NIKKEI NET BizPlusの連載・ニッポン万華鏡(カレイドスコープ) 第12回がアップされました。
BizPlusは今年最後の更新です。
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm?i=20060112c6000c6
内容としては、年末にあまり重い話しも何なので、オムニバススタイルで街角の風景を切り取り、
軽く今年を振り返ってみました。
「タウンウオッチャー金森」の得意とするところです。
3つ目のエピソードはお気づきと思いますが、12月12日にアップした書下ろし”「うつむきがち」でなくなった街の人々?”が本人としては結構気に入っているので、文体を整えて再度取り上げてみました。
1つめの「ウォームビズ」は「何なんだよー」という、偽らざる心情です。日経連載第2回で「クールビズは流行らないし、私はその仕掛けられた流行に乗らない!」と宣言し、おかげで暑い夏を過ごし、第7回で敗北宣言をし、同時に「ウォームビズには乗る!」と記しました。しかし一向に流行りません。空調の設計がおかしいですね。日本のオフィスビルは。「上手な重ね着のファッション」は結構おしゃれだと思うのですが、暑苦しい冬のオフィス空間がそれを許しません。なにかがおかしい・・・。
2つめの「階層二極化」は、三浦展氏の「下流社会」で一躍脚光を浴びましたが、私も以前から注目していました。今回は軽い”さわり”ですが、三浦氏の理論をさらに拡張して、近々きちんと書いてみたいと思います。来年のテーマですね。
それにしても、今年も色々なことがありました。
・・・個人的には15年間のサラリーマン生活に別れを告げて、一念発起、起業したことが最大のできごとでしたが・・・。
また、青学の講師にもなり、初の「学部生」相手の講義を行担当したのも新鮮でした。(来年もやらせていただくことになっています。)
さらに共著ですが「思考停止企業」(お勧め書籍欄に掲出)という書籍も発刊しました。
来年は単著で何か出してみたいと思っています。
と、まあ、来年の抱負まで語ってしまいましたが、本年は起業に際し色々な方にお世話になりました。ありがとうございます。また、このBlogをお読みいただいている方にも厚く御礼申し上げます。
来年もよろしくお願いいたします。
-----------<以下バックナンバー用転載>-----------
いよいよ年の瀬も押し詰まってきた。年末の所用に急ぐ人々や正月の準備で街はあわただしさを増している。そんな年末の街の表情を幾つか切り取って、2005年を少し振り返ってみたい。
■空振りに終わるか?「ウォームビズ」
筆者は本欄の第2回に「クールビズは流行らない!」と宣言。しかし予想外の普及・定着を突きつけられて、第7回で事実上の「敗北宣言」をした。その時には既に、CO2削減のための冬の着こなしコンセプト「ウォームビズ」が打ち出されていた。筆者は冬になると、ツィードのジャケットにオッドベスト(柄違いのベスト)という、ウォームビズのお手本のようなスタイルを10年以上前から愛用している。しかし、同じようなスタイルの人があまり見あたらない。
クールビズの時は暑さが増すごとに、男たちの襟元からネクタイが消えていった。しかし、12月に入ってから急激に冷え込んだにいもかかわらず、人々のスタイルは例年と何ら変わりがないように見える。
確かに変に厚着をすると朝の満員列車では大汗をかく。また、集中制御空調システムのオフィスビルでは、環境省が提唱した「適切な室温設定(20℃程度)」に設定すると建物の気密性の高さとパソコンなどOA機器の放熱などで、何もしなくとも20℃を超えてしまい、冷房が働いてしまうとも聞く。事実、筆者自身、以前から着用していたのとは別にニットのベストを新規購入したが、着用していると背中に汗が流れることが多い。そのような現状を見ると「ウォームビズ」はコンセプト倒れに終わるのではないかと考えてしまう。
