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7 posts from April 2005

2005.04.16

青山学院大学経済学部での第1回講義を終了しました!

プロフィールにも書きましたが、今年の前期、青山学院大学経済学部にて、「産業論(ベンチャービジネスとマーケティング)という講義を13回行います。

その第1回が終了しました。
土曜日の1限(9:00~10:30)という、講師自身が朝起きて遅刻しないことが最大のチャレンジではないかという時間帯です。
にもかからわず、予想に反し70名あまりの学生が集まりました。(履修登録が確定していないので、どの程度の歩留まりになるか予断を許しませんが)。

いわゆる「ベンチャー企業をどう立ち上げるか」とか「どう経営していくか」ではなく、「マーケティングと顧客視点でベンチャーの失敗パターンを見直し、成功の秘訣を考えること」をテーマにしています。

学生とのインタラクティブなやりとりを目指し、「質問・意見・発言は加点」という方式をとったためかなかなか活発な授業になりました。

とはいえ始まったばかり。残り12回。がんばります。

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2005.04.14

書籍を執筆しました!(共著ですが、、、、)

以前勤務していた会社で書いたのに引き続き(といってもその本は既に廃盤ですが)、
私の二冊目の本ができあがりました。

「思考停止企業~本音のナレッジマネジメント実践ドラマ~」という本です。
(ダイヤモンド社:定価1700円+税)

この本はタイトル通り、私の専門領域の一つであるナレッジマネジメントの本で、
しかも得意の「営業改革」をテーマにしたものです。

内容は、ある企業の営業改革を舞台とした小説仕立てにしています。
しかし、共著者達である各企業のKM推進担当者実体験をもとにしているので、
非常にリアリティーがあり、かつ、ノウハウもふんだんに盛り込んであります。
また、小説とは言え、ナレッジマネジメントの導入のポイント、組織づくり、
運営のカギや忘れがちな人間系の話まで網羅しています。

小説の中に出てくる専門用語やポイントについては、ページ下に全て脚注を
付け(ここ、私かなりがんばりました)、各章末には、その章で知っておくべき
知識や理論をコンパクトにまとめた解説(ここも4章中2章分担等しました)、
ナレッジマネジメントを現場で実践する際のよくある疑問や課題などをまとめた
Q&A(これもアンサー部分をいっぱい書きました!)も用意されています。book


本日発売ですが、bk1にはもう載っていました。
http://www.bk1.co.jp/search/search.asp?kywd=%8Ev%8Dl%92%E2%8E%7E%8A%E9%8B%C6&srch=1&Sort=dd&submit.x=39&submit.y=7
アマゾンは残念ながらまだのようです。

大手書店では平積みになる予定ですので、目についたら是非一度ご覧ください。


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2005.04.07

日経ナレッジマネジメント フォーラム2005に登壇します

日本においてナレッジマネジメント(KM)のフォーラムは大きなもので3つあります。
日本ナレッジマネジメント学会のフォーラムと
ジャストシステム社のJKMF(ジャストシステム・ナレッジマネジメントフォーラム)
そして日本経済新聞社の日経ナレッジマネジメント フォーラムです。

ジャストシステム社のフォーラムにはお呼ばれして、よく講演をするのですが、
日経のフォーラムに登壇するのは3年ぶりです。

しかも、今度はパネルディスカッションのモデレーターとしてです。
パネルディスカッションはパネラーとしては何回も出たことはありますが、
モデレーターになるのは初めて!

パネルディスカッションはモデレーターの進め方一つで、
面白くもつまらなくなるので、ちょっと緊張します。

内容詳細はまた、お知らせしますので、とりあえず以下をご覧ください。
A-2のコマに出ます。

 http://www.nikkei.co.jp/events/km2005/ 

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2005.04.05

雑誌連載開始のお知らせ

「宣伝会議」社の「販促会議」に連載を開始しました。
題して「顧客視点のマーケティング入門」。
見開き2ページで12回連載の予定です。

「販促会議」誌はセールスプロモーション(SP)関連の専門誌で、
広告関連の多くの読者が購読しています。
SP関連業務もかつて、私もよく担当していましたし、
今後もクライアントの要望があれば積極的に行っていくつもりの分野です。

しかし、実はこの分野で現場において業務を行っている人々の中には、
マーケティングの基本を学んでおらず、ひたすら現場業務を通じて
習得している人も少なくありません。

”習うより慣れろ”も大切ですが、やはり基本は大切です。
コトラー大先生の分厚い本を読まなくても、最低限の基本がわかるようになる。
さらにそれが、より現場の事象と結びついている。
それが連載のねらいの第一です。

もう一つは「顧客視点」。SPを企画・実施する側の立場にいると、
つい”売る側の立場”になってしまい、「顧客視点」、つまり”顧客がそれによって
どう思うか”という根本的な事を忘れがちになってしまいます。
施策としての目新しさ、面白さも重要ですが、本当に大切なのは、
「その施策が顧客の心にどう響いて、その後どのような行動を誘発できるか」です。
そうした”ものの見方”をお伝えできればというのが、連載のねらいの2つめです。

毎月1日発売。
もし書店で目についたらお手にとってご覧ください。
(後ろの方のページです)。


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2005.04.02

プロジェクトチームのメンバーを見回してみよう

最近、社内横断のプロジェクトチームって多いですね。
しかし、その正否は結局は人次第。
ではどんな人が集まればうまくいくのでしょうか。
リストラによる人不足がじわじわと効いてきた今日この頃、
「プロジェクト」はさらにどんどん増えるでしょう。
まず、立ち上がりでこけないための秘訣を整理してみました。

 http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/eigyo/rensai/crm.cfm?i=20051214crm83e3


