July 09, 2009

丸美屋「納豆ごはん専用ふりかけ」のチャレンジ!

昭和35年に「のりたま」を発売して以来、「”ふりかけ”といえば丸美屋」というポジションを獲得している同社だが、来月発売が予定されている新商品、「納豆ごはん専用ふりかけ」はかなりチャレンジな商品だ。

今回の商品に先駆けて、丸美屋は今年2月に「たまごかけごはん専用ふりかけ」を発売している。たまごかけごはんは2005年に行われた「たまごかけごはんシンポジウム」を機にブームがわき起こり、「たまごかけごはん専門店」も登場。岡山の専門店では年間7万食もの売上げを記録したとメディアが報じていた。ブームに乗って、全国各地で「たまごかけごはん専用醤油」も相次いで発売され、その数は優に50種を超えるといわれている。

たまごかけごはんブームは現在も続いており、専用醤油もさらに銘柄を増す中、丸美屋のチャレンジは、その専用醤油をふりかけで代替させようというものだった。同社ホームページの商品説明によれば、<醤油のかわりにまぜるだけ!>という使用方法が紹介され、明らかに「醤油ではなくふりかけで味付けを」という提案である。

今回の「納豆ご飯専用ふりかけ」は、先の「たまごかけごはん専用」の延長線上にあるかといえば、実は微妙に違う気がする。ビミョ~に。

丸美屋はふりかけ屋だ。(・・・と言い切ってしまっては他の商材もあるので失礼だが、一消費者として考えると、そう見えてしまう)。
白いご飯という大地が広がっていなければ、ふりかけの入り込む余地はない。たまごかけご飯がブームになった時には肝を冷やしたに違いない。何しろ、多くの人が、ふりかけではなく生玉子で白いご飯を覆い尽くしはじめたのだから。
しかし、幸いなことに前述の通り、ブームは専用醤油なるものを生み出すに至った。「醤油をふりかけで代替させる」というアイディアを思いつくのに時間がかかったのか、開発が大変だったのか、ブームから4年目にして発売された、「たまごかけごはん専用ふりかけ」は遅すぎるくらいである。

しかし、今度の「納豆ご飯専用ふりかけ」は先行商品の代替ではない。筆者は「納豆には醤油派」なのだが、多くの人は納豆に付属した専用タレを使用する。付属ではない専用タレも発売されているが、ごく少数しかない現状である。
つまり、「タダで付いているものを使わずに、明らかにコストがかかるものを使用させる」という、需要創造をしなくてはいけないのが今回のチャレンジなのだ。既にたまごかけご飯がブーム化しており、さらに先行して専用醤油が数多く発売されている状況と、納豆ご飯は状況が違う。
しかし、同社があえてチャレンジするのは、もうしばらくは続くと思われる不景気の影響で、食卓ではたまごかけや、納豆、ふりかけなどが多く使われるという商機を活かしたかったのであろう。たまごかけには対応した。あとは、納豆に奪われた白いご飯を、納豆の中に入り込むことによって、自社のビジネスの場としようという同社の執念を感じる。その執念は、プラスαのコストを消費者に納得させることができるだろうか。

有望な市場ではある。6月にアイシェアが行ったインターネット調査<食べて満足!ご飯の友ランキング http://release.center.jp/2009/06/1002.html >によると、ご飯にかける好きなものとして、複数回答で<トップは「海苔」60.4%、2位は「納豆」59.7%、3位は「明太子」55.6%。次いで「生卵」が54.3%、「ふりかけ」が52.8%>という結果である。
ふりかけを上回る人気の納豆にうまく用いられれば、「白いご飯制覇シェア」はますます上昇するのである。

今回は、ブームに乗るのではなく、需要創造し、自らブームを創り出そうとする同社のチャレンジ。温かく見守りたい。・・・というより、発売されたらすぐに食べてみよう!と思う。
発売の8月20日までまだ1ヶ月以上あるが。

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July 08, 2009

品質のこだわりと柔軟な店舗展開を進めるユニクロの未来

※今回はインタビューに回答する形式で「ユニクロのヒミツ」を語ってみました。インタビュー&構成はライターの原 勝也 氏にお願いしました。
 尚、今回の記事はライターの著作権に配慮するため、他メディアへの転載はご遠慮させていただきます。

