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2006.03.01

アンドーナツなモザイクCity~東京の近々未来を占う~

日経BizPlusの連載が更新されました。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm

2月20日にこのBlogに書き下ろしたものを、もう少し深掘りしてきちんとしたコラムに仕立て直してみました。
ご一読ください。

----------------<以下バックナンバー用転載>-----------------------

最近、東京という街が面白くなってきた。今まで見たこともなかったような巨大タワーマンションが何もなかった場所にこつぜんと姿を現し、新しい街ができる。最近オープンした表参道ヒルズに代表される個性的な商業施設も、さらに登場する予定だ。今回は「街」としての東京に注目し、その今後の姿を予想してみたい。


■東京は再びドーナツ化するのか?

 「企業の遊休地放出が一段落したこともあり、首都圏でのマンション開発は用地確保が難しくなっている。このため、地価の安い郊外での開発競争が加速するとみられ、一部では都市部のドーナツ現象を懸念する声もあがっている」という旨の記事が、2月15日付の日本経済新聞に掲載されていた。しかし、この見解に関して筆者の頭には疑問符が点灯している。都内に続々と開発されているタワー型大型物件は完工していないものも多く、商業施設は未整備であり、肝心の住人達もまだ転居してきていない。現時点でドーナツ化を論じるのは時期尚早ではないだろうか。

 「ドーナツ化」とは、都市の中心部から住人や店舗が郊外に移動してしまい、空洞化することを意味する。とすれば、東京はさしずめ「まだアンコが充てんされていないアンドーナツ」のようなもので、街としての面白さや賑わいが訪れるのはこれからだ。

 例えば、三井不動産が手がけている芝浦と豊洲の物件は、いずれも官民一体プロジェクトであり、芝浦の遊休地や石川島播磨重工業の造船所跡といった広大な敷地に巨大な街が出現する。街は完成に向けて着々とつくられているのだ。アンコがたっぷり詰まったとき、東京の表情はまた変わるに違いない。


■「最新の街」から「個性ある街」へ

 「表参道ヒルズ」オープン初日、表参道で打ち合わせがあり、これ幸いと寄ってみたが、周囲には人・人・人・・・。入るための行列もできており断念。翌々日、別件で六本木ヒルズに行った。金曜の夜だというのに普段より明らかに人が少ない。推測でしかないが、表参道ヒルズに人が取られているのではないだろうか。

 また、別の日にお台場に行ったのだが、何やら以前に比べて十代~二十代前半の若者とファミリーばかりが目立つような気がした。以前はここまでカジュアルではなく、もう少しオトナも多かったように思う。

 考えてみれば、都内の商業施設の開発は今後も目白押し。来年には東京ミッドタウンプロジェクトと呼ばれる防衛庁跡地の再開発が完了。続いて赤坂TBS再開発、新丸ビルの完成なども待ちかまえている。「街同士の集客合戦」が今後激しさを増すのは必至だ。

表参道ヒルズと六本木ヒルズを冷静に比べてみれば、表参道はどちらかというとマニアックな店やまだまだ知名度の低い店もあり、ターゲットもより「大人」に絞られているように思える。六本木ヒルズは規模も大きくターゲットも比較的広汎で、文化施設から飲食、販売店舗まであらゆる設備をそろえている。一時のブームが過ぎればおのずと客層は分かれてこよう。表参道と六本木はあらかじめ街のポジショニングがはっきりできているのだろう。お台場にしても、こうした「街間競争」を生き抜くため、若者とファミリーにターゲットを絞り、自らのポジショニングを変化させていった結果が現在の姿なのだ。

 本来、街に賞味期限はない。「最新」ということだけで人を集められるのはほんの一時にすぎない。「街間競争」を生き抜くには、どの街も他にない特徴を出していくことが必要だ。それぞれの街が特徴を持ってすみ分け、共存共栄することができれば、東京という都市は様々な表情を持ったいくつもの街を抱える、モザイクのような魅力を増すことになるだろう。


■陰の部分に目を向けると・・・

 もっとも、こうした華やかさの裏側に潜む陰の部分に目を向けると、手放しで喜んでばかりもいられない。

 第一の不安の種は、「オフィスの供給過剰における2007年問題」だ。単に物理的に2007年に大型オフィスビルの完工のタイミングが重なり、古いオフィスビルがテナントからの賃料下げ要求などに苦しむだけではない。同じタイミングで「団塊世代の大量定年による2007年問題」も重なる。働く人の数が減る。スリムになった企業は床面積が少なくて済むため、賃料が同じならと新しいビルに移転していく。賃料下げでは対応できず、大量の空室がでるかもしれない。古い空室ばかりのオフィス街がスラム化することも想像できる。

 第二の不安の種は、商業施設と共に建てられる超高層マンションはいずれも販売価格が高額なことだ。高額所得者世帯や、管理の良さとセキュリティーの高さに惹かれ一戸建てを処分した高齢世帯が入居すると考えられる。後に残される中古のマンションや戸建て住宅。価格の安さを求めてそれらの中古住宅を購入する人々によって、住居の場合、空室化は避けられるであろう。しかし、その結果、地域による収入格差ははっきり区分けできるようになる。低所得層が多い地域は税収が減り、住民サービスも低下するだろう。所得の低さと犯罪発生率が完全に正比例する証拠はないが、治安の悪化も懸念される。

 階層二極化とその固定化が問題視されている折も折。東京という都市が描く色とりどりのモザイク模様が、階層分化を端的に映すものになってしまっては困る。続々と登場する新しい街にはワクワクさせられるが、その陰の部分にも目をやりケアする方法を官民一体となって考えていく必要があるのではないだろうか。

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