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2005.10.04

「『イノベーション普及速度』で読み解くクールビズの成功」」

NIKKEI NET BizPlusの連載・ニッポン万華鏡(カレイドスコープ) 第7回がアップされました。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm?i=2005111607onec6

いやー、第2回で「社会通念の溝に阻まれて、クールビズを採用する者は”初期少数採用者(アーリーアダプター)”止まりで16%程度だろう」と大胆に予想しましたが、大外ししましたねー。
みんな涼しそうにネクタイ外してました。
「クールビズはクール(かっこいい)じゃない!」とまで言い切った私だけが暑い夏を過ごしました。

日経のデスクがカッコイイタイトルに直してくれたようですが、元々は「クールビズ顛末記」でした。

さて、冬の「ウォームビズ」はどうなりますやら。

-----------<以下バックナンバー用転載>-----------

 連載第2回にて「Cool!じゃない?クールビズ」と題し、「クールビズのスタイルはいかがなものか?」と問いかけた。反響としては意外なほど「やはり男はネクタイ!」と肯定的な意見が多かった。ジェフリー・ムーアの「キャズム(溝)理論」を引っ張り出して、「社会通念がキャズム(溝)となって、クールビズは初期少数採用者以上には普及しない」と予測したが、反響はそれを裏付けてくれるようで内心ニヤリとしたものであった。

 が、しかし、予想に反してクールビズは結構な勢いで普及してしまった。「百貨店・2年ぶりの売り上げ増」とか「景気浮揚にも一役」などと各メディアにも持ち上げられ、街にはノーネクタイ族があふれてしまったのだ。「いかがなものか?」と一石を投じてしまった筆者だけが28度の室温設定の中、汗を流し続けた今年の夏であった。9月に入り残暑も一段落しつつある今日この頃、その予想が外れたわけを振り返ってみたい。

■ハイテク世界と人間の生理的欲求は違っていたか・・・

 E・Mロジャースによれば、「初期少数採用者」は別名「尊敬される人々」とも呼ばれ、この層が反応し出すと、次の「前期多数採用者」というボリュームゾーンに伝播すると説いている。それに対し、ジェフリー・ムーアの「キャズム(溝)理論」はその二つの層の間にはとりわけ大きな溝があり、簡単に伝播するものではないと反論した。

 ただし、ムーアの理論は特にハイテク産業の世界を中心に述べており、それを「やっぱり暑いのは嫌だ!」と思う人間の生理的欲求に対して適応しようとしたのが大きな敗因であったようだ。

kanamori0705

■見落としていたE・Mロジャースの「イノベーション普及速度」

 それだけではない、もう一つ筆者が見落としていた、「イノベーション普及速度」というものがあった。それは革新的なもの(イノベーション)が受け入れられるための条件をロジャースが説いたものであるが、その条件の数々が今回のクールビズには面白いように適合していたのだ。以下、それを検証してみよう。

(1)相対優位性…今まで使っていたものと比べ、その新しいものが、いかに優れているかが分かりやすいこと。これは人によっては「カッコ悪い」と思ったり、「ビジネスシーンではやはり人の目が気になる」という考えもあろうが、「涼しい!」という明確な優位性には勝てなかったようだ。

(2)両立性…当面は今まで使っていたものを捨てることなく、両立できること。やはり人間は誰しも今までなれていたものをスッパリと捨て去ることには抵抗感を覚える。しかし、クールビズは「ネクタイ禁止」ではないので、必要に応じてネクタイを脱着すればよいのだから問題はない。「スーツを"省エネ・ルック""省エネスーツ"に切り替えよう」とした、かつてのお仕着せ官製ファッションの失敗は活かされていたのだ。恐るべし環境省。

(3)複雑性…理解できないほどの複雑性を持っていないことと、逆に当たり前に見えすぎない程度に複雑であるというバランス。クールビズ用のシャツを新調してみたり、ネクタイを外したときの襟元の開き具合を気にしてみたりと、程度の差こそあれ、聞いてみると実践者たちはそれなりに気を遣っていたようだ。それが適度にこの複雑性をもたらしていたのではないだろうか。

(4)試行可能性…とりあえず、本格的な導入の前に自ら触って効果を認識できること。一番簡単なのはまずはネクタイを外してみるだけでいい。これほど簡単なことはない。また、一夏分のシャツをまるまるノーネクタイ用のボタンダウンなどに一気に買い替えるのではなく、とりあえず1枚を新調してみるぐらいであれば、さほど経済的な負担にもならないだろう。簡単に試行できたわけだ。

(5)観察可能性…目に見えない効果ではなく、明らかに効率が上がるもしくは質が向上するなどの効果が観察・実感できること。確かに襟元の空いている同僚の姿は涼しそうだし、やってみれば事実涼しい。観察だけではなく簡単に実感できてしまう。この条件も担保されていたのだ。

■クールビズは「前期大量採用者(アーリーマジョリティー)」止まり?

 上記のように一つ一つ検証していくと、「クールビズ」の普及は必然のように感じられる。しかし、普及学におけるいわゆる「普及曲線」でいえば、「革新的採用者(イノベーター)」次の「初期少数採用者(アーリーアダプター)」、その次の「前期大量採用者(アーリーマジョリティー)」の3つの層を合わせると50%である。おそらく街中の男たちの姿を見てみると、まあ、40~50%止まりではないだろうか。つまり34%の「前期大量採用者」への伝播を見誤ったので誤差としては大きかったが、それ以降の層には拡大しないだろうと筆者は考えている。来年の現実はどうだろうか。

 しかし、小池百合子環境相が8月22日に早くも打ち出されてきた秋冬・ビジネススタイルのコンセプト「ウォームビズ」の方に筆者の関心は移っている。「ワーム(worm)」と聞き間違え、さてはイモ虫のように着ぶくれさせて、「オフィスの暖房を全部切ってしまいましょう」などという乱暴な話しかと思ったが、早とちりであった。「重ね着で暖かく(warm)」ということならファッション的にもかなり幅が出るだろう。大いに賛同できるので、今度は勝ち馬に乗れそうだ。


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