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10 posts from March 2006

2006.03.31

「観光地の金太郎飴化を防ぐ“ブランドステートメント”のススメ」

日経BizPlusの連載が更新されました。

今回は「一観光客の視点」と「マーケターの視点」をミックスさせて書いてみました。
金森は旅行好きなんですねー。
なかなか時間がなくて海外とかは行けませんが・・・。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm


----------------<以下バックナンバー用転載>-----------------------

柳に若葉が芽吹き、気の早いソメイヨシノがほころび始めた先週末。世間は春休み。溜まりに溜まった家族サービスのツケを清算すべく、筆者はスギ花粉の攻撃におびえながらも、西へ東へと短期間に小旅行を重ねた。そして旅行先でまた、奇妙な光景が見えてきた・・・。

■安・近・短の観光地が金太郎飴化!?

 一つは都心に近い観光地の定番、箱根。交通アクセスもよいため、筆者は頻繁に訪れる。メインは登山電車やケーブルカー、ロープウエー、遊覧船などの乗り物と名所・旧跡巡りだ。

 少し奥まったエリアにも温泉施設などがあるのだが、四季を通じて集客できるこれといった観光資源がない。かくしてそのエリアは、当地とはあまり縁のない、美術館や流行の“南仏風”ミニテーマパーク、体験型クラフトハウスが軒を並べるようになった。

 筆者はすぐ近くの河口湖でも、同じような風景に出会った。こちらの売り物は富士山を望める大遊園地と、湖を取り巻く温泉街だ。

 箱根は数年前から増えている日帰り観光客をどう引き留めるかに腐心している。その回答が前述の観光施設なのだろう。河口湖も事情は似たようなものだ。高速道路のアクセスが良いため、遊園地で遊ぶだけなら自家用車か高速バスで十分日帰りできるからだ。

 どちらの観光地も客を一晩泊めて、翌日も金を落としてもらうようにするのは並大抵の苦労ではないだろう。かくして、何か翌日も楽しく過ごしてもらうアクティビティーが必要となる。観光地間の集客競争がし烈を極めるご時勢。その土地とは関係ない観光施設でも、他で成功しているものがあれば、模倣してしまうのは人情というものか。かくして、同じような美術館やミニテーマパーク、クラフトワーク体験などが全国のあちこちで増殖することとなる。

■薄れゆく旅のエッセンス

 旅行に関する格言をひも解いてみると、その多さに驚く。イギリス生まれのエッセー作家で「宝島」「ジキル博士とハイド氏」で有名なスティーブンソン・ロバート・ルイス(Stevenson, Robert Louis:1850~1894)は、「希望に満ちて旅行することは、目的地にたどり着くことより良いことである」と旅の本質を洞見している。ドイツを代表する詩人・劇作家・小説家・哲学者であるヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe:1749~1832)は「人が旅をするのは到着するためではなく、旅行をするためである」と述べている。

 かつて旅行は手軽なものではなかった半面、見聞を広めながら、本人の内面を深く洞察する目的もあったと思われる。「旅行をしてどんな目的を達成するか(何をするのか)」が問題ではなく、「旅行は手段であって、その過程で何を得られるか」が重要だった。つまり、今日の旅行とは手段と目的が逆なのだ。

 一方、19世紀イギリスの評論家・美術評論家であるジョン・ラスキン(John Ruskin:1819~1900)は、旅行が簡便になった今日を予見したような「全ての旅行はその速度が正確に定まってくるにつれ退屈となる」という鋭い言葉を遺している。

 そう、旅行とは本来、「その場所に行って、提示されたアクティビティーのメニューを受け入れ、体験する」という型にはめられたものではない。目的地までの過程、目的地でのさまざまな経験全てを通じて、旅行者ひとりひとりがつくり上げていくものだ。人によって、また場所によって、それぞれの旅の形があるはずだ。最後までどんな体験が待っているのか予想できないワクワク感が、人を旅に駆り立てる。そして自らの五感で感じたことやそこでの思索や体験が、やがて心の糧となるのだ。

■「ブランド」構築の観点から観光地を見直そう

 全国のあちらこちらで「模倣」が進んだ結果、その商品やサービスがどこでも入手できるようになる。その結果、顧客に新鮮さを与えられなくなり、市場全体が地盤沈下していく――こうした例は枚挙に暇がない。もちろん旅行とて例外ではない。