-----------<以下バックナンバー用転載>-----------


昨今、各企業で部門横断・期間限定の特定のミッションを与えられる"プロジェクトチーム"が頻繁に発足している。複雑化した企業課題解決は特定部門の能力や知見(ナレッジ)だけでは解決できず、部門を横断して知見を寄せ集めなければならなくなっているという見方もできる。しかし、度重なるリストラで、各部門から人材を出し合って恒久的な部門を創設するという余裕がないという理由も多いだろう。

なるべく短期間で元の部門に復帰させること。場合によっては兼任でプロジェクトに参画させ、現行の業務の生産性をなるべく落とさないようにという思惑も見え隠れする。当然のことながら、そのような中途半端な覚悟で立ち上げられたプロジェクトチームは早々に頓挫(とんざ)する。

 では、どのようにすれば「成功するチーム・ビルディングができるのか」を今回は考えてみよう。

■そのチームは「ブレーメンの音楽隊」ではないか?

 グリム童話の一つ、「ブレーメンの音楽隊」は誰でも知っているだろう。年老いて捨てられたロバ、犬、猫、おんどりが集い、"ブレーメンに行って音楽隊に入る"ということを目標に旅を始める。ところが途中で盗賊たちが占拠して楽しげに暮らしている隠れ家を見つけ、四匹で力を合わせ盗賊たちを追い出し、そこで余生を楽しく暮らしたという話だ。

 4匹の動物が協力し、幸せを勝ち取ったという結末は一見、美談に見える。しかし、よく考えてみると、本来の目的地ブレーメンには到着していないし、音楽隊にも入隊していない。つまり、彼らの"プロジェクト"の目標は達成されなかったわけだ。

■チームメンバーにエースは投入されているか

 "ブレーメンの音楽隊入隊プロジェクト"はまず、メンバー構成に問題があったといえる。メンバーは"年老いた家畜"。年老いていることが問題なのではなく、高齢化によって本来の荷役、狩り、ネズミ取り、早起きという本来の役務ができなくなった能力的欠陥が顕在化しているメンバーが集まって発足したということだ。つまり"エース不在"のチームなのだ。

 プロジェクトチームが組織されるとき、そのメンバーを選出する際には元の組織の意見・思惑が強く働く。となると、自部門の都合を優先するなら"厄介払い"ではないが、エースは温存し二戦級以下の人員を供出してくるだろう。そのエース自身も、例えば営業など自分の成績が定量的に評価されるポジションにいる場合、数字の達成を妨げるような活動に関わりたくはないはずだ。

 では、どうやって解決するのか。ここはプロジェクトオーナーに任命された人間がトップダウンでの権限を発動してもらう以外ないだろう。まず、プロジェクトへの参画は「時間外や週1日業務の合間を見て」などという生ぬるいやり方では駄目だ。

 プロジェクトチームへの参画は"兼任辞令"を正式に発令してもらう。さらにMBO(Management By Objective =目標管理制度)のミッション項目の一つに記載させ、その人員の全ワークの何%はプロジェクトのために充てることを義務づけ、その活動内容の評価権はプロジェクトオーナーが有するというようなしくみを作るのである。このレベルでの縛りを入れておかないと、学生時代の部活動でよくいた"幽霊部員"になるメンバーが続出する。当然、プロジェクトも頓挫する。

■その船は山の上に向かって進んでいないか

 「船頭多くして船、山に上る」ということわざもある。"船頭"という指揮命令能力に優れた人材ばかりを集めても、他に必要なスキルを保持したメンバーがいなければ船はきちんと航行できない。そして、最後には指揮者同士の対立が船を海から山の上という全く間違った目的地に連れて行ってしまうということだ。

 つまり、エースがメンバーに獲得できたとしてもメンバーのスキルに偏りがあってはプロジェクトは成功させられない。

 先の「ブレーメンの音楽隊」をもう一度考えてみると、この目標達成ができなかったプロジェクトも実は評価できる点が隠されている。目的は達成できなかったものの、"メンバーが余生を楽しく過ごせる家を手に入れる"という目標変更をあっという間に行い、一定の成果を上げたことだ。実際のプロジェクトにおいても状況に応じて目標の変更や成果規模の縮小を行い"ミニマム・ウィン"で落ち着かせることも多い。最悪なのはプロジェクトを拡大させるだけ拡大させて、何の成果も出せなかったという結果になることだろう。

 "ミニマム・ウィン"を推奨しているのではない。大きな成功を目指すにしても、必要なのは、「ブレーメンの音楽隊」にあったようなメンバーの特徴を生かしたチーム構成が必要だといいたいのだ。ロバ、犬、猫、おんどりは各の姿や鳴き声を組み合わせて盗賊たちを驚かせ、隠れ家から追い出す。反撃してきた盗賊たちにも蹴り倒す、噛みつく、引っ掻く、つつくというおのおの武器で撃退して安住の地を手に入れた。成功の要因は"プロジェクトチームの連携とメンバー各自が相互補完できるスキルセットを保有していた"ということだ。

■多くのプロジェクトは、「企画段階で既に失敗している」という現実

 プロジェクトが組まれたとき最初に行うのは、メンバーが集まり与えられたミッションを成功に導くためのシナリオ作りである。つまり「プロジェクト実行計画書」の作成だ。この実行計画書が精緻(せいち)に書き上げられるか否かは、その後のプロジェクトの成功率を大きく左右する。しかし、それがうまくできないのだ。

