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2005.05.19

「2007年をどう乗り切るのか。そしてその先にあるものは?」

最近の関心事である2007年問題(団塊の世代・大量定年退職による技術伝承対策)を、再び日経Bizプラスで執筆してみました。
以前執筆したときは警鐘を鳴らしただけでしたが、今回は具体的な対応策の一つを米国にて見つけてきました。
以下、是非ご覧ください。

キーワードは「シャドゥイング」です。
これは2007年問題だけでなく、様々なシーンで活用できそうなので、今後さらに研究と実証・実践を行ってみたいと思います。

http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/eigyo/rensai/crm.cfm?i=20051214crm86e3


-----------<以下バックナンバー用転載>-----------

■もはや秒読みの2007年問題を企業はどう考えているのか

 日経本紙も含め、各紙誌で2007年問題の特集が活発化している。

 2007年問題といっても、2003年に続く大型オフィスビルの竣工で中小ビルに空室が大量発生することを今回は意味していない。都心に大型の外資ホテルが大量参入し、日本の老舗高級ホテルが危機に瀕していることを指しているわけでもない。また、少子化に伴い、大学の学生募集数が応募数を上回る"全入問題"による大学の淘汰を憂いているのでもない。

 確かに上記の通り、2007年はあたかも何か歴史の結節点となろうとしているかのように、各業界にとって様々な問題をはらんでいる。しかし、全産業共通の問題は、団塊の世代の大量定年退職による伝承されないまま企業から消えてしまう技術・ノウハウをどうするのかという問題だ。

 日本の高度成長を支えてきた団塊の世代で一番数が多いのが、戦後間近の昭和22年(1947年)生まれであり、その世代が60歳で定年を迎える年が2007年。あと2年である。

 筆者は半年ほど前にもこのコーナーで上記団塊の世代の大量定年退職問題を初め、各業種の2007年問題とその乗り切り方のヒントを取り上げさせていただいた(第33回「2007年の"問題"と"解決(ソリューション)"。そのビジネスチャンスを考える」 参照)。

しかし、それからの半年、徐々にマスコミ各紙誌の特集は多くなり、危機感醸成に貢献していると思われるが、本格的な対策に乗り出したり、その対策の成果が出始めたりしているといった企業の報道はほとんど目にしない。余りに対応が遅いように感じられる。

恐らく送別会で送り出された方だろう、大きな花束を抱えどことなくほっとした、そして少し寂しそうな初老のサラリーマン氏の姿をホームで見かけたとき、筆者はどうしようもない焦燥感に駆られたのだ。

■2007年問題を単なる先送りにしていないか?

 多くの企業では、定年延長や嘱託制度による再雇用を決めている。さらに幾つかの企業では退職後もOBとの関係を保持し、必要なときに問題の解決策を聞けるようなホットラインを設けるなどの対策を取ったようだ。しかし、それが本当の問題解決になるのだろうか。

 確かに団塊世代は数多の同僚がリストラの波にさらされ、社を去った世代でもある。請われて企業に残る。退社後も企業との関係を保ち続ける。それも名誉に感じられるかもしれない。しかし、いつまでもその担当者個人に依存しているべきものなのだろうか。その人の持っている技術を若い世代に伝承していく努力と、方法論の模索を今まで怠ってきたが故の、時間切れ本人囲い込み・関係保持作戦が今日の実態なのであろう。

■いかにして"伝承"を実行していけばいいのか?

 筆者は前回このコーナーで2007年問題を取り上げた一月ほど後、筆者は前回このコーナーで2007年問題を取り上げた一月ほど後、(株)ジャストシステムのユーザー会が主催した、『KM World 2004 & Intranets』見学ツアー(米国加州サンタクララ)というものに参加した。そこで"伝承"の方法論の一つの答えを見つけたのである。

 米国でも日本の2007年の数年後に"ベビーブーマーの大量定年退職"という問題を抱えている。しかし、米国の定年退職者は日本と違い、いつまでも企業に囲い込まれたり関係を保持したりしない。しっかりと第二の人生をエンジョイするため、日本的先送りなどできないため切実な問題なのだ。