 そうならないためにも、その観光地にどのような魅力があり、顧客にどのように提供できるかを「ブランド」という観点で整理し、ステートメント化(明文化)してみてはどうだろうか。筆者が考案したフレームワークに基づいて考えてみよう。本来、企業ブランドを考える際に使用するのだが、十分応用できるはずだ。

Kanamori18


 図のように、フレームワークは5つの要素で構成されている。その中心にあるのは「個性」、すなわち、他の地域(通常であれば企業)にはない(そこでしかできない)、その地域の独自性を表す部分だ。ピラミッドの上層にある「価値理念」は、その地域の哲学を表すブランドの価値ともなる部分だが、「その地域は顧客に対してどのような存在であるのか」を明確に定義することが前提となる。

 その個性を踏まえて、地域として自信を持って提供できるものは何なのか(「機能的付加価値」)、顧客との各種コミュニケーションを通じてどのような気分にさせることができるか(「情緒的付加価値」)を明確にしていく。両者とも、「その地域にしかできない」、言い換えれば「マネするのが難しい」(模倣困難)ほど強い力を持つ(そのため、それがないなら開発しなければならない)。最後に、これら4つの要素は、どのような顧客に提供するものなのか(「理想とする顧客」)を明確に設定する。誰も彼も「大切なお客様」としていたのでは「強いブランド」にはなれない。いや、ブランドとしてのアイデンティティーが形成できないことになる。図のピラミッドでは、それぞれの要素が相互にどのような関連性を持っているのかを検討することが大切だ。

 このフレームワークを埋めていこうとすると、現状では全く定義していない、あるいは新たに作り出さなければならない点が多いことに気付くはずだ。逆に言えば、今までいかに「競合する地域を横目で見るだけで、自分たちの本質を把握していなかったか」が分かるだろう。

 交通が便利になったおかげで、驚くほど短時間で、東京から離れた非日常的な空間に立つことができる。しかし、そこに広がっているのがステレオタイプな観光施設であり、「そこならではの何か」を発見できなくなっているとしたら興ざめだ。今回は、一人の旅行好きとして願いを込めて原稿をしたためた。この思いが届いて、再びそれぞれの地域が自らの姿を見直し、旅行者を迎えてくれるようになれば幸いだ。

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2006.03.29

「大学発ブランド」に関する考察

広島中国放送(RCC)ラジオの「道盛浩のバシャリキNOW」で、以前日経プラス1で金森がコメントした、様々な大学が大学名をブランド化して商品を発売している現象を解説して欲しいという依頼があったのは、下の記事にあるとおりです。

広島中国放送(RCC)ラジオさんからは、まだ出演テープがいただけていないのですが、「こんなことを話しました」とご報告の意味で、取材のネタメモをアップします。

この現象の根本は、やはり2007年からの「全入時代の生き残りをかけた大学のチャレンジ」の一つの姿だと。
そして、それには二つの側面があります。
一つは「大学」という存在が、一般にもっと「親しまれる存在」になろうとしている事。
有名大学のブランドバリューがあったとしても、その実態は世間一般に認知はされていない。漠たるイメージがあるだけ。それほど日本の大学は「閉じた世界」なのです。
米国の大学はもっと地域に密着して人々に愛されている。一般の人々が気軽に広い構内で寛ぎ、それこそ「ロゴグッズ」を買っていったりする。「明るく開かれた世界」なのです。
日本の大学が今後も一般の人々に「狭き門」の「実態の判らない存在」であったら、いつしか「有名大学のブランドバリュー」も色褪せていくでしょう。
有名大学は当面は人気が集中して「全入」などにはなりませんが、大学という存在が、もはや「選ぶのではなく、選ばれる存在」に変わったのは間違いありません。
「大学としての顔」を見せること。この事象はそのチャレンジの一つだと考えられます。

もう一つは、単に「有名大学を出た」ということが、社会に出てからの保障にならなくなった事と関連します。新卒でも「戦力」と期待される。それに対し大学は「実学志向」を強めていますが、しょせんは机上論に過ぎません。
「大学発のブランドをビジネスにする」。実学を目に見える形にする事は、世間へと企業のまたとないアピールになります。「この大学は、こんなチャレンジをして、実際にビジネスとして成果を挙げている」と。
それは志願者を集め、企業の採用担当者にもアピールでき、学生を送り込めるという好循環形成のための取り組みかと、金森は推察しました。

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2006.03.23

広島地方の方!