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成長を遂げ続けるユニクロのこれまでの流れ、これからの動きをどう考えればいいか。金森マーケティング事務所取締役社長であり、屈指のユニクロウオッチャーの金森努さんにインタビューしてみた。

ユニクロは「規模の経済」である

 ユニクロは、かつてカラーヴァリエーション豊富なフリースをヒットさせた企業というイメージはあっても、どうしてここまで成長できたのか、よくわからないという人も多いと思います。

金森 ユニクロのフリースはカラフルというイメージがありますが、最初からカラーヴァリエーションがあったわけではありません。成功へのステップはもっと以前からありました。バブル崩壊後、アパレル関連の売上げが平均30%減だった中、ユニクロはロードサイド店を中心に出店攻勢をかけ、1996年に一部上場を果たしています。フリースのヒットではなく、ロードサイド店の積み上げで成長していった企業なんです。理由はSPA(製造小売業)でした。SPAによって「安いけれど、品質が良い」というスタンスで、当時の他のロードサイド店よりも人気を集めた。現在もそうですが、ユニクロの凄いところは「品質へのこだわり」です。アパレル業界だと通常は抜き取り検査なんですが、ユニクロは全品検査をしていると聞いています。某大手アパレル業者から「品質だけでは、もう大手企業はユニクロに勝てない」と言われるほど、品質にこだわっています。そして98年、原宿店出店によってフリースブームが起こります。
 ユニクロの特徴は「規模の経済」なんです。それは現在も変わっていない。この点、ユニクロはノンセックス、ノンエイジ、さらに当時はファッション性を追求するのではなく着る人が組み合わせて考えてくださいというアイテムだった。規模化もしやすかったわけです。

「まとめ買い」から「ついで買い」への変化

 2000年からフリースのカラーヴァリエーションが話題となり、安くて、品質が良くて、シンプルなデザインというのがユニクロだった。これ以降の流れはどのようなものだったんでしょうか。

金森 基本的にはブランド力をいかに高めるかということでしょう。ただし、新しい動きも出てきました。ユニクロはロードサイドを中心に展開をしてきましたが、2000年前半から「駅ナカユニクロ」というような小規模店が目立つようになってきた。車で店に向かって「まとめ買い」をするものだったユニクロは、近くに行ったついでに買うという「ついで買い」のショップに変化しつつある。さらに銀座店などの都市型店舗が増加したことで消費者との距離感が大きく変わりました。消費者との接点を増やし、都市型あるいは小規模店を増加させた。「まとめ買い」から「ついで買い」へと進化したと考えられます。

 一方、ユニクロは「大型店化」へと進んでいます。都市型にも数坪の小規模店と銀座店、新宿店のような大型店があるのはなぜでしょうか。

金森 もともとユニクロは規模の経済であり、規模を拡大する必要があるわけです。「規模の経済」というキーワードでいえばブラトップも一例ですね。去年300万枚を売上げて、今年は900万枚を日本中心に販売しようとしている。日本の16歳から50歳まで、約2.5人にひとりの女性をターゲットにしている。とてつもないことですよね。多く売るためにも消費者と接触し、多く集客する必要がある。接触率の上がる都市型店舗の「ついで買い」が有力。ただし「まとめ買い」がなくなったわけじゃありません。事実、カラーヴァリエーションも増えています。つまり商圏を広げ、品揃えを見せるためにも大型化がどうしても必要。だから「都市型」店舗が自然と大型化していくケースも多いはずです。

「ファッション性」を獲得するユニクロ

 銀座店のように、最初に出店してフロアの増床をするというようなタイプですね。今後も登場していきそうですか。

金森 そう思います。銀座店の成功を考えると、もうひとつユニクロに大きな動きがあります。それは「ファッション性」。安さ、品質、機能性を持ち合わせユニクロが次に欲しいのは「ファッション性」です。これはジル・サンダー氏との契約につながってきます。ジル・サンダー氏はユニクロのデザインに関して全アイテムをチェックするとも言っていますし、ユニクロ価格でジル・サンダー氏のデザインした服を着ることができるという。これもすごいことですね。H&M、FOREVER21などのファストファッションブランドの日本展開に対抗する意識もあるのでしょう。

 ただ、ユニクロは出店も多いですが、閉店も多い。これからはどのようなタイプのショップが閉まっていくのでしょうか?

