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2005.12.13

「誰がために駅はある?~駅ナカビジネスの隆盛に一言~」

NIKKEI NET BizPlusの連載・ニッポン万華鏡(カレイドスコープ) 第11回がアップされました。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm?i=20060112c6001c6

以前、皆様にご意見を募集した「駅ナカ・ビジネス」についてです。
いつものごとく(?)、コメントではなくメールにて幾つかご意見をお寄せいただきました。
ご協力いただきました皆様、ありがとうございます。
参考にさせていただきました。

ただ、「西船橋」・・・。ローカルすぎましたね。千葉方面の方が京葉線を使わずに、東京ディズニーリゾートに行くときに乗り換えることなどもあるかと思いますが・・・。
さて、金森の筆致でどこまで駅の状況を想像していただけるか。

-----------<以下バックナンバー用転載>-----------

■駅ナカビジネスの集大成オープン?

 「駅ナカビジネス」は2003年の日経ヒット商品番付で「東の関脇」にランクインして以来、ここ数年隆盛を誇っている。そしてその集大成ともいうべき「エキュート品川」が10月にオープンした。エキュートの名を冠した駅ナカショップは3月オープンの大宮に続いて2店舗目。大宮の店舗面積2300平方メートル・店舗数56店舗に対して、1600平方メートル46店舗と若干小さいが、品川駅駅舎の開放感あふれる構造と相まってなかなかよい雰囲気だ。大宮のストアコンセプトが「マーケット・アベニュー」であるのに対して、品川は「プレミアム・プライベート」。確かに高級感を感じさせる店舗設計とショップのラインナップは一見の価値がある。日本初上陸の店や著名人とのタイアップ店など確かにプレミアム感はある。だが、2500円ものコース料理などはさすがに手が出ず、プレミアム感が先行しすぎている気もする。かつてのホームの立ち食いそばが懐かしく思えてさえくるが、女性層には非常に好評なようだ。

■JR東日本戦略転換の背景とは

 「駅ナカビジネス」の起こりは10年近く前に、阪急電鉄がホームで直営コンビニエンスストアを出店たことから始まったといわれている。関西・私鉄発のビジネスモデルをJRが猛追した格好だ。前述の「エキュート」はJR東日本の100%子会社であるJR東日本ステーションリテイリングによって運営されているが、それまでJRは駅ナカではなく、「シアル横浜」「テルミナ錦糸町」「ルミネ北千住」など改札外の駅ビル開発が中心だった。それが「改札内こそ宝の山」と気づき、一気に駅ナカへと舵を切ったわけだ。エキュートオープン時に、JR東日本ステーションリテイリングの鎌田由美子社長(当時・東日本旅客鉄道事業創造本部資産活用部門課長)は次のようにコメントしている。「街中からの集客は考えていないので、通勤で電車を使わないがエキュートに来店したい方には、入場券を買っていただく」と。その潔いまでの割り切りは「駅ビルから駅ナカ」への転換を如実に物語っていると考えてよいだろう。

■なぜか主張と裏腹な西船橋の駅ナカ

 「街中から集客せず」という主張はある意味非常に好感が持てる。"駅ナカショップ利用のための無料入場券"などを発行しようものなら、駅舎内が混雑して仕方がないだろう。駅はやはり「鉄道利用客」のためのものだからだ。

 しかし、3月にオープンした「ディラ西船橋」(運営はJR東日本ステーションリテイリングではない)などは「駅は誰のためのものなのか」と問いたくなるような設計になっている。千葉県船橋市にある西船橋駅など縁のない読者も多いであろうから、その駅について少々解説する。年間乗降客数49,240,053人(平成15年度)、JR総武線各駅停車・京葉線・武蔵野線、営団東西線、東葉高速鉄道の5路線が乗り入れているターミナル駅だ。また行き先も様々な5路線が乗り入れているため、駅舎の構造もかなり複雑なのが特徴である。そんな駅にできたのが「ディラ西船橋」だ。

 確かにこの駅周辺には大した商業施設もなく、駅周辺人口も非常に多いわけではない。その意味からすると、「街中からの集客」は考えていないのだろう。ターゲットは明らかに多数の乗り換え客である。しかし、その乗り換えが問題なのだ。品川駅などと異なり、駅舎の構造が複雑であり、かつ余り広くはない。そこに18もの店舗を詰め込んでいる(改札外にも3店舗)。きちんとした導線設計などは行ったのであろうが、買い物に興味のない利用客からすれば以前より動きづらくなったような気がしてならない。

 さらに、問題なのは案内板などサインが整備されていないことだ。店舗自体やその看板などが、ホームの行き先表示や乗り換え案内より目立ってしまっている。毎日この駅を利用している乗客ならいざ知らず、たまに利用する乗客などは明らかに混乱してしまう。

■誰がために駅はある?

 駅はやはり「鉄道利用客」のためのものだ。買い物客のものではない。また、全ての鉄道利用客=買い物客になるわけではない。「エキュート」は大宮、品川とオープンし、今後立川にもオープンするそうであるが、その3駅はいずれも大型駅だ。駅ナカは成立するであろう。しかし、前述の西船橋のような複雑で狭小な駅舎はやはり従来型の駅ビル開発の方が向いているのではないか。もしくは紀伊国屋も出店することで話題になっている、東京メトロ表参道駅の開発のように、駅構内ではあるが4~5店舗のみ改札内で、あとは全て改札外というスタイルもあるだろう。

 「エキュート大宮」のオープン時に鎌田社長は「従来は(駅の)コンコースには照明や床など駅として必要な機能があり、店舗は店舗で各自のデザインをしている。エキュート大宮では全体の環境コンセプトの中でトータルコーディネートしている」と述べている。確かに全体最適化がなされなければ、西船橋のような事象が起こってしまうのは明らかだ。

 ディラ西船橋は1月15日から順次ショップが開いていき、3月にフルオープンを迎えた。ということは、1月オープンの時点では3月オープンのエキュート大宮のコンセプトなどは既に固まっていただろう。もしそうであれば、なぜ、鎌田社長の語った本質を西船橋にも取り入れられなかったのだろうか。成功しそうなモデルの表面的な部分だけを見て「これならどこでもできるだろう」と展開したのではないだろうか。今後もJRの駅ナカのリニューアルオープンは目白押しだ。不安がよぎる。

 「本質的な価値」を理解しないまま後続が多数展開すれば、オリジナルのコンセプトはかき消され、同様にネガティブな評価を受けることになる。そして、その市場全体が地盤沈下する。これは駅ナカビジネスだけのことではない。ニュービジネスにおいてはよくある例だと言えよう。今後の駅ナカビジネスの向かう先はまだ見えないが、少なくとも今回取り上げた「エキュート」と「ディラ」の対比は他山の石とすべき事例であろう。


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