 与えられたミッションの難易度をきちんと精査できず、安易に鵜呑(うの)みにして途中でそれに気づく。課題解決のためのアイディアが一向に出てこない。アイディアが出てきたとしても、それをとりまとめられない。全体の進捗管理ができず、与えられた期間中に実行すべき事項が完遂するよう組み立てられない。検討を重ねるうちに鬱積してくるメンバーの不満や負荷の偏り、モチベーションの管理ができない。以上のような問題点が顕著なものではないだろうか。

 実は上記の必要とされる要素は、各々必要なスキルセットと結びつけられる。難易度の精査や市場環境との対比・調査=アナリシス。アイディアをひねり出す=アイディア・ジェネレーション。とりまとめる=パッケージング。進捗・進行管理=プロジェクトマネジメント。メンバー管理=ジェネラルマネジメント。(これはプロジェクトオーナーが行う場合が多い)。

 そのすべてを一人でできる人はいない。しかし、人によっては上記の必要とされる機能の複数をこなせる人もいる。逆に、メンバー全員を見回してもどうしても得意そうなメンバーがおらず、穴になる部分があることもある。

 それを明らかにするためには、個々のメンバーとチーム全体のスキルセットの棚卸しを初めに行い、メンバーの配置、場合によってどうしても穴があるようであれば増員の手当を行うことが必要なのだ。そして、無事に「実行計画書」が作成され実施段階に入っていけば、また新たなスキルを持った者が必要になってくるだろう。そうしたときには、プロジェクトマネージャー、ジェネラルマネージャーは必要なスキルセットを持ったメンバーへの入れ替えなども考えなければならない。

 冒頭記したように、今後ますます"プロジェクト型"業務は増えてくるだろう。"経営の神様"といわれるジャック・ウェルチが「経営の80%は人事で決まる」と言ったのと同じく、プロジェクトの正否も結局は"人材の設計次第"なのである。それも固定的な部門の中で、よく顔を見知ったメンバーと進めるわけではないだけに難しさがある。しかし、嫌も応もなく今後このような仕事の進め方は増えてくるだろう。本稿がその参考になれば幸いである。

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2005.04.01

米国ナレッジマネジメント事情

実は、筆者仕事の上での関心領域は「ナレッジマネジメント(KM)」が占めています。”KM”というと、企業の中では、何とも日の当たらない場所にひっそりと咲く花のような印象があるかもしれません。
しかし、これからの時代、突き詰めていくと、ごく近くでは「団塊世代の大量定年退職に際し、そのノウハウをどう伝承していくか」とか、「バランスシート上の見せかけの業績回復ではなく、真の企業再生のためどうやって営業改革を断行するか」などもテーマなのです。
なかなかおもしろい領域だと思いませんか?

そんな筆者が昨年10月に、KMの世界ではリーダーシップカンパニーともいえる、”ジャストシステム社”が主催する
「KMワールド&イントラネッツ2004」というカンファレンスに参加するために、サンタクララ(シリコンバレー)まで行って参りました。
正直、全く遊びのないキツイ出張でした。(その様子も以下連載に記述)。

同社のメルマガにその様子を5連載で寄稿していますので、そこで筆者がつかんできたものを共有していただけたらと思います。

第1回「米国もしくは世界のKMの水準」: : ++--------------------------------------------------------------------++
         第1回「米国もしくは世界のKMの水準」
++--------------------------------------------------------------------++
■『KM World 2004 & Intranets』視察団出国す。

2004年10月25日、JECS(ジャストシステム・エンタープライズ・ソリューション
協議会)に属する会員社(ユーザ)の有志、及びジャストシステム社員からなる
15名の『KM World 2004 & Intranets』視察団は,成田から一路アメリカン航空で
サンノゼ空港(シリコンバレー)を目指していた。

JECSではジャストシステム社のエンタープライズソリューション製品ユーザ企業
の担当者と、ジャストシステムの技術・開発・営業の各担当者が渾然一体となっ
て関心テーマ毎に3つの研究会で毎月『熱い議論』が交わされている。そこは単
なる交流会や情報交換会ではない。先進の実践事例の共同研究やソリューション
の共同開発などが行われ、実際にそこから生み出された製品もあるのだ。

しかし、その『KMに対する消し難い熱い情熱』がまさか海を渡ってしまうことに
までなるとは、2002年5月のJECS発足当初には予想していなかった。

『KM World 2004 & Intranets』とは,年に一度米国にて開催されるカンファレン
スと展示会である。その規模感でいえば、ジャストシステムのJKMFと日経新聞社
のKMフォーラムを足して、さらにデータウェアハウス&CRM Expoの展示の半分を
足したような大きなものだ。会期は3日間。この間会場である『サンタクララ・
コンベンションセンター』はKM関係者で埋め尽くされる。それだけに、「本場の
KMを何としてでも観てみたい!」というのが今回参加したメンバーの共通した熱
き思いであったのも確かだ。

企業から参加する『視察団』といえば、通常「視察半分、遊び半分」が多いが、
我々視察団は成田・サンノゼ単純往復、すぐ隣のサンフランシスコにも寄らず、
会期終了の翌朝には帰国という旅程が示すように、遊びなし。カンファレンスの
約90のセッションを15人の団員が手分けして、関心のあるものを一つでも聞き漏
らすまいと、恐らく学生のころでもこんなにまじめに講義を受けていなかったで
あろうという真剣さで立ち向かったのであった。