本日18:08頃から10分ぐらい、広島中国放送(RCC)ラジオに金森が出演します。
(また、電話取材ですが・・・)。

番組名は「道盛浩のバシャリキNOW」:ニューズバラエティー番組です。

お題は、以前日経プラス1でコメントをした、「大学発ブランド」をもう少し詳しく解説して欲しいということでした。

後日、コメント内容はまた、このBlogにアップいたしますが、放送が入るエリアの方、聞いてみてください。

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2006.03.16

セミナー情報

金森は以下のセミナーで講演を致します。

■富士ゼロックス:i am one. セミナー:3月24日13:30~
基調講演「顧客視点マーケティング」
 ・概要:http://iamone.jp/map/map_d2.pdf
 ・申し込み:http://iamone.jp/
※金森のセミナーを既にお聞きになった過去とがある方には重複部分がありますが、
  都度、ブラッシュアップしていますので、最新バージョンとしてお聞きいただけます。無料。

■日経ナレッジマネジメントフォーラム2006:4月11日13:00~
アドバンストセッション「最新版・企業変革の礎となる KM推進のセオリー」
 ・概要:http://www.nikkei.co.jp/events/km2006/
 ・詳細:http://www.nikkei.co.jp/events/km2006/
※金森のもう一つの得意分野であるナレッジマネジメント。
  昨年も同フォーラムで講演しましたが、今回は全くの新ネタです。ご興味のある方は是非。無料。

■コールセンター・マネージャーズ・サミット:4月11日14:45~

 ・概要:http://www.atmarkccm.com/forum/060411-12/index.html
 ・詳細:http://www.atmarkccm.com/forum/060411-12/progrum.html
※金森の原点であるコンタクトセンターものですが、結構高額で有料なのでちょっとお誘いしにくいですね。。

と、我ながら節操なく幅広なジャンルで後援を集中的に展開します。
ご興味のあるものがあれば、ぜひお越しください。


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2006.03.14

「夢や希望を忘れていないか?~新しく紡ぎ出されたきらめく言葉に触れて~」

日経BizPlusの連載が更新されました。

今回は3月3日に行なわれた、宣伝会議賞贈与式の模様を元にコラムを書いてみました。販促会議誌に連載を持っていることからご招待いただいたのですが、広告会社に10年7ヶ月も席を置いた者としては懐かしくも貴重な体験でした。
では、ご一読ください。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm

----------------<以下バックナンバー用転載>-----------------------

 昨年よりやや遅れたが、関東地方でも春一番が吹いた。寒の戻りがあった日には頬をなぶる風にまだ冷たさが残るが、それでも日差しにはどこか明るさが感じられる。「春寒(はるさむ)」「三寒四温」「一雨ごとの暖かさ」・・・この時期にはすぐそこまで来ている春を待つすてきな言葉がたくさんある。そんな季節に、筆者は春の訪れを告げるかのような、新たに紡ぎ出された「温かい言葉たち」に出会う機会を得た。

■ アイデンティティーのよりどころとしての広告

 先日、宣伝会議賞贈与式に出席した。宣伝会議賞は、広告とコミュニケーションの専門誌を発行している宣伝会議が主催している「若きコピーライターの登竜門」で、今回で43回を数える。今回の応募総数は20万件を超え、過去最高を記録したとのことだ。それを現役第一線で活躍するコピーライターが一次審査にかけ、さらに広告界の重鎮15人が最終選考を行う。グランプリを目指すファイナリストに残るのはわずか9人。通過率0.0045%の極めて狭き門なのだ。

 筆者は同社が発行する雑誌に連載を持っていることから来賓として贈与式に招待された。招待客にはファイナリストの作品がまとめられた冊子があらかじめ配布される。それを眺めていて、どの作品にも共通して新鮮な「夢や希望」「ユーモアや温かさ」がつづられていることに気づいた。