金森 ロードサイド店がどんどん減っていくと予測します。ファッション性を獲得しつつあるユニクロにとって、ロードサイド店を維持することに積極的になる必要性をあまり感じません。コアターゲットである20~50代の車離れが少しずつ進んでいることも要因です。逆に都市型店が増加するでしょう。駅ナカタイプの小規模店は、都市交通を利用するかたちでの集客を狙うことになります。都市部では大規模店の補完的な役割で小規模店が点在することになるでしょうね。消費者との密着度を高めるための戦略として。

 以前、マクドナルドが、サテライトショップとして大規模店の周囲に小さな店を次々とオープンさせた時期がありました。あれに近い戦略でしょうか。

金森 ミニマックですね。それに近いと思います。生活密着度を上げるために大規模店と小規模店をうまく同エリアの中に混在させる。ただしこれまでのロードサイド量販店とは大きくノウハウが異なるはずです。小規模店はユーザーがどのような品揃えを好み、何をどのような手に取ったかを細かく観察しなくてはいけない。これまでのロードサイド店にはない接客ノウハウです。それをいまユニクロは獲得しつつある。

 金森さんのお話を聞いてよくわかったのは「ユニクロでは店長の裁量権が大きい」と言われている点です。顧客密着度を増すためには、ショップごとに対応していかなければいけない。どうしても店長の権限を大きくしなければいけなくなるわけですね。では、最後にユニクロの弱点を敢えてあげるとすると?

金森 弱点が見当たらないんですよ(笑)。ユニクロとジーユーとの差別化としての値上げをどのようにするのか、ですね。近いうちにユニクロは値上げをすると思います。ユニクロの母体であるファーストリテイリング株式会社柳井会長は「ユニクロはナショナルブランドの商品と比べても品質は高いが、最低価格では提供できない。まあまあの品質で低価格のものを求める人はジーユーでお願いしたい」と言っています。つまり、ある程度の価格で高品質な商品ならユニクロ、品質はユニクロほどではないけれど価格が安いものはジーユー、という位置づけをファーストリテイリングは考えていると思います。ふたつのブランドの差別化の意味でも、ユニクロの値上の可能性は大きいと思います。
 いずれにしても、ユニクロの大きな強みは、品質へのこだわりを常に持っていること、同時に店舗展開を含めて、変わるべきところはどんどん変えるという柔軟性を兼ね備えている点。本当に顧客ニーズの変化を良く見ていると思います。ファッション性を獲得し、安くて、品質が良いとなると無敵ですよね。

 確かにそうですね。今日はありがとうございました。

2009/6月青山学院大学構内にて取材。
インタビュー&構成、原 勝也

「無断転載拒否」
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July 07, 2009

ちょっとお得な「生茶」の新製品。その狙いは?

おっと、今度の生茶はちょっとお得な555ml入り。消費者としてはうれしい限りだが、その太っ腹の意図はなんだろうか?

7月16日発売予定のキリンビバレッジ「キリン やわらか生茶」は、<カフェイン50%オフ(2009年「生茶」比)ですっきり飲みやすい>という。そしてうれしい容量は、<暑くてたくさん飲みたくなる夏ならではのご提案として、555ml増量ボトルを採用>なのだ。味わいは生茶特有の緑茶の甘みを、低温抽出法でさらに強化している。
(ニュースリリース:http://www.beverage.co.jp/company/news/page/news2009061102.html

製品(Product)は上記の通り、スッキリとした甘みの緑茶で、カフェイン抑えめ。容量は通常より11%増量。
価格(Price)は通常通りの税別140円。コンビニでの店頭価格は税込みの147円。
販路(Place)は自動販売機でも販売するであろうが、ペットボトルを専用の凝った造りにしていることから、コンビニエンスストアの店頭で目立つことを狙っていると思われる。
販促(Promotion)はまだ目立った動きはないが、生茶ブランド全体で最近また強化している「生茶パンダ先生」の展開が予想される。