ではいよいよ、今回から5回に渡り隔週で、視察団の団員たちが必死に収集して
きた情報のエッセンスを読者の皆様にお伝えしたいと思う。

※編集部注:[JECS]については下記URLを参照。
      http://www.justsystem.co.jp/jecs/?m=km2002

■『KM World 2004 & Intranets』概況

この第1回では『KM World 2004 & Intranets』の概況を読者の皆様にお伝えし、
おおよその雰囲気を掴んでいただきたいと思う。特に皆様の関心があるであろう
「日本のKMって世界の中でどのレベルにあるのだろう?」とか、「話題の中心は
何なのだろう」「日米の一番の違いって?」というような話題をオーバービュー
したい。
そして第2回からは、さらにその中からフォーカスしてお伝えすべきトピックを
取り上げていきたい。

結論を先出ししてしまおう。筆者が特に感じたのは以下の4点だ。

●米国もしくは世界のKMの水準と日本を比較しても、日本は全く遜色ない。
 それ以上であること。

●日本のKMはどちらかというと、「ドキュメント管理」的なところからスタート
 している例が多いが、米国では「いかにコミュニティを作り上げるか」、つま
 り『CoP = Community of Practice』というところに議論が集中しつつある。
 ※この”CoP”に関しては回を改め詳細にレポートする。

●KMの理論、技術的な側面のセッションと同時に、ポータルにおけるユーザビリ
 ティやユーザ・エクスペリエンス(User Experience = UXとも略される)にか
 なりのコマ数が割かれて、UX本来のテーマである、「いかにユーザに良好な使
 用体験をさせ、アクセスアップや利用モチベーションを高めるか」というポイ
 ントが注目されている。

●やはり話題の”blog(ブログ)”はKMワールドにも登場してきた。日本でもビ
 ジネスにいかに活用するか論議が盛んであるが、しかし、米国でもその活用運
 用の決定的な答えは出ていなかった。

●『シャドゥイング』なる聞き慣れない概念を発見。
 この概念は米国においてもさまざまな解釈や実行方法があるようであり、また
 日本でも”似て非なるもの”も存在する興味深いテーマだ。
※この『シャドゥイング』に関しても回を改め詳細にレポートする。

さて、以降上記でオーバービューしたポイントについて、特に次回以降で取り上
げない項目を今回は解説していきたい。

■米国もしくは世界のKMの水準

日本のKMは、米国のもしくは世界の水準と比較して全く遜色ない。これは紛れも
ない事実である。(『もしくは世界の』と記したのは、米国外から招聘されたス
ピーカーのセッションもいくつかあったからである。)出発前のJECSメンバーの
議論で「いかに米国は進んでいるのだろう?」と多くの人が想像した。しかし、
実際にいくつかの事例セッションを聞いてみると「こんなもんか?」と拍子抜け
してしまうほど。「KM全体のロードマップは立派に描けているが、まだファース
ト・ステップに過ぎない」ような事例も少なくなかったからだ。

だが、ここで勘違いしてはいけないのは、中には「米国本社が、全世界を対象に
実行しようとしている『エンタープライズ』KMである」という点に大きなポイン
トが置かれ発表されている例もあるということだ。

例えば、ヒューレット・パッカード(HP)の事例。彼らはファースト・ステップ
がようやく終わりかけているといっていた。つまり「バラバラだった社内のベク
トルがようやく揃った」と。よく考えればこれは凄いことだ。DEC、タンデム、
コンパックと吸収を続けたHPが旧各社の社員のベクトルを揃えたということにな
る。
こうした『エンタープライズ型』の事例で本当にうまくいっているところは日本
では少なく、研究開発部門だけ、営業部門だけという『部門ナレッジ』の推進例
の方が多い。なぜなら、部門に集中した方が「使えるナレッジの多い、濃い部分
最適化」が図りやすいからだ。それをあえて「全社共有することによって、価値
が低くなりがちな全体最適型」のKMに取り組もうとするのは、「吸収した各社の
ベクトル合わせがまず必要」というお家事情によるものだろうか。一歩一歩確実
に進めてきているHPのKM。以後注目してみたい。

その他、コンサルタントによる各種の「KM理論」のセッションもいくつもあった
が、まさに『玉石混淆』であった。

■ポータルにおけるユーザビリティ、
 ユーザ・エクスペリエンス(User Experience = UX)

正直、KMワールドでUXのセッションが設けられていたのは驚きであった。もっと
論理的なKMの話や、運用面でのポイント、事例などばかりだろうと思っていたか
らだ。そして、なぜこのようなセッションがあるのか興味に駆られていくつかの
セッションを聞いてみた。

内容的には、いわゆるWEBサイトの構築(企業の公式サイトやブランド・サイト、
キャンペーン・サイト)等の世界ではかなり当たり前になっているものを、「ナ
レッジ・ポータル」もしくは「コミュニティ・ポータル」を構築する際の留意点
として少々フォーカスの当て方を変えて体系的に語っているという感じだった。

そもそも、なぜUXがここで議論されるのか。それは、いくつかの自社事例のセッ
ションでその企業のポータルが紹介されたときに分かった。一様に「カッコ悪く
使いにくそう」なのである。どうやら米国においてはKMとWEB開発のチームの接点
は非常に稀薄であったようだ。

筆者の経験であるが、「ポータルをユーザが使ってくれない」と嘆くナレッジマ
ネージャの依頼に従い、ユーザインタビューを実施してみると、「使わないので
はなく、使いにくくて使えない」「カッコ悪くて使う気にならない」という答え
が返ってくることが多々ある。つまり、使いたいユーザがストレスなく使えるナ
ビゲーションと「使いたい」と思わせるようなパーセプションへの刺激が必要な
ようなのだ。米国ではようやくそのあたりに気づいたのであろう。