 「でも広告ってしょせん、商品を魅力的に見せるための衣装や化粧のようなものでしょ?」と言う向きには、ブランド論の大家、デビッド・A・アーカーの「ブランド・エクイティ戦略」や「ブランド優位の戦略」(いずれもダイヤモンド社)をお読みいただきたい。アーカーが「ブランドエクイティ」を定義する以前は、広告やブランドといったものは、商品をよく見せるための一時的な「取り繕い」と考えられていた。

 しかしアーカーは、その商品・ブランドの持つ“コア・アイデンティティー”の重要性に着目。コア・アイデンティティーを明確にしその価値を高めていくためのコミュニケーションのよりどころとして、広告活動を継続的に行うことを説いた。もはや三流の商品に金メッキを貼るような広告は通用しない。生活者もそれを見破るのだ。そして企業からのメッセージとして、生活者に直接届くコピーが、そのブランドの本質を的確に体現すべきなのは言うまでもない。

■夢や希望をたたえた言葉たち

 ファイナリストの作品の総評は、広告界の重鎮が述べられたので、今更筆者が論じるまでもないだろう。しかし、それらの共通点を言うのなら、一様に「明るさと希望」に満ちていることだ。世の中の負の部分をえぐり出し、ドキッとさせたり、不安をあおったりするネガティブアプローチも手法としては存在するし、効果的な場合も多い。例えばバブルの時代であれば、過熱した消費経済に一石を投じるようなネガティブな表現も、人の目を引き問題意識を目覚めさせるという効果があるだろう。

 しかし、長い不況のトンネルをやっと抜け、景気がよちよち歩きをはじめたばかりの今の人々の心理には、選出された作品がそうであったように、やはり暖かな春の息吹と清澄さが感じられるようなコピーが心に響く。コピーはその時代ごとに求められる姿を変えていくものなのだろう。

 加えて、作品の視座が徹底して「生活者視点」になっていることだ。商品を魅力的に見せようとすると、ともすれば「供給者側の視点」になってしまう。ファイナリストの作品は「自分ならどう使うだろう」「誰に何と言うだろう」「こんなことはあり得ないけど、あったら楽しいだろうな」といった具合に、あくまで生活者の目線から、自分や周囲の人々を対象に思いを届けようとして書かれている。マーケティングの一翼を担っているコピーライターも、昨今のマーケティングの主流である「顧客志向」をきちんと理解しているらしい。

 ちなみに、筆者が最もすてきだなと思ったコピーは、グランプリに輝いた、ペットフード会社のためのコピー「一度だけ話せるとしたら、なんて言いますか?」小安英輔氏の作品。次に気に入ったのは、準グランプリに選ばれた、お線香のためのコピー「生きている人には話せないことがあります。」塩野晃司氏の作品であった。

■自分自身の生き様のコピーを考えてみよう

 経済や社会問題など、とかく不安な出来事が多い現代。世の中の生活者は自分自身のことをどのようにとらえているのだろうか。自分の居場所が見つけられない引きこもり。働くということでの社会とのかかわりを築けないニート。様々な理由で自らの命を絶つ年間3万人以上の自殺者たち。彼らは、負の部分にばかり目を奪われ、周囲や時代に流されるまま生きているのではないか。

 そこで筆者からの提案だ。今回紹介したファイナリストたちのように、明るく前向きな気持ちで「自分自身のキャッチコピー」を考えてみよう。もちろん、前述のアーカーの論のごとく、適切なコピーを作るには「ブランドのコア・アイデンティティー」を定義しなければならない。それには「我は何者で、何のために存在し、何を行うべき者なのか」という深い思索が必要になる。

 力を持った言葉には魂が宿る。「言霊」である。「自分自身のキャッチコピー」が作れれば、それはいついかなる時にでも、自らを鼓舞する言葉となろう。

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2006.03.12

またまた「NIKKEIプラス1」にコメントを掲載していただきました!

