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3 posts from September 2005

2005.09.13

「もう一つの2007年問題:引退できない経営者たち」

NIKKEI NET BizPlusの連載・ニッポン万華鏡(カレイドスコープ) 第6回がアップされました。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/kanamori.cfm?i=2005111606onec6

現在私はオーナー企業の二代目の方々とお付き合いが結構あります。
もちろん、私がお付き合いさせていただいているのは、本文記事中にあるような困った状況にある企業様ではなく、順調に二代目オーナーへの道を歩まれていますが、世の中にはなかなか「引退の決断の付かない創業者」、「自分の路線で突き進めない二代目」というご苦労をなさっているケースも数多く散見します。

実は、私がパートナーとして参画している「青学コンサルティンググループ株式会社」では、そのような企業様に対して「二代目移行プロジェクト」をコンサルティングメニューとして持っております。

マーケティング的側面、財務面、等様々な切り口からコンサルティングを展開いたしますので、お困りの際は是非お問い合わせください。
・・・と今回はかなり営業モードでお伝えしました。済みません。

-----------<以下バックナンバー用転載>-----------

 一般に言われている「2007年問題」は「2007年に団塊世代が定年退職のピークを迎える。彼らが蓄えてきたナレッジやノウハウをどうやって企業と後継者に残すのか」ということだ。これは日本のすべての産業で共通の問題となっている。しかし企業の多くが「5年間の定年延長」や「嘱託で5年間程度再雇用」など、「問題を2012年に先送り」しているのが現実だ。

時代についていけない経営者たちはどうすべきか

 今回紹介する「もう一つの2007年問題」は少し趣きが異なる。「引退する」あるいは「引退したい」のは経営者自身なのだ。こうした傾向は、中小から中堅企業、特に流通系オーナー企業に顕著だ。彼らは団塊の世代よりも十数歳上。高度成長期に企業を立ち上げ、拡大路線をひた走ってきた。ふと気づくと70歳を超えている。かつては「生涯現役」と宣言していたものの、昨今の市場や生活者の消費行動の変化に行けなくなっていることに気づく。

 そこで頼りにしたいのは、団塊ジュニアよりも十数歳上、40代前半~中盤の二代目である。社外で修行に励んできた人もいるし、父親である経営者の下でずっと働いていた人もいる。初代経営者としては、彼らの「若い経営感覚」に委ね、引退したいところだ。しかし、経営を禅譲する決心がなかなかつかないのだ。

思い切って古参役員もろとも退任の決断も

 外で修行してきた二代目は、外の流儀を持ち込もうとする。しかし、初代は自分の「勘と経験と度胸」で企業を牽引してきた感覚とは合わないものを感じてしまう。確かに昨今の市場や生活者の消費行動の変化に対応しようとした場合、店舗デザインや品揃え、パッケージデザインなどに手を入れようと考え、初代にそう上申する。しかし、初代はどうも納得できない。

 この手のオーナー企業の問題は「管理会計」にあることが少なくない。初代の経営の本質は大体「勘と経験と度胸・丼勘定」だ。丼勘定も商売が拡大期でキャッシュフローがうまく回っているときには通用する。

しかし「金融ビッグバン」の柱として、2003年3月決算期からキャッシュフロー計算書の作成開示が求められるようになった。中小~中堅企業も融資を受ける際などには必須のものとなった。

もはや、丼勘定、もしくは損益計算書だけ見て済む時代ではない。が、二代目がその知識を持ち合わせているケースは意外と少ない。

 この場合、引退したいと考えている初代には気の毒であるが、外部からも新しい会計知識を持った人間を入れ補強しつつ、二代目を初代の元でしばらく修行させる必要があるだろう。

 一方、ずっと父親の下で修行をしてきた二代目の場合、「勘と経験と度胸」もおぼろげながら受け継ぎつつある。しかし、初代と同じことをしても意味がない。自分なりの考えでマーケティンや会計分野にも外部の意見を取り入れながら改革に踏み切ろうとする。

 問題は古参の初代の取り巻き役員たちだ。「それはおかしい」「初代はそんな判断はしなかった」など口をはさまれれば、二代目は身動きができなくなる。こんな場合、初代は腹をくくって一気に引退してしまい、取り巻き役員たちも殉死(退任)させるぐらいの決断が必要だ。

二代目の年齢も考えて引継ぎのタイミングを

 初代から二代目に引き継ぐ際に重要なのは「一度会社をバラバラにして組み立て直す」という設計をしてみることだ。それは「リストラクチャリング」という意味ではないし、「BPR(Business Process Reengineering)」というプロセスレベルの問題でもない。「自社は何のために存在し、どのような顧客が自社にとって望ましい顧客(戦略的ターゲット)であり、さらにその顧客に対してどのような価値を提供するのか」という根源的な部分から定義をし直すことだ。

 最初に述べたように大企業の多くの2007年問題への対応は「先送り」しているだけだ。しかし、オーナー経営者が感じている「自分の感覚と市場・消費者がズレている感覚」はほぼ間違いない。例えば5年間先送りしたら、二代目も脂の乗った時期を過ぎてしまうかもしれない。それだけに「経営者の2007年問題」こそ、先送りが許されないのだ。

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2005.09.10

「アドバタイムズ」の九州版9月7日号

8月29日に「九州地方の方へ」というタイトルで予告いたしましたが、宣伝会議発行「アドバタイムズ」の九州版9月7日号にて「ワン・トゥ・ワンマーケティングと九州の現状」という特集企画が掲載されました。

そこで、大胆にもダイレクト戦略マーケティングラボの中澤功氏のとなりの囲みで拙稿が取り上げられました。
他にも、CRM協議会の匠英一事務局長、同協議会九州支部長の大井氏らが、これからのCRMにおける個人情報保護法への対応、などについてのコメントを寄稿いたします。

話題としては4月の同法の完全施行前後に盛り上がったもので、「今の時期になぜ?」と東京の感覚では思ってしまうかもしれませんが、恐らく通販の盛んな九州という土地柄、完全施行からはんとした経って点検の意味も含めて振返りが必要なのだろうと推察されます。事業者の方々にとっては本当に死活問題ですから・・・。

私の原稿は600字程度の短いものですが(この文字数に押し込むのが大変なんですが)、同紙届かない地域の方のために以下に転載いたします。


「個人情報保護法下のCRMは、より一層の洗練と長期的視点が必要」

 個人情報保護法が完全施行され、罰則規定が設定された。法学者的な見地で言えば罰則が整備され、同法は始めて本当の法律になったのだ。しかし、その後も個人情報の流出は後を絶たず、生活者は企業にパーミッションを与えることに対して以前よりデリケートになってきている。

 企業として第一に認識しなくてはならないのは、安易な個人情報の保持は大きなリスクであるということだ。販促キャンペーンを行い、「何かの役に立つだろう」と何となく個人情報を含めた詳細なアンケートを取得してしまう。論外である。

 どのような目的で、どのようにして個人情報を活用していくのかというCRMとしての精緻な「ロードマップ」がまず必要だ。また、そのロードマップには、「どの段階でどの程度のコミュニケーションを行うために、どの程度の情報取得が必要なのか」が定義されている必要がある。単に情報を送るだけなら、氏名もないメールアドレスだけでいい。趣味志向に合わせたメールを送りたいなら、その情報を合わせて取得が必要になる。さらに、資料請求や購入実績のある顧客で、継続的かつ、深いコミュニケーションを行う場合は厳重な管理の下詳細な個人情報を取得する。このような段階的な設計が欠かせないのだ。

 しかし、同法の完全施行は安易、もしくは混沌としていたダイレクトプロモーションやCRMを考え直し、洗練させるチャンスでもある。肯定的に捉え、再設計することをお勧めしたい。

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2005.09.01

”顧客視点”入門講座:第5回

「販促会議」の10月号が本日発売になりましたので、前号の連載のバックナンバー原稿を掲出します。

「”顧客視点”入門講座:第5回」

 今回は前回の続編とも言うべき内容なので、まずはおさらいから入ろう。「顧客の心の中を洞察し、しっかりと離さない」ためには以下の3つの要素が欠かせないと論じた。Recognition =顧客の存在を適切に認知・評価する。Time saving =利便性を提供する。Peace of mind =本質的な価値・安心・満足の提供。この3つの要素から構成された、「顧客との関係性を深めるためのフレームワーク」を活用し、第3回の「企業は顧客との関係性の中から利益を出す5つのポイント」と併せて、「顧客を優良顧客へと進化させる方法」を今回は提示したい。5つのポイントとは、ライフステージの変化に対応する、アップセリングを図る、クロスセリングを図る、アフターマーケティングでさらに収益を拡大する、お客様紹介(MGM)で顧客の拡大再生産を図る、である。

■顧客は三段階で進化する?
 「顧客が進化する」とは、企業が行う各種施策によって徐々に顧客を優良顧客化することができるという考え方で、論者によって3段階だったり5段階だったりする。しかし、何段階であるかより重要なのは、本来、「”顧客が進化する”のではなく企業側が懸命に各種の働きかけをすることによって、”顧客との距離が縮まる”」のだという基本認識だ。冒頭では分かりやすくするためによく使われている表現を使用したが、顧客は決して勝手に進化などしてくれない。顧客視点で考えれば簡単に分かることであるが、ともするとマーケティング的表現は誤解を誘発する。注意が必要だ。
 さて、その3段階での「顧客への働きかけ」の具体的な内容を見ていきたい。

■Step 1:最低限のCSの達成段階
 企業にとっての最大のダメージは、マーケティングコストを投下し、せっかく商品の購入などの関係が構築できた顧客が離れていくことである。そうなってしまっては、せっかく顧客化のために投下したコストも水泡に帰してしまう。そうならないためには”Recognition”つまり、「顧客を理解し、適切なケアを行う」というポイントを怠らないことが重要だ。そうすれば最低限のCS(Customer Satisfaction =顧客満足)は達成され、少なくとも顧客の不満が解消でき、離反は防げる。例えどんなマーケティングプログラムを先々用意していたとしても、関係構築ができたばかりの顧客が離れていっては何にもならない。ここが基本ポイントである。そのためには顧客の人生の節目(ライフステージ)、もしくは何らかの”きっかけ”をきっちりとフォローしていくことが重要なのだ。

■Step 2:満足度の向上段階
 一度顧客になってもらったら、その顧客には再度購入してもらいたい。そのために前のステップが存在したのだから当然だ。収益構造(レベニューモデル)として再購入を前提としてマーケティングプログラムが構築されている場合も少なくない。例えば、PCメーカーのデルコンピュータの収益モデルは、一人の顧客に5年間の間に3台のPCを購入してもらうことで成立するよう組み立てられているという。デスクトップPC→ノートPCの追加購入→デスクトップPCの買い換えという具合だ。つまり反復購入なくして早期に離反が起これば、マーケティングコストのROI(Return On Investment = 投資対効果)が赤字となってしまうのだ。
 確かに一度自社の商品・サービスを購入し、使用体験を持つ顧客であれば、初回購入に踏み切らせることよりも壁は高くはないだろう。しかし、再購入・反復購入という壁は一見低そうに見えるが厚く、突き破ることは難しいのである。
 ではどうすればいいのか。Recognitionは当然として、Time savingの要素を忘れないことが肝要だ。顧客に対してタイミングよく適切なお勧め(レコメンデーション)を行い、その商品の買い換え、または買い増し(アップセリング)、もしくは関連商品の購入(クロスセリング)の必要性を感じさせ、納得してもらい、購入結果に満足してもらうのだ。そのためには、むやみやたらとお勧めを繰り返すのではなく、「顧客に最も必要なものを提供する」という基本精神を忘れないことである。また、反復購入のほかにも、例えばプリンタやコピー機の場合のように、サプライ品や保守メンテナンスなどで収益を上げる(アフターマーケティング)ことも可能となる。

■Step 3:満足度の最大化段階
 反復購入を続けてくれる顧客と企業の間には次第に信頼関係が生まれ、強固になっていく。そして顧客がファン化する。この段階までくれば、顧客と企業の最適な関係が維持されさらに拡大されていくことになる。つまりPeace of mindが達成された状態だ。ここに至るまでには前段階でいかに努力したかが重要であり、前段階を飛び越したり、最初からこの段階を狙ってできるものではない。一段抜かしや二段抜かしで階段を駆け上がることはできないのだ。
 この段階に至ると企業にとって嬉しいことに、顧客が企業(もしくは企業側の担当者)に対して積極的にコミット(関与)してくれることだ。つまり、顧客自身が満足している商品・サービスを友人に勧めてくれるのだ。前回生命保険の契約を例として述べたが、筆者の生保の担当営業は非常に優秀でサービスもよく、とても緻密に設計されたプランを提案してくれた。それがきっかけでファン化した筆者は、実は新入社員や結婚した知人に、人生の節目に保険の加入や見直しを勧め、その担当者に紹介している。(今までに4人ほど加入したようだ)。 さらにこのタイミングを見計らって、何らかの紹介インセンティブを付与するMGM(Member Get Member =知人紹介)のプログラムを行うと非常に効果的である。
 逆に間違った例として、全顧客に対して一律にこのMGMのプログラムを投下していることをよく目にする。”紹介”は、紹介者が程度の差こそあれ、ある程度のリスクを負う行為であると理解すべきだ。例えば自分が勧めたものが被紹介者である友人・知人に気に入られなかったら、恐らく気まずい思いをするだろう。それが高額なものであったら関係が悪化するかもしれない。そのリスクを冒してまで紹介という行為に踏み切るのは、顧客自身がその商品・サービスに満足し、間違いないと確信しているからにほかならない。つまりPeace of mindが達成されていなければ、いくら紹介を依頼してもそれが達成されることはない。故に、全顧客に対して一律にMGMの施策を投入することは甚だ効率が悪いものになるのである。しかし、企業側の都合で「お客様紹介キャンペーン!」なるものを全顧客に対し展開している例は数多い。自らの立場に置き換えて顧客視点で考えれば明白なのに、やはりその基本を忘れてしまっているのだろう。

 以上が顧客との距離を縮め、優良顧客化するための3段階の方法である。連載の第3回4回の集大成といった感じであるが、マーケターという視点ではなく顧客視点で読み返せばごく当たり前なステップであることがわかるだろう。しかし、この連載の主旨である顧客視点でマーケティングを捉え直すには有用なフレームワークである。一度、自社の施策全体をこのフレームで俯瞰して見直してみていただきたい。

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