 そこで、米国では"シャドウイング"という手法が各所で研究・実践され成果を上げ始めている。簡単に言えば、伝承するべき技術者に伝承を受けるものがシャドウのようにぴったり張り付き、一挙手一投足を見逃さず、レポーティングしていく方法だ。一見、徒弟制度の親方と弟子の関係のようにも見えるが、弟子役の人間は基本的には観察・分析能力に優れた"アナリスト"であり、弟子入りした職人見習いではない。その人間が技術者に張り付き、全体の作業の流れを記録し続けるとともに、何げない動きも見逃さず、「今の動きは何のためにやったものなのか」「それをやるのと、やらないのではどのような違いが出るのか」などの質問を繰り返すのだ。

 技術者本人は既にその動作は習慣化されていて無意識に動いている。しかし、そのちょっとしたことが結果に大きく影響することもある。そのように、シャドウは全てをレポートという形で暗黙的に技術者の頭の中や体に染みついた技術を明文化し、誰が見ても判り、再現可能な形に変えていく。時に、レポートすることができない、理解できないような動きはシャドウ自身で体験し、その動きには意味があるものなのか、単なる技術者のクセで再現する必要のないものなのか見極めも行う。そして、最終的にはその作業に関する膨大なマニュアルができあがるのである。

 もちろん、シャドウ役の担当者がシャドウとして張り付いているうちに、その業務が気に入り、伝承される者に本当になってしまうこともある。しかし、その場合でも、正当な伝承者が一人誕生するだけでなく、誰でも再現可能なマニュアルも同時に完成することがポイントだ。

■実はホワイトカラーの生産性向上にも威力を発揮する

 上記のような書き方をすると、工場の職人の技術伝承法などにのみ適応可能なように思われるかもしれない。しかし、この手法を紹介した講演者はサンフランシスコ市・郡立法管理局・管理委員会書記官であり、彼女はこのシャドウイングの課程において形骸化した作業の洗い出しと削減を行うことによって大幅に効率化にも成功している。

 現業部門の技術伝承も非常に課題ではあるが、事務部門の業務引き継ぎも実態はどのようなものか思い起こしていただければ、この手法が効果を発揮するであろうことは想像に難くないだろう。つまり、退職か異動かは別として、担当者がその職場を離れるときには本人が何らかの"引き継ぎメモ"を残していくだろう。しかし、そのメモの内容の薄いこと。「あなたはこの程度の仕事しかしていなかったのですか?」と思わず聞きたくなるくらいの物がほとんどではないだろうか。ポイントはやはり、本人に書かせるのではなく、第三者が観察し、インタビューし、漏れ・抜けなくレポートするところにある。

■根性論から科学的手法に転換を

 残念ながら、このシャドウイングという手法は日本ではほとんど紹介されていない。間違えてはいけないのは前述の通り、この手法は徒弟制における親方・弟子の関係とは明らかにその目的と成果物が異なることだ。

 しかし、日本のビジネス界ではともすれば、OJT(On the Job Training)の名の下に「習うより慣れろ・見て盗んで覚えろ」というような根性論的な教育が今日でもまかり通っている。そして高度成長期において根性で仕事の技術を習得してきた人々が今、会社を去ろうとしており、後に残されるのは進化のない同じ旧来の根性教育で育てられ、ちょっと根性が足りず習得しきれずに、おろおろしている私たちなのだ。

 徒弟制とシャドウイング。一見親方に張り付いている弟子のような姿は似ているが、一番の違いは"根性を受け継ごう"とするのか、"根性を科学的に要素分解しよう"とするのかである。2007年まであと2年弱というこの危急の時、もう根性では間に合わない。科学的に、スピーディーに解決を図る必要があるのは間違いない。

 なお、シャドウイングに関しては以下のサイトに筆者の訪米レポートが記載されているのでご参照いただきたい。

株式会社ジャストシステム Knowledge Power Web

http://www.justsystem.co.jp/km/press/20050310.html

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