待客にはファイナリストの作品がまとめられた冊子があらかじめ配布される。それを眺めていて、どの作品にも共通して新鮮な「夢や希望」「ユーモアや温かさ」がつづられていることに気づいた。

 「でも広告ってしょせん、商品を魅力的に見せるための衣装や化粧のようなものでしょ?」と言う向きには、ブランド論の大家、デビッド・A・アーカーの「ブランド・エクイティ戦略」や「ブランド優位の戦略」(いずれもダイヤモンド社)をお読みいただきたい。アーカーが「ブランドエクイティ」を定義する以前は、広告やブランドといったものは、商品をよく見せるための一時的な「取り繕い」と考えられていた。

 しかしアーカーは、その商品・ブランドの持つ“コア・アイデンティティー”の重要性に着目。コア・アイデンティティーを明確にしその価値を高めていくためのコミュニケーションのよりどころとして、広告活動を継続的に行うことを説いた。もはや三流の商品に金メッキを貼るような広告は通用しない。生活者もそれを見破るのだ。そして企業からのメッセージとして、生活者に直接届くコピーが、そのブランドの本質を的確に体現すべきなのは言うまでもない。

■夢や希望をたたえた言葉たち

 ファイナリストの作品の総評は、広告界の重鎮が述べられたので、今更筆者が論じるまでもないだろう。しかし、それらの共通点を言うのなら、一様に「明るさと希望」に満ちていることだ。世の中の負の部分をえぐり出し、ドキッとさせたり、不安をあおったりするネガティブアプローチも手法としては存在するし、効果的な場合も多い。例えばバブルの時代であれば、過熱した消費経済に一石を投じるようなネガティブな表現も、人の目を引き問題意識を目覚めさせるという効果があるだろう。

 しかし、長い不況のトンネルをやっと抜け、景気がよちよち歩きをはじめたばかりの今の人々の心理には、選出された作品がそうであったように、やはり暖かな春の息吹と清澄さが感じられるようなコピーが心に響く。コピーはその時代ごとに求められる姿を変えていくものなのだろう。

 加えて、作品の視座が徹底して「生活者視点」になっていることだ。商品を魅力的に見せようとすると、ともすれば「供給者側の視点」になってしまう。ファイナリストの作品は「自分ならどう使うだろう」「誰に何と言うだろう」「こんなことはあり得ないけど、あったら楽しいだろうな」といった具合に、あくまで生活者の目線から、自分や周囲の人々を対象に思いを届けようとして書かれている。マーケティングの一翼を担っているコピーライターも、昨今のマーケティングの主流である「顧客志向」をきちんと理解しているらしい。

 ちなみに、筆者が最もすてきだなと思ったコピーは、グランプリに輝いた、ペットフード会社のためのコピー「一度だけ話せるとしたら、なんて言いますか?」小安英輔氏の作品。次に気に入ったのは、準グランプリに選ばれた、お線香のためのコピー「生きている人には話せないことがあります。」塩野晃司氏の作品であった。

■自分自身の生き様のコピーを考えてみよう

 経済や社会問題など、とかく不安な出来事が多い現代。世の中の生活者は自分自身のことをどのようにとらえているのだろうか。自分の居場所が見つけられない引きこもり。働くということでの社会とのかかわりを築けないニート。様々な理由で自らの命を絶つ年間3万人以上の自殺者たち。彼らは、負の部分にばかり目を奪われ、周囲や時代に流されるまま生きているのではないか。

 そこで筆者からの提案だ。今回紹介したファイナリストたちのように、明るく前向きな気持ちで「自分自身のキャッチコピー」を考えてみよう。もちろん、前述のアーカーの論のごとく、適切なコピーを作るには「ブランドのコア・アイデンティティー」を定義しなければならない。それには「我は何者で、何のために存在し、何を行うべき者なのか」という深い思索が必要になる。

 力を持った言葉には魂が宿る。「言霊」である。「自分自身のキャッチコピー」が作れれば、それはいついかなる時にでも、自らを鼓舞する言葉となろう。

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