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2005.04.02

プロジェクトチームのメンバーを見回してみよう

最近、社内横断のプロジェクトチームって多いですね。
しかし、その正否は結局は人次第。
ではどんな人が集まればうまくいくのでしょうか。
リストラによる人不足がじわじわと効いてきた今日この頃、
「プロジェクト」はさらにどんどん増えるでしょう。
まず、立ち上がりでこけないための秘訣を整理してみました。

 http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/eigyo/rensai/crm.cfm?i=20051214crm83e3


-----------<以下バックナンバー用転載>-----------


昨今、各企業で部門横断・期間限定の特定のミッションを与えられる"プロジェクトチーム"が頻繁に発足している。複雑化した企業課題解決は特定部門の能力や知見(ナレッジ)だけでは解決できず、部門を横断して知見を寄せ集めなければならなくなっているという見方もできる。しかし、度重なるリストラで、各部門から人材を出し合って恒久的な部門を創設するという余裕がないという理由も多いだろう。

なるべく短期間で元の部門に復帰させること。場合によっては兼任でプロジェクトに参画させ、現行の業務の生産性をなるべく落とさないようにという思惑も見え隠れする。当然のことながら、そのような中途半端な覚悟で立ち上げられたプロジェクトチームは早々に頓挫(とんざ)する。

 では、どのようにすれば「成功するチーム・ビルディングができるのか」を今回は考えてみよう。

■そのチームは「ブレーメンの音楽隊」ではないか?

 グリム童話の一つ、「ブレーメンの音楽隊」は誰でも知っているだろう。年老いて捨てられたロバ、犬、猫、おんどりが集い、"ブレーメンに行って音楽隊に入る"ということを目標に旅を始める。ところが途中で盗賊たちが占拠して楽しげに暮らしている隠れ家を見つけ、四匹で力を合わせ盗賊たちを追い出し、そこで余生を楽しく暮らしたという話だ。

 4匹の動物が協力し、幸せを勝ち取ったという結末は一見、美談に見える。しかし、よく考えてみると、本来の目的地ブレーメンには到着していないし、音楽隊にも入隊していない。つまり、彼らの"プロジェクト"の目標は達成されなかったわけだ。

■チームメンバーにエースは投入されているか

 "ブレーメンの音楽隊入隊プロジェクト"はまず、メンバー構成に問題があったといえる。メンバーは"年老いた家畜"。年老いていることが問題なのではなく、高齢化によって本来の荷役、狩り、ネズミ取り、早起きという本来の役務ができなくなった能力的欠陥が顕在化しているメンバーが集まって発足したということだ。つまり"エース不在"のチームなのだ。

 プロジェクトチームが組織されるとき、そのメンバーを選出する際には元の組織の意見・思惑が強く働く。となると、自部門の都合を優先するなら"厄介払い"ではないが、エースは温存し二戦級以下の人員を供出してくるだろう。そのエース自身も、例えば営業など自分の成績が定量的に評価されるポジションにいる場合、数字の達成を妨げるような活動に関わりたくはないはずだ。

 では、どうやって解決するのか。ここはプロジェクトオーナーに任命された人間がトップダウンでの権限を発動してもらう以外ないだろう。まず、プロジェクトへの参画は「時間外や週1日業務の合間を見て」などという生ぬるいやり方では駄目だ。

 プロジェクトチームへの参画は"兼任辞令"を正式に発令してもらう。さらにMBO(Management By Objective =目標管理制度)のミッション項目の一つに記載させ、その人員の全ワークの何%はプロジェクトのために充てることを義務づけ、その活動内容の評価権はプロジェクトオーナーが有するというようなしくみを作るのである。このレベルでの縛りを入れておかないと、学生時代の部活動でよくいた"幽霊部員"になるメンバーが続出する。当然、プロジェクトも頓挫する。

■その船は山の上に向かって進んでいないか

 「船頭多くして船、山に上る」ということわざもある。"船頭"という指揮命令能力に優れた人材ばかりを集めても、他に必要なスキルを保持したメンバーがいなければ船はきちんと航行できない。そして、最後には指揮者同士の対立が船を海から山の上という全く間違った目的地に連れて行ってしまうということだ。