3月11日の土曜の日経第二版「NIKKEIプラス1」の「はやりを読む」のコーナーにコメントを掲載していただけました。(日経をお読みで未読の方、捨てないで読んでみてください!)。
今回のお題は「大学発ブランド」。以下、記事冒頭と金森のコメント部分のみ転載。

大学発ブランドが花盛りだ。研究成果を酒や食品として発売したものばかりでなく、キャラクターグッズまで登場。学外の一般客にも購入が広がっている。少子化に危機感を抱き知名度向上を狙った動きで、大学の変質が見て取れる。
■大学大衆化の一端
「大学という場所が卒業生も巻き込んだ大人の学園祭の会場になったと言えるのでは」とみるのは、マーケティング事情に詳しい青山学院大学講師の金森努さん。
扱う商品は研究成果を踏まえたものなど、本格的なものも少なくない。金銭的に余裕のある世代は、高くてもいいモノを求める。本来の学園祭は焼きそば当たりが定番だが「卒業生や学外者も巻き込み、常時、多様な商品を扱う舞台になった」と分析する。
(以下略)

・・・しかし、残念なことに金森の愛する母校、東洋大学にはカレッジリングさえ売っていないのであった・・・。

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2006.03.08

【お知らせ】リンク切れなおしました

ご迷惑をおかけしておりましたが、バックナンバーのリンク切れを全て修正しました。
また、今後リンク先のURLが変更されても大丈夫なように、テキストを全てコピーしておきました。
ただし、リンク先の方がきれいにレイアウトされていたり、図表が見やすかったりということがありますので、できましたら、リンクの設定してある記事は本体サイトでご覧ください。

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【書下ろし】反則な駅ナカ販促

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エスカレーターの設置工事で警備員が「階段が狭くなっております。ご不便をおかけしますが、ご注意してご利用ください!」と声をからしている。確かに狭くなった階段は不便だが、もうすぐ便利なエスカレーターができるのであれば誰も文句はない。駅の機能強化は大歓迎だ。
一方そのすぐ側では「携帯スイカ」のキャンペーンブースが通路の四分の一を占め、駅ナカ獲得キャンペーンが展開されている。確かに駅とスイカの親和性を考えれば、ここで販促をしたくなる気持ちは分かる。改札口を出てすぐ側にヨドバシカメラもあるが、ヨドバシに足を踏み入れない層の取り込みも図りたいということなのであろうことも分かる。しかし、ここは「駅」だ。エスカレーターの設置で不便を被るのは構わないが、興味のない携帯のキャンペーンで通路を塞がれるのは困る。
以前、駅ナカビジネスの隆盛に「誰がために駅はある?」とコラムを書いたが、駅の交通・輸送機関としての本質を見失いでもらいたい。・・・と「駅ウオッチャー」でもある金森は思うのであった。

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2006.03.06

第12:「顧客に伝わる」ポジショニング

販促会議4号が発売されましたので、前号バックナンバーをアップします。
いよいよ最終回です。1年にわたるご愛読ありがとうございました。

また、来月あたりから、装いを新たに、続編ともいうべき新連載が始まりますので、
お楽しみにお待ちください。

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 当連載も一年間・12回まで今号と来月号を残すのみとなった。ここまで「顧客視点」の重要性を説きつつ、その視座でマーケティングの基本を見直し、筆者オリジナルの理論も加えて解説してきた。そして最後の2回は「今まで誰もが疑わなかった基礎・常識を見直し、さらに今日的な時代背景の中で新たな視点を見つけていく」という当連載の主旨の総まとめをしたい。マーケティングの基本戦略の集大成とも呼べる"STP"(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)の見直しである。

 当連載は今回で12回目、1年を迎えとりあえず一区切りとしたい。そして最後に前回マーケティングの基本戦略の"STP"(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)の中でも最重要と記した「ポジショニング」を取り上げる。ポジショニングは企業自らが「こうありたい」と定めることも重要であるが、それが顧客に伝わらなくては意味がない。そこにはやはり、「顧客視点」がなければ成立しないのだ。また、前号でも述べた通り、セグメンテーション、ターゲティングをいくら深く考えようとしても、自社のポジショニングを意識した上でなければ確定するためにはひどく体力のかかる作業になってしまう。その意味からも、今回述べるポジショニングは重要事項であるのだ。