しかし、日本も油断はできない。講演に招かれていたのはサンフランシスコの有
名なWEBデザイナーであり、UXの専門家だった。日本のWEBデザイナーは彼の著書
や作ったサイトを見て多くを学んだものだ。日本においても、ユーザビリティと
UXが置き去りにされているナレッジポータルは少なくない。米国が気づき本気に
なったら日本は追い抜かれてしまうかもしれない。

■まだ答えの出ていない『blog(ブログ)』の活用・運用

『blog』とは『weblog』が略されて一般に呼ばれるようになったものだ。元々は
個人の日記サイト運営目的のために活用されたが、その管理者のアップのしやす
さ、閲覧者のレスポンス(書き込み)のしやすさ、そして何より『トラックバッ
ク』と呼ばれる引用リンク機能によるサイト間の広がりから、個人サイトの世界
では現在一気にブレイクしている。『ムーバルタイプ』というプログラムが主流
であり、大手プロバイダー・ポータル各社等もそれを自社流にカスタマイズして
会員に提供。さらにユーザ数が伸びている。

その『blog』の活用において、現在日本でも盛んに議論されているのが『ビジネ
スblog』。つまり、個人サイトだけではなくビジネスへの活用である。また同様
にKM用に社内のポータルとしてそれが活用できないかという点である。

『KM World 2004 & Intranets』においても、3コマほどblog関連のセッションが
あったが、結論としては残念ながら「これなら使える!」という決定的なものや
運用に関するノウハウは聞けなかった。

外部向けの『ビジネスblog』の活用はともかくとして、確かにblogが社内向けの
コミュニケーションに向いているのは分かるのだが、

●書き込まれる内容の質的統制ができない。
●実名で書き込ませると活性化せず、ハンドルネームだと書き込みの質的な問題
 やトップから見てまじめに仕事をしているように見えないという問題が発生。
●ヘビーユーザとROM(Read Only Member)に分かれるのは確実で、その企業毎の
 文化によって、コミュニティとしてのボトムアップや、間口を広げる効果が確
 実に出るとは限らない。

等の問題が残っている。

確かにポータルの活性化(アクセスユーザの数的向上)に貢献する確率は高い。
しかし、それだけで『ナレッジ・エクスチェンジ』のツールとして完結するので
はなく、あくまで一部に組み込む程度のものであると考えられる。

               ◆ ◆ ◆

第1回の内容はいかがであっただろうか。今回はオーバービューなので、各話題
が少々食い足りないかもしれない。その際は「この部分を掘り下げて解説を」と
ご要望いただきたい。ご要望の多かった話題に関しては、残り4回の内容に組み
込むか、第6回として『特別号』を検討したい。

次回以降の残り4回の予告は以下の通りである。

>>第2回「注目の事例とそのポイント:Sasol社とBuckman社の事例にみる
>>    CoPの展開とトップダウンのKMのあるべき姿」

両社の事例はまさに「CoP」であり、KMのシステムだけに限らないオフラインで
の教育にも相当の力を入れている。また「売り上げを上げたい」などといった目
先の効果を狙っていない。まさに全世界に広がるグループ全体に渡る「企業文化
の変革」を図っている。それを可能にしているのもトップのディシジョンならで
はである。このレベルの事例は、日本にはまだないだろう。乞うご期待だ。

>>第3回「KMの実践のあるべき姿、または2007年問題の解決策となり得るか?
>>   米国で話題の『シャドゥイング -1-』」

「シャドゥイング」とは、まさに暗黙知の形式知化の一手法であり、日本におけ
る2007年問題のように、伝承すべきナレッジを社内に残す方法だ。カンファレン
スでは2つの解釈が示され、資料にも相当のボリュームが割かれている。このこ
とからも米国での期待のほどが分かる。この項は2回に分けて初回は純粋にカン
ファレンスで紹介された内容に解説を加えてご紹介しよう。

>>第4回「シャドゥイング -2-
>>   日本での失敗例からその成功のポイントを考える」

実は、JECSメンバーの帰国後の「カンファレンスの振り返りミーティング」でも
非常に盛り上がったのが、この「シャドゥイング」である。というのは、理論的
には是であるが、日本では既にその失敗例もある。また旧来の「徒弟制」とどう
整理を付けていくのかなどが、議論の焦点であった。ここは筆者の私見も交え、
「成功のためのポイント」を考えてみたい。

>>第5回「Buckman社ラミゼン博士とのJECS特別セッションにおけるポイント」

「Buckman社ラミゼン博士」はKMの世界の権威だ。我々はKMワールド全セッション
終了後に、会場に隣接したヒルトンホテルのバンケットルームに彼女を招き、特
別セッションを申し込んだ。通り一遍のプレゼンを始めようとした彼女に、我々
からの『質問状』を叩きつけた。彼女の顔色が変わった。「皆さんが日本におい
て、このレベルのKMの実践者だとは認識していなかった。では、プレゼンはやめ
にして、Q&Aセッションに切り替えましょう」。かくして交わされた内容に解説を
加えてご紹介したい。

以上、次号からの連載にご期待下さい。
  
第2回「注目の事例とそのポイント」: 
http://www.justsystem.co.jp/km/press/20050203.html 
第3回「謎のキーワード「シャドウイング」: http://www.justsystem.co.jp/km/press/20050218.html 
第4回「サンフランシスコ市の”現場作業アウトプット型シャドウイング”実践」:   http://www.justsystem.co.jp/km/press/20050310.html 
第5回第5回「JECSスペシャルセッションの巻」:
http://www.justsystem.co.jp/km/press/20050329.html

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個人情報保護法完全施行:もう一度考えてみよう

このコラムを執筆したのは2001年です。
当時、だいぶ「個人のプライバシー」という観点がクローズアップされるようになり、セス・ゴーティン氏の「パーミッションマーケティング」が注目された時期でした。
今考えれば「パーミッション」は”当たり前なこと”というより、”義務”になったわけです。

