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2005.09.01

”顧客視点”入門講座:第5回

「販促会議」の10月号が本日発売になりましたので、前号の連載のバックナンバー原稿を掲出します。

「”顧客視点”入門講座:第5回」

 今回は前回の続編とも言うべき内容なので、まずはおさらいから入ろう。「顧客の心の中を洞察し、しっかりと離さない」ためには以下の3つの要素が欠かせないと論じた。Recognition =顧客の存在を適切に認知・評価する。Time saving =利便性を提供する。Peace of mind =本質的な価値・安心・満足の提供。この3つの要素から構成された、「顧客との関係性を深めるためのフレームワーク」を活用し、第3回の「企業は顧客との関係性の中から利益を出す5つのポイント」と併せて、「顧客を優良顧客へと進化させる方法」を今回は提示したい。5つのポイントとは、ライフステージの変化に対応する、アップセリングを図る、クロスセリングを図る、アフターマーケティングでさらに収益を拡大する、お客様紹介(MGM)で顧客の拡大再生産を図る、である。

■顧客は三段階で進化する?
 「顧客が進化する」とは、企業が行う各種施策によって徐々に顧客を優良顧客化することができるという考え方で、論者によって3段階だったり5段階だったりする。しかし、何段階であるかより重要なのは、本来、「”顧客が進化する”のではなく企業側が懸命に各種の働きかけをすることによって、”顧客との距離が縮まる”」のだという基本認識だ。冒頭では分かりやすくするためによく使われている表現を使用したが、顧客は決して勝手に進化などしてくれない。顧客視点で考えれば簡単に分かることであるが、ともするとマーケティング的表現は誤解を誘発する。注意が必要だ。
 さて、その3段階での「顧客への働きかけ」の具体的な内容を見ていきたい。

■Step 1:最低限のCSの達成段階
 企業にとっての最大のダメージは、マーケティングコストを投下し、せっかく商品の購入などの関係が構築できた顧客が離れていくことである。そうなってしまっては、せっかく顧客化のために投下したコストも水泡に帰してしまう。そうならないためには”Recognition”つまり、「顧客を理解し、適切なケアを行う」というポイントを怠らないことが重要だ。そうすれば最低限のCS(Customer Satisfaction =顧客満足)は達成され、少なくとも顧客の不満が解消でき、離反は防げる。例えどんなマーケティングプログラムを先々用意していたとしても、関係構築ができたばかりの顧客が離れていっては何にもならない。ここが基本ポイントである。そのためには顧客の人生の節目(ライフステージ)、もしくは何らかの”きっかけ”をきっちりとフォローしていくことが重要なのだ。

■Step 2:満足度の向上段階
 一度顧客になってもらったら、その顧客には再度購入してもらいたい。そのために前のステップが存在したのだから当然だ。収益構造(レベニューモデル)として再購入を前提としてマーケティングプログラムが構築されている場合も少なくない。例えば、PCメーカーのデルコンピュータの収益モデルは、一人の顧客に5年間の間に3台のPCを購入してもらうことで成立するよう組み立てられているという。デスクトップPC→ノートPCの追加購入→デスクトップPCの買い換えという具合だ。つまり反復購入なくして早期に離反が起これば、マーケティングコストのROI(Return On Investment = 投資対効果)が赤字となってしまうのだ。
 確かに一度自社の商品・サービスを購入し、使用体験を持つ顧客であれば、初回購入に踏み切らせることよりも壁は高くはないだろう。しかし、再購入・反復購入という壁は一見低そうに見えるが厚く、突き破ることは難しいのである。
 ではどうすればいいのか。Recognitionは当然として、Time savingの要素を忘れないことが肝要だ。顧客に対してタイミングよく適切なお勧め(レコメンデーション)を行い、その商品の買い換え、または買い増し(アップセリング)、もしくは関連商品の購入(クロスセリング)の必要性を感じさせ、納得してもらい、購入結果に満足してもらうのだ。そのためには、むやみやたらとお勧めを繰り返すのではなく、「顧客に最も必要なものを提供する」という基本精神を忘れないことである。また、反復購入のほかにも、例えばプリンタやコピー機の場合のように、サプライ品や保守メンテナンスなどで収益を上げる(アフターマーケティング)ことも可能となる。

■Step 3:満足度の最大化段階
 反復購入を続けてくれる顧客と企業の間には次第に信頼関係が生まれ、強固になっていく。そして顧客がファン化する。この段階までくれば、顧客と企業の最適な関係が維持されさらに拡大されていくことになる。つまりPeace of mindが達成された状態だ。ここに至るまでには前段階でいかに努力したかが重要であり、前段階を飛び越したり、最初からこの段階を狙ってできるものではない。一段抜かしや二段抜かしで階段を駆け上がることはできないのだ。
 この段階に至ると企業にとって嬉しいことに、顧客が企業(もしくは企業側の担当者)に対して積極的にコミット(関与)してくれることだ。つまり、顧客自身が満足している商品・サービスを友人に勧めてくれるのだ。前回生命保険の契約を例として述べたが、筆者の生保の担当営業は非常に優秀でサービスもよく、とても緻密に設計されたプランを提案してくれた。それがきっかけでファン化した筆者は、実は新入社員や結婚した知人に、人生の節目に保険の加入や見直しを勧め、その担当者に紹介している。(今までに4人ほど加入したようだ)。 さらにこのタイミングを見計らって、何らかの紹介インセンティブを付与するMGM(Member Get Member =知人紹介)のプログラムを行うと非常に効果的である。
 逆に間違った例として、全顧客に対して一律にこのMGMのプログラムを投下していることをよく目にする。”紹介”は、紹介者が程度の差こそあれ、ある程度のリスクを負う行為であると理解すべきだ。例えば自分が勧めたものが被紹介者である友人・知人に気に入られなかったら、恐らく気まずい思いをするだろう。それが高額なものであったら関係が悪化するかもしれない。そのリスクを冒してまで紹介という行為に踏み切るのは、顧客自身がその商品・サービスに満足し、間違いないと確信しているからにほかならない。つまりPeace of mindが達成されていなければ、いくら紹介を依頼してもそれが達成されることはない。故に、全顧客に対して一律にMGMの施策を投入することは甚だ効率が悪いものになるのである。しかし、企業側の都合で「お客様紹介キャンペーン!」なるものを全顧客に対し展開している例は数多い。自らの立場に置き換えて顧客視点で考えれば明白なのに、やはりその基本を忘れてしまっているのだろう。

 以上が顧客との距離を縮め、優良顧客化するための3段階の方法である。連載の第3回4回の集大成といった感じであるが、マーケターという視点ではなく顧客視点で読み返せばごく当たり前なステップであることがわかるだろう。しかし、この連載の主旨である顧客視点でマーケティングを捉え直すには有用なフレームワークである。一度、自社の施策全体をこのフレームで俯瞰して見直してみていただきたい。

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Comments

非常に勉強になるBlogを発見したとじっくり読ませていただいています。この第6回は第5回の重複になってますのでお知らせしておきます。

Posted by: Akiko | 2005.09.27 10:04 PM

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