■自動車メーカーに見るポジショニングの違い
 冒頭から引用となるが、企業のポジショニングの定義とその業績に反映された結果は、フィリップ・コトラーが著書に端的に表している。「コトラーのマーティング・コンセプト」(恩藏直人教授監修・東洋経済社刊)の「ポジショニング」の項を紐解くと、欧州の自動車メーカーのポジショニングが解説されている。ボルボが「最も安全な車」。BMWが「究極のドライビング・マシン」と。この二社はポジショニングが明確だからこそ、最終的な広告表現にしてもメッセージが明確だ。ボルボはダミー(衝突実験人形)をビジュアルによく登場させ、その安全性を繰り返し強調している。また、BMWの「究極のドライビング・マシン」は有名な「駆けぬける歓び」というコピーに表されている。どちらもポジショニングが顧客に伝わりやすく設定され、メッセージとして届けられるまでブレがないからである。一方、悪い例としてコトラーは米国のGM(ゼネラル・モーターズ)を挙げている。「GMの製品ラインアップが抱える弱点は、各社が明確なポジションを欠いたまま設計されているという点だ。製品の完成後に、大いに苦労しながらポジショニングを考えるというのがGMのやり方なのである」。と同書に明記されている。高級セダン、スポーツカー、ピックアップトラック等あらゆる車種を取りそろえ、さらにラインアップに隙間を見つけてそこを埋めるように開発・上市するようなやり方は、プロダクトアウト志向そのものである。先の欧州車との違いを考えれば、今日新聞紙上でも頻繁に目にするGMの危機的状況を招いた原因の一端が分かるだろう。これほどに、ポジショニングにおいて顧客視点の欠落は企業にとってクリティカルなダメージをもたらすのである。

■独自の世界観×顧客ベネフィット×競合優位性
 前述の通りポジショニングの設定においては、「顧客視点」を持って確実に顧客に伝わるということが重要である。では、具体的にはどのようにすれば実現するのであろうか。それは以下の三要素の掛け合わせで実現できると考えられる。
①独自の世界観の構築
 独自の世界観といっても、当然「独りよがり」で「斯くありたい」と思っただけでは顧客に認めてはもらえない。その裏付けたる事実(ファクト)が積み上がっていることが前提であることはいうまでもない。逆に言えば、ファクトを積み上げるということは、製品を設計する段階から、顧客に提供するその接点に至までの全てを予めデザインしておかなくてはならないことを意味する。そうでなくては「後付けのポジショニング」となり、設計・開発、販売企画、顧客との接点などの各段階で様々なスタッフが各々の考えや思いで自分の担当領域の仕事をしてしまい、結果としてちぐはぐで顧客に伝わらないポジショニングが設定されることになる。そうならないためには、予め自社の今まで積み上げてきた実績を元に、自社の核たる価値は何なのかをステートメント化(明文化)しておく必要がある。ステートメント化については2月号のブランドに関して用いたチャートやメソッドが流用できるだろう。再度確認して欲しい。そうしてファクトを基盤にステートメント化していけば、自社の核に基づいた独自の世界観を定義することができるだろう。
②顧客ベネフィット
 前項のように、ブランドのメソッドを流用して考えれば、当然、顧客に対してどのような価値を提供すべきなのかという「顧客ベネフィット」という要素も加味され、「独自の世界観」は定義されることになる。しかし、この顧客ベネフィットの定義が不完全であると、やはり「提供側の独りよがり」になってしまうため、再度検証することが必要だ。前項では自社の積み上げてきたファクトを基盤に考えたが、今度は完全に顧客の視点で、設定された世界観が「自分にとって何をもたらしてくれるのか?」という意識で見直してみよう。その際にそれが実際に自分の価値観と整合するようであれば大丈夫だ。ここでいう「自分」とは「ターゲット顧客」のことであり、STPのT、即ちターゲティングにおいてその範疇に入らない対象者の視点まで考慮する必要はない。あくまでブランドの項で「理想的とする顧客」を中心に、その予備軍レベルまでを想定して考えればよいだろう。ターゲット顧客層を広げてすぎて考えると、ポジショニング全体のブレの原因になるため注意が必要だ。また、顧客に提供するベネフィットも「機能的価値」と「情緒的な価値」があったことを思い出してみよう。例えば、その商品を用いることによって時間的な節約ができるというような「利便性の提供」と、もう一方で、その商品を所有しているということによる「心理的な満足感」など提供すべきベネフィットには幾つかの切り口がある。自社または、当該商品に一番適合する側面を見つけなければならない。
③競合優位性
 競合の存在しない、全くの新機軸の商品でもあれば、競合優位性など検討する必要もない。しかし、市場が成熟した今日、そのような商品の開発は困難であるし、前項の顧客ベネフィットを考えれば、異なる商品カテゴリーでも競合になり得る。極端な例を出せば、「スキーに行くために四輪駆動の車に買い換えたい」と思う顧客にとって、「スキーは年に何回も行くわけでもなく、行ったとしても渋滞もなく気軽で、酒も飲めるし、短時間で目的地に到着できる」というベネフィットを考えれば、新幹線という交通機関さえも競合となり得るのだ。
 では、競合を洗い出し、それとの比較優位性をどのように打ち出していけばよいかを考えるには「ポジショニングマップ」を描いてみることをお勧めする。(図参照)マップを描くには縦軸、横軸をどのように設定するかが一番のポイントとなる。何らかのリサーチを行い、その結果をデータマイニングやテキストマイニングのツールにかけると、回答から有意な差異を自動的に抽出し、マッピングできることもある。しかし、マーケターとしての経験値を上げたいのであれば、まずは額に汗を浮かべながら頭をひねって考えてみた方がよい。例示の図は筆記具についてのポジショニングマップである。縦軸に商品価格の高低を、横軸に機能性と装飾性を設定してみた。競合商品Aは商品価格が廉価商品よりやや高く、その分、機能性を高めている。プロ仕様の実用品といった位置づけができるだろう。競合製品Bは製品価格が高く装飾性も極めて高い。趣味人向けの高価な万年筆。筆記具としてだけでなく、それを所有していること自体に歓びを見いださせるような商品という位置づけだ。それに対して、自社商品は価格は最高レベルに近いが、装飾性はさほど高くない。つまり、日々使いながら、その機能性の高さ、使い心地で愛着を持たせるというポジションを取ったわけだ。このようにポジショニングマップを作ると比較対象がしやすく、そこから顧客に実際にどのようなメッセージを発すればいいのかも考えやすくなることが分かるだろう。ただし、マップを一つ作って安心していてはいけない。前述の通り、ベネフィット、つまり、縦横の軸の定義を変えてみれば、全く違ったポジションにもなるし、思いもしなかったような商品が競合として浮かび上がってくることもあるからだ。実際にはこのようなマップを幾つも書いて検証するという努力が必要となるのだ。