 つまり、エースがメンバーに獲得できたとしてもメンバーのスキルに偏りがあってはプロジェクトは成功させられない。

 先の「ブレーメンの音楽隊」をもう一度考えてみると、この目標達成ができなかったプロジェクトも実は評価できる点が隠されている。目的は達成できなかったものの、"メンバーが余生を楽しく過ごせる家を手に入れる"という目標変更をあっという間に行い、一定の成果を上げたことだ。実際のプロジェクトにおいても状況に応じて目標の変更や成果規模の縮小を行い"ミニマム・ウィン"で落ち着かせることも多い。最悪なのはプロジェクトを拡大させるだけ拡大させて、何の成果も出せなかったという結果になることだろう。

 "ミニマム・ウィン"を推奨しているのではない。大きな成功を目指すにしても、必要なのは、「ブレーメンの音楽隊」にあったようなメンバーの特徴を生かしたチーム構成が必要だといいたいのだ。ロバ、犬、猫、おんどりは各の姿や鳴き声を組み合わせて盗賊たちを驚かせ、隠れ家から追い出す。反撃してきた盗賊たちにも蹴り倒す、噛みつく、引っ掻く、つつくというおのおの武器で撃退して安住の地を手に入れた。成功の要因は"プロジェクトチームの連携とメンバー各自が相互補完できるスキルセットを保有していた"ということだ。

■多くのプロジェクトは、「企画段階で既に失敗している」という現実

 プロジェクトが組まれたとき最初に行うのは、メンバーが集まり与えられたミッションを成功に導くためのシナリオ作りである。つまり「プロジェクト実行計画書」の作成だ。この実行計画書が精緻(せいち)に書き上げられるか否かは、その後のプロジェクトの成功率を大きく左右する。しかし、それがうまくできないのだ。

 与えられたミッションの難易度をきちんと精査できず、安易に鵜呑(うの)みにして途中でそれに気づく。課題解決のためのアイディアが一向に出てこない。アイディアが出てきたとしても、それをとりまとめられない。全体の進捗管理ができず、与えられた期間中に実行すべき事項が完遂するよう組み立てられない。検討を重ねるうちに鬱積してくるメンバーの不満や負荷の偏り、モチベーションの管理ができない。以上のような問題点が顕著なものではないだろうか。

 実は上記の必要とされる要素は、各々必要なスキルセットと結びつけられる。難易度の精査や市場環境との対比・調査=アナリシス。アイディアをひねり出す=アイディア・ジェネレーション。とりまとめる=パッケージング。進捗・進行管理=プロジェクトマネジメント。メンバー管理=ジェネラルマネジメント。(これはプロジェクトオーナーが行う場合が多い)。

 そのすべてを一人でできる人はいない。しかし、人によっては上記の必要とされる機能の複数をこなせる人もいる。逆に、メンバー全員を見回してもどうしても得意そうなメンバーがおらず、穴になる部分があることもある。

 それを明らかにするためには、個々のメンバーとチーム全体のスキルセットの棚卸しを初めに行い、メンバーの配置、場合によってどうしても穴があるようであれば増員の手当を行うことが必要なのだ。そして、無事に「実行計画書」が作成され実施段階に入っていけば、また新たなスキルを持った者が必要になってくるだろう。そうしたときには、プロジェクトマネージャー、ジェネラルマネージャーは必要なスキルセットを持ったメンバーへの入れ替えなども考えなければならない。

 冒頭記したように、今後ますます"プロジェクト型"業務は増えてくるだろう。"経営の神様"といわれるジャック・ウェルチが「経営の80%は人事で決まる」と言ったのと同じく、プロジェクトの正否も結局は"人材の設計次第"なのである。それも固定的な部門の中で、よく顔を見知ったメンバーと進めるわけではないだけに難しさがある。しかし、嫌も応もなく今後このような仕事の進め方は増えてくるだろう。本稿がその参考になれば幸いである。

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