そもそも問題点が二つある。一つは前述のオフィスビルの機能・特性などを把握していなかったという事前のリサーチ不足。二つめが「そもそも人々にニーズがなかった」ということだろう。一つめのリサーチ不足も少々お粗末で済むが、二つめの「ニーズ不在」の方が重大な過ちだ。クールビズの時には、「寒い地方を起源とするネクタイを、日本の夏に着用するという無理な慣習から解放されたい」という潜在的な男たちのニーズがあった。それにマッチしたからこそ見事に普及したのだ。
しかし、満員列車で毎朝汗をかいている人々には、これ以上の厚着をするというニーズがそもそもなかったのだ。なぜ、環境省はそこに気がつかなかったのだろうか。例えて言うなら「こんなすごいものを作ってしまった! 絶対に売れる!」と意気込んだものの、さんざんな結果に終わったプロダクトアウト志向のメーカーのようだ。
冬が終わるまで結論を出すには早すぎるかもしれない。しかし、ウォームビズの掛け声にもかかわらず、街ゆく人々の姿が変わっていないのは事実だ。
■階層二極化の足音か?「自動車販売の明暗」
12月17日の日本経済新聞朝刊1面に「トヨタ3年ぶり減益・"軽"との競合激しく」との記事が掲載されていた。「トヨタの苦戦は、より低廉な車種に需要がシフトする国内市場の構造変化を象徴している」と分析されている。一方でトヨタの高級車ブランド「レクサス」は比較的滑り出し好調であるし、輸入車勢も善戦している。低廉車と高級車の二極分化。確かにそうした目で見ると、街ゆくピカピカの新車とおぼしき車はそのどちらかのようだ。
筆者は米国で似たような光景を目にしている。カリフォルニアで流通業の視察をした際、流行のオーガニック系高級食材店の駐車場には欧州車や米国高級車がずらり。一方、低価格スーパーのウォールマートの前にはボロボロの日本車や低価格な米国車が列をなしていた。しばしば車はその所有者の収入を推察する材料とされるが、まさに収入格差を目の当たりにした気がした。それと同じような姿に日本もなるのだろうか。
三浦展氏の「下流社会」がベストセラーとなり、階層二極化時代はすぐそこまできていると様々なメディアでも報じられている。そしてその実態は街を走る車の姿からも見て取れるように思える。
■街行く人々はうつむきがちでなくなった?
土曜日夕暮れ、銀座の街に出かけた時に気づいたエピソードをひとつ。街の人々にちょっとした変化を感じた。いつもはうつむきがちに街を歩く人々の背中がまっすぐ伸びていたり、顔が上を見上げたり・・・。
その理由はクリスマス前の街の飾りつけだった。いつもは携帯画電話のメールなどをのぞき込みながら歩く人が多いのに、この日はクリスマス・イルミネーションに飾られた街の風景を撮影している人が多かった。その結果、被写体を探そうと視線を正面、もしくはやや上方に向けるなど人々の姿勢が違っていたのだ。色とりどりのイルミネーションの効果だけでなく、街ゆく人の姿勢が違うだけでも随分街が明るく見えるものだと実感した。
もう一つ気付いたのは、相変わらず片腕を突き出す独特のスタイルで携帯のカメラを使っている人もいるが、デジタルカメラで撮影している人が増えたことだ。ただ、どこかぎこちない操作を見ると「冬のボーナスで買ったな」と推測できるような人もいた。各メディアが報じる「消費にもやっと明るさが見えてきた」風景は、こんな所で実感できた。
デジタルカメラはここへ来て、売り上げの伸びが低迷している。しかし、価格がさらに下がり、手ぶれ防止やズームなどの機能が一層充実したことで「後期多数採用者層」という腰の重い人々がようやく動き出したのだろう。クリスマスや年始など、撮影機会が多いこの時期、市場のボリュームゾーンが動き出したということは、今年の年末商戦ではデジタルカメラが善戦するかもしれない。
年末の回顧番組で、世の中の暗い面ばかりを見て悲観していてもしかたがない。たまには街に出て、街と人々を自分の目で観察し、自分なりのニュースを見つけて、それに自分なりの解釈を付け加えることをお勧めしたい。意外と明るい人々の暮らしを発見できたり、これからの世の中の方向性を自分なりに納得できたりすると思う。