 以上で、ポジショニングについて述べ、また、「顧客視点の持ち方」についても12回の連載の中で一通り伝えてきたつもりである。「顧客視点」も世の中の流れの中で日々移り変わっていくため、「これが絶対正しい」という見方は存在しない。しかし、最も重要なのは「自分はマーケターである以前に、一人の生活者なのだ」ということを忘れずに、その視座でものごとを考えたり、再検討したりする習慣を付けておくことであると最後に強調したい。

NO12

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2006.03.01

アンドーナツなモザイクCity~東京の近々未来を占う~

日経BizPlusの連載が更新されました。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm

2月20日にこのBlogに書き下ろしたものを、もう少し深掘りしてきちんとしたコラムに仕立て直してみました。
ご一読ください。

----------------<以下バックナンバー用転載>-----------------------

最近、東京という街が面白くなってきた。今まで見たこともなかったような巨大タワーマンションが何もなかった場所にこつぜんと姿を現し、新しい街ができる。最近オープンした表参道ヒルズに代表される個性的な商業施設も、さらに登場する予定だ。今回は「街」としての東京に注目し、その今後の姿を予想してみたい。


■東京は再びドーナツ化するのか?

 「企業の遊休地放出が一段落したこともあり、首都圏でのマンション開発は用地確保が難しくなっている。このため、地価の安い郊外での開発競争が加速するとみられ、一部では都市部のドーナツ現象を懸念する声もあがっている」という旨の記事が、2月15日付の日本経済新聞に掲載されていた。しかし、この見解に関して筆者の頭には疑問符が点灯している。都内に続々と開発されているタワー型大型物件は完工していないものも多く、商業施設は未整備であり、肝心の住人達もまだ転居してきていない。現時点でドーナツ化を論じるのは時期尚早ではないだろうか。