私の大学一年生の時の”基礎法学”の教授の持論は、「罰則規定を持たない法律は実効性をもyたない。よって、法律ではない。」という持論の持ち主でした。
つまり、明日、2005年4月1日から、「個人情報保護法」は”本当の法律”になるわけです。

以下、ご紹介するコラムを読み返してみると、「法律」以前に消費者のコミュニケーションにおける基本的なスタンスとして、法律が定めるのと同等のことを自分が考えていたのだなあと感じます。
それもこれも、「インターネット」という人類未曾有のコミュニケーションツールが成立したからでしょう。

私が新入社員の頃、当然FAXは存在しました。
しかし、PCはなく、富士通の”オアシス”というワープロ専用機が数台設置された”OAコーナー”なるものが社屋の片隅にありました。
PCがひとり一台になり、高速インターネット網が整備され、モバイル環境も整った。
わずか15年の間に世界は全く異質なものになってしまったのです。

と、いうわけで、その15年のうちの1/3ほど前に今日を予見してみたコラムです。
ご参照ください。

 http://www.wunderman-d.com/article/c07_001_01.html 


-----------<以下バックナンバー用転載>-----------

「リスクマネジメントBusiness12月号」 連載 ['01.12]
変化する顧客とCRM


<顧客情報活用は諸刃の剣>

筆者の職場での一日は、PCとメールソフトを立ち上げた後のジャンクメールの削除で始まる。今日もまた1件。
「メールマガジン第3号!」と無邪気なタイトルが付けられている。一応、開いてみると、夏に海に行くための道具を購入したスポーツ用品店からである。筆者のメールアドレスを何らかの方法で不正に入手し、送付してきているわけではないので、たびたび問題となっているスパムの類ではない。確かに、一度はこの企業で購買をし、さらに「この場で申し込めば、合計金額が5%安くなる」という誘いに乗ってポイントカードなるものを作った記憶もはっきりとある。リレーションを一度は持ったわけだ。しかし、その申込書にあった「今後セールのお知らせなどの受け取りを希望しない」という欄にしっかりとチェックを書き込んだ記憶も残っている…。
購買や各種申し込みの際に個人情報の収集を行う場合、その後リレーションを持っていいか否かを確認する工程が欠かせなくなっている。実際、オプトイン(希望を取る場合)、もしくはオプトアウト(拒否を確認する場合)のいずれかはきちんとなされているケースが多くなってきた。逆にいうと、その最低限の態度を示さなければ、容易に個人情報は開示されなくなっている。
前述のケースで言えばオプトアウトを提示したわけであるが、問題はそれがまったく適切に運用されなかったことにある。おそらく、悪意があってのことではないだろう。単純にオプトアウトの項目を入力しそこなったか、メール送信の際にデータベースの設定を誤ったかのいずれだろう。しかし、顧客が自らの個人情報に非常にセンシティブになっている昨今、このような単純なミスが大きなクレームに発展することもありえる。仮にそこまでは至らなくても、ミスが継続するようであれば、私自身もこの企業との付き合いは再考せざるをえない。小なりとはいえ販売機会を喪失し、一人の顧客を離反させてしまうのだ。
個人データを取得し活用することは企業にとって大きな武器になる反面、リスクをともなっている。このことを、まずしっかりと認識すべきだろう。運用ミスによる顧客の離反、クレームの発生に止まらず、何らかの理由で個人情報そのものが外部に流出でもしようものなら、社会的な問題にまで発展してしまう。そのリスクを自覚した上で、それを上回る効果を見込んで実施がなされているのかという点を問いたい。特にEメールは、従来では考えられなかった消費者・顧客とのダイレクトなコミュニケーションが安価で簡便に行えてしまう。そのあまりの気軽さにリスクを忘れていないだろうか。リスクとトレードするに耐えうる、効果ある仕組みを作り上げた上で実施がなされているだろうか。