飲料全体と緑茶飲料カテゴリーのトレンドは、ここ1~2年、ゼロカロリー炭酸飲料ブームに押されて緑茶カテゴリーが失速している。しかし、季節要因を考えると、夏、特に気温が30度以上に上昇する真夏日が何日か続き出すと、甘みの強い飲料よりも茶系飲料やミネラルウォーターの売れ行きが増す傾向が顕著だ。つまり、7月中旬からが緑茶カテゴリーが盛り返すチャンスなのだ。
しかし、緑茶カテゴリーの最近のトレンドは「濃いめ」だ。カテキンの含有量を上げるため、特保を取得していない製品もこぞって高濃度製品を展開している。確かにカテキンはカラダにいいらしいし、独特の渋みも悪くない。だが、ゴクゴク飲むにはちょっとツライ。また、ゴクゴクたくさん飲んだら、さすがにカフェインも気になる。

その点、「やわらか生茶」のターゲティングとポジショニングは絶妙だ。暑い夏に「ゴクゴク飲みたい」ターゲットに対して、スッキリ甘くて低カフェインでカラダにもやさしい緑茶飲料を、お得な増量パッケージで提供するのだ。
コンビニでもこの展開は優位に働く。新製品は棚を取りやすく、さらにお得な増量パッケージとなれば、バイヤーや店主の発注量もついつい増えて、もう1~2フェース多めに棚を確保できるかもしれない。

ライバルの動きを牽制することもできる。緑茶カテゴリーは伊藤園の「おーいお茶」、キリンの「生茶」、サントリーの「伊右衛門」が3強で全体の6割のシェアを確保しているといわれている。そこに日本コカ・コーラが「綾鷹」で切り込んできた。
2007年にちょっと容量少なめの425mlで、価格ちょっと高めの157円というプレミアム緑茶として上市された商品である。しかし、世の低価格志向の高まりを受けて、日本コカ・コーラは今年5月に500ml、150円(税込み)の通常の飲料の価格と仕様に中味はそのままに引き下げてきた。自社の抱える「一(はじめ)茶織」とカニバリ(喰い合い)になるのを覚悟で、「高級本格派・緑茶飲料を手軽に買える」という戦略に出たのだ。

そんな「綾鷹」の戦略に対して、「夏は本格派より、スッキリ甘くてたくさんゴクゴク飲める方がいいでしょ!」という、「やわらか生茶」の戦い方は非常にシンプルだ。また、「綾鷹」は凝った造りのペットボトルを高級な中味を低価格で提供するためにが断念したが、「やわらか生茶」のボトルデザインはかなり店頭アピール力がある。昨今、ボトルのデザインは各社しのぎを削っているところだ。

「おっと、お得な増量パック」は単なる太っ腹の増量ではない。世の中の流れや業界の競争環境、そして何より消費者ニーズをしかりと深読みした結果の展開であるのだ。

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July 06, 2009

さらにパワーアップ!『マックスコーヒーV』の狙いはなんだ?

なんと、「バニラ風味&ビタミン配合」である。練乳100%使用。「マジ ハンパなく バリ 甘い」とのコピーを引っ提げ、今年2月、発売以来33年ぶりに全国販売を開始した「マックスコーヒー」の新作だ。今度はどんな狙いが隠されているのか。

千葉・茨城県民のソウルドリンクともいうべき「マックスコーヒー」は利根コカ・コーラが独自開発し、後に日本コカ・コーラの「ジョージア」ブランドに組み込まれたもの。
(全国販売の経緯は過去の記事参照→ 「マックスコーヒー」33年目の全国侵攻・その勝機

マックスコーヒーの公式サイト( http://www.georgia.jp/max/ )では、以下のように製品を紹介している。
<[特徴]元気を補給してくれる、やみつきになるうまい甘さ。[成分]コーヒー+練乳 その他[原産]利根>

マックスコーヒーの超絶的な甘さに惹かれてヤミツキになっているコアなファンは多い。そのファンの声を同サイトが紹介しているが、多くが「疲れた時にこの甘さがいい」「甘さにホッとする」などの意見が多い。見事に、「疲れを癒して元気にしてくれる」というポジショニングを獲得しているといっていいだろう。

その商品にバニラ風味が添加され、ビタミンが配合されたという。それは何を狙っているのか。新製品のコピーは以下のようなものだ。
<ビタミン入りで バニラ味で ヤル気スイッチ入りMAX