 「ドーナツ化」とは、都市の中心部から住人や店舗が郊外に移動してしまい、空洞化することを意味する。とすれば、東京はさしずめ「まだアンコが充てんされていないアンドーナツ」のようなもので、街としての面白さや賑わいが訪れるのはこれからだ。

 例えば、三井不動産が手がけている芝浦と豊洲の物件は、いずれも官民一体プロジェクトであり、芝浦の遊休地や石川島播磨重工業の造船所跡といった広大な敷地に巨大な街が出現する。街は完成に向けて着々とつくられているのだ。アンコがたっぷり詰まったとき、東京の表情はまた変わるに違いない。


■「最新の街」から「個性ある街」へ

 「表参道ヒルズ」オープン初日、表参道で打ち合わせがあり、これ幸いと寄ってみたが、周囲には人・人・人・・・。入るための行列もできており断念。翌々日、別件で六本木ヒルズに行った。金曜の夜だというのに普段より明らかに人が少ない。推測でしかないが、表参道ヒルズに人が取られているのではないだろうか。

 また、別の日にお台場に行ったのだが、何やら以前に比べて十代~二十代前半の若者とファミリーばかりが目立つような気がした。以前はここまでカジュアルではなく、もう少しオトナも多かったように思う。

 考えてみれば、都内の商業施設の開発は今後も目白押し。来年には東京ミッドタウンプロジェクトと呼ばれる防衛庁跡地の再開発が完了。続いて赤坂TBS再開発、新丸ビルの完成なども待ちかまえている。「街同士の集客合戦」が今後激しさを増すのは必至だ。

表参道ヒルズと六本木ヒルズを冷静に比べてみれば、表参道はどちらかというとマニアックな店やまだまだ知名度の低い店もあり、ターゲットもより「大人」に絞られているように思える。六本木ヒルズは規模も大きくターゲットも比較的広汎で、文化施設から飲食、販売店舗まであらゆる設備をそろえている。一時のブームが過ぎればおのずと客層は分かれてこよう。表参道と六本木はあらかじめ街のポジショニングがはっきりできているのだろう。お台場にしても、こうした「街間競争」を生き抜くため、若者とファミリーにターゲットを絞り、自らのポジショニングを変化させていった結果が現在の姿なのだ。

 本来、街に賞味期限はない。「最新」ということだけで人を集められるのはほんの一時にすぎない。「街間競争」を生き抜くには、どの街も他にない特徴を出していくことが必要だ。それぞれの街が特徴を持ってすみ分け、共存共栄することができれば、東京という都市は様々な表情を持ったいくつもの街を抱える、モザイクのような魅力を増すことになるだろう。


■陰の部分に目を向けると・・・

 もっとも、こうした華やかさの裏側に潜む陰の部分に目を向けると、手放しで喜んでばかりもいられない。

 第一の不安の種は、「オフィスの供給過剰における2007年問題」だ。単に物理的に2007年に大型オフィスビルの完工のタイミングが重なり、古いオフィスビルがテナントからの賃料下げ要求などに苦しむだけではない。同じタイミングで「団塊世代の大量定年による2007年問題」も重なる。働く人の数が減る。スリムになった企業は床面積が少なくて済むため、賃料が同じならと新しいビルに移転していく。賃料下げでは対応できず、大量の空室がでるかもしれない。古い空室ばかりのオフィス街がスラム化することも想像できる。

 第二の不安の種は、商業施設と共に建てられる超高層マンションはいずれも販売価格が高額なことだ。高額所得者世帯や、管理の良さとセキュリティーの高さに惹かれ一戸建てを処分した高齢世帯が入居すると考えられる。後に残される中古のマンションや戸建て住宅。価格の安さを求めてそれらの中古住宅を購入する人々によって、住居の場合、空室化は避けられるであろう。しかし、その結果、地域による収入格差ははっきり区分けできるようになる。低所得層が多い地域は税収が減り、住民サービスも低下するだろう。所得の低さと犯罪発生率が完全に正比例する証拠はないが、治安の悪化も懸念される。

 階層二極化とその固定化が問題視されている折も折。東京という都市が描く色とりどりのモザイク模様が、階層分化を端的に映すものになってしまっては困る。続々と登場する新しい街にはワクワクさせられるが、その陰の部分にも目をやりケアする方法を官民一体となって考えていく必要があるのではないだろうか。

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