<集めるのは「いま」必要な情報だけ>

一方で、webサイトは企業からの情報が書かれているだけの看板的な状態から、何らかのインタラクティビティを持ち始めた。初歩的なところでは、各種の申し込みや登録ができる入力フォームが用意されたサイトはもはや珍しくはない。ところが、その申し込み・登録を受け付ける際に、ここぞとばかりに膨大なアンケートを取得しようとする例が散見される。答える側の気持ちで設計されているのか、疑問を感じざるを得ない。年齢、職業、年収、持ち家か否か、趣味、商品の購入理由…。大きなお世話だと思うような質問も多い。顧客は答えにくい項目に悩みながら回答を入力することだろう。これは確実に顧客に負担を与える行為となる。時間と労力だけでなく、ダイヤルアップなら経済的負担もそれに加わる。一定の割合で顧客は絶えられず、脱落していくだろう。もちろん、その脱落分以上に、入力させた項目を反映したすばらしいコミュニケーションが、強固に顧客を囲い込むのなら実施すべきかも知れない。しかし、本当にそこまで考えて実施しているだろうか。Eメールが安易な顧客へのプッシュアプローチを助長するように、この入力フォームは、ダメでもともとやモノのついでという安易な感覚で、情報開示と負担を顧客に求めることを助長する危険性がある。
当社は現在、CRMを中心としたコンサルティングとサービス業務を実施しているが、それ以前にも16年間にわたってダイレクトマーケティングを推進してきた。ダイレクトマーケターの教訓のひとつに、「使わないデータは取るな!」というものがある。これにはいくつかの意味があり、古くはハードディスクがまだ高価だった時代に、不要なデータで余計な容量を食わないようにという意味もあった。しかし、最も重要なのは、個人情報の開示やアンケートや項目の量に反比例してダイレクトマーケティングの命であるレスポンス率が下がっていくということである。回答者が回答を面倒だと思ったり、抵抗感を覚えたりすることをいかに低減するか、ダイレクトマーケターはその設計に腐心する。また、不必要なデータは先の例のように、不適切な運用を発生させる危険も内包していることも認識されている。まずは、このダイレクトマーケターの伝統的な知恵に学んでいただくことをお勧めしたい。
前項では個人情報やアンケートの収集にともなうリスクを提示し、結論としてそれに見合うリターンが期待できるかがポイントであると述べた。では、現在多くの企業が行っている施策において、その目標は達成できているのだろうか。答えは、多くの場合、否であろう。理由は消費者・顧客に対する認識が古い、もしくは甘いといわざるをえないからだ。
端的な例をご紹介しよう。筆者は半年前にある百貨店のカードを作った時にアンケートに回答した。趣味と購入検討商品を聞かれていたので、その頃普及論で言えば後期採用者か遅延採用者として、多少年齢の高い者でもチャレンジしていた「キックボード」と回答した。それから半年。もはやキックボードをやっている人はほとんどおらず、筆者もとうとうやらずじまいだった。そしていま、何をやっているかといえば、自宅の部屋の一角を書斎コーナーとして確保することに成功し、そこを好きなアンティークの家具や小物、OA機器で埋め尽くすべく、積極的な購買行動を展開している。つまり、筆者の場合はわずか半年で趣味や購入関心商品が、アウトドア系の比較的チープな価格帯から、インドア系の比較的高価な価格帯のものに180度変化してしまっている。にもかかわらず、昨日ポストにはその百貨店から「スポーツの秋フェスティバル」のDMが届いていた。おそらく、蓄積されているデータの上では、私は秋空の下で楽しげにキックボードに乗っていることになっているのだろう。
人は変わり続ける。半年、早ければ3ヶ月もあれば趣味や関心事など変わってしまうことは大いにありえる。誰しも自分のことを考えれば、それは想像に難くないだろう。しかし企業の担当者としては、一度せっかく収集した消費者・顧客データはそのまま大切に使い続けてしまうのだ

<「自立型消費者」の誕生>

インターネットの登場によって、人の心の変化はさらに加速させられた。何より消費者と企業の関係が大きく変容した。それは「情報格差の消失」という大きな現象である。
かつて情報収集には手間と時間がかかり、個々人の持っている情報の質と量は、情報収集のスキルや人脈、熱意によって大きな差があった。そしてその違いによって、同じ商品を購入する場合でも、支払う対価がまちまちとなる現象が生じた。サービスについて詳しければ、大幅な値引きを引き出せるが、知識や情報がなければ値引は望めない。情報の多寡が一物多価の状況を生じさせていたのだ。
しかし、インターネットの普及によって、状況は一変した。専門誌を読まなくても、その業界の仕事をしている友人がいなくても、簡単に手間をかけずに、詳細な情報が収集できる。どこでいくらで買えるかもいくつかのサイトを覗きさえすればすぐにわかってしまう。もはや誰もがかつてのマニアやプロ並みの知識情報を持てるガラス張りの環境だ。 買う側が売る側と同レベルの情報を手に入れることができる。つまり、それが消費者間および消費者と企業との間での情報格差の消失である。
その環境は、かつてはマイノリティであったタイプの消費者層、「自立の消費者」を大量に増殖させている。自立型の消費者は購入プロセスのすべてを自己管理することによって、最も賢い購買行動をとることを志向する。関心のある商品の機能や価格を徹底的に調べ、自らが納得することを唯一の購買決定要因とする。彼らは販売側のプッシュセールスを極端に嫌い、情報の取捨選択は自らの価値観に合致するかどうかを基準とする。ともすればオタクでマイノリティ存在のみが持ち合わせていた傾向を、いまではインターネットユーザーなら誰しも程度の差こそあれ、ある程度は持ち合わせるようになっている。
元来、人の心は移ろいやすく、取得したデータをそのまま後生大事に持っていてもまったく意味がない。さらに、インターネットの登場によって消費者そのものが大きく変容をし始め、自立的な存在となっている。それに対応する方法はあるのか。答えは、次項としよう。

<適切性(Relevance)で顧客を誘導する>

消費者・顧客とのコミュニケーションに本当に必要な情報とは何なのか。ポイントは、前々項でも指摘した情報の入り口、個人情報の取得の方法にある。
昨年、パーミッションマーケティングという考え方が流行した。消費者・顧客に対し、コンタクトを行う許諾と、関心事を明確に聞き、望まれる関係性を構築・継続していこうというものであった。いささかプリミティブな感もあるが、その考え方は真理であるし、共感もできる。問題はそのパーミッションのとり方と運用の方法だろう。許諾を求められても、セキュリティやプライバシー保護の点で、およそ信頼できそうもないサイト環境では、とてもOKとはいえない。インターネットの初期普及段階のユーザーであればうっかり許諾を与えるだろうが、確実に増加している自立型のユーザーはうかつにパーミッションを与えないし、パーミッションのないままアプローチをすればすぐさまクレームが発生する。では、どうするのか。答えは前項において今後のコミュニケーション姿勢として説明した、ガラス張りの姿勢にある。パーミッションを得るためには、そのサイト、企業がどのようなプライバシーポリシーを持っているかを明確に提出する必要がある。さらにTRUST・eのプライバシー審査を受け、プライバシー・シールを掲げる努力も必要だろう。いまはまだその数は少ないものの、今後は審査を受ける企業が確実に増加するだろう。そうしなければ、自立化し賢くなった消費者・顧客とのインターネット上でのコミュニケーションは成立しないからだ。
さて、サイトの環境が整い、信頼とパーミッションを獲得した後は、どのようなコミュニケーションとサイトの設計を行うかが問題だ。前述のようにプッシュセールスを嫌う自立型の消費者は、自主的な意思決定を支援するプル型コミュニケーションを好む。自らが望むものを自らの意思で引き出すようなスタイルだ。
最近、効果的なwebサイトの設計手法として「ビジネスサイト型」が注目されている。自社のビジネスプロセスを洗い出し、webで実現できるプロセスの部分をサイトが担うよう設計する。その設計思想はどちらかというと、自主的な意思決定支援というより、企業にとって望ましいゴールを設定し、いかにそこまで誘導していくかという導線設計を重視している。
自立的な消費者には多数の選択肢の中から取捨選択する、ポータル型のサイトのほうが適しているかもしれないが、それでは企業にとって望ましいゴールにたどり着く可能性は極めて低く、サイトがビジネスとしての効果を発揮できない。となれば、理想的なのはプッシュされていると感じさせない、自然な誘導を行うサイト設計である。そのためには、考え方を少々変化させなくてはならない。
人は心地よく思えることなら拒絶はしない。ここでいう心地よさとは、自分にぴったりであると思えること=適切性である。CRM(=Customer relationship management)の"R"は、一般的にはRelationship(関係性)の"R"だが、このような自立傾向にある消費者の変化を考えるなら、Relevance(適切性)"の"R"つまりいかにぴったりだと感じさせ、離れさせないかという要素の方が重要となってくる。この要素こそ、消費者の意思よりも、企業サイドの何としても関係性を構築・維持しようという思惑が強く働く、既存の"Relationship"より適しているといえよう。
具体的な設計として望まれるのは、どうやってぴったりだと思わせ、ゴールに導くかというポイントである。消費者・顧客を企業としての望ましいゴールに導いていくためには、想像以上に数多くのデータが必要となる。そしてそれによる適切で適正な詳細セグメンテーションが基本となる。ワンtoワンコミュニケーションの基本は、実は詳細なセグメントとデータ活用にある。例えば、ワンtoワンのwebサイトを構築し、パーソナライズされたコンテンツを運営するためには、どのような属性や行動、アンケート回答を行ったかという顧客に紐付いたデータと、そのデータに応じて表示されるコンテンツ要素を組み合わせたルールというものを設計することが必要となる。当然、そのルール設計が粗ければ自分にぴったりとはならず、押し付けられているように顧客は感じることになる。しかし、同時に詳細なルールを設定のためには顧客に紐付いたさまざまなデータも必要となる。それだけのデータをどうやって取得するかも大きな問題となる。
前述したとおり、それを一度で取得しようとすれば顧客に大きな負担をかけることにもなるし、第一そのような聞き方に自立的な消費者が従うはずもない。方法は、「少しづつ顧客と繰り返すコミュニケーションの中で取っていく」ということだ。顧客から信頼感を得、ぴったりだという適切性を感じさせ、琴線に触れたコミュニケーションの中で顧客に問いかけをし、また行動履歴を蓄積していく。その結果、その顧客に対する最適なルールが作り上げられていき、さらにその顧客は適切性を感じ、結果として関係性が深まっていく。自社と顧客の適切な関係の中で育っていくデータ。これこそ価値のあるものであり、これからのCRMに欠かせないものであろう

<長期的な友好関係構築のために>

最後に消費者・顧客との関係構築に有効な発想方法をご紹介しよう。カスタマーインサイトである。カスタマーインサイトとは顧客の心を読み解き、顧客の望むことを提供することであり、琴線に触れることである。CRMにおいてはカスタマーインサイトに訴えるため、以下の3つのコミュニケーションが重要となる。
Recognition●顧客データを使って存在を適正に認知すること
Time saving●顧客にとって利便性を提供すること
Peace of mind●顧客に心の平穏を提供すること
この3つの要素は図2の通り、「モノ」ではない「本質的価値」の提供に集約される。例えば、保険は保険証券という紙切れに価値があるのでもなければ、何千万円という保障金額に価値があるのでもない。万が一のときでも家族が困らないという安心感こそが本質的価値である。
保険を例にとり、カスタマーインサイトを考えてみよう。まず契約情報や営業マンとのコンタクト履歴などの各種データにより、顧客が家族構成や役職、個別認識されていることが最低限の基本となる。Recognitionは、転職や子供の成長などの転機に合わせて必要な保険の見直しができるようなコンタクトや提案がなされているかどうか。Time savingは、必要な資料が正確に届けられてたり、各種の手続きが簡単に変更ができるなどの利便性が提供されているか。そして最終的にそれらによって安心感を提供できていれば、Peace of mindを達成していることになる。
契約過程においてRecognitionとTime savingが満たされる保険商品の提示と、Peace of mindが満たされる納得と安心感を提供できないとしたら、それは顧客に対して本質的価値を提供できていないことを意味する。それでは顧客が契約し、対価を支払うことはないだろう。逆に、企業側や担当者側が本質的な価値を理解できていれば、顧客とのコミュニケーションにおいて必要な要素はみえてくる。そのために必要なデータも。この考え方が関連する担当者全てに共有できてこそ、適切な運用も実現できる。もちろん、それが実現できる組織になっているかというのも重要なポイントとなる。最終的には、トップの意識改革と同時に、ボトム部分である現場の社員の意識改革までもが重要になる。 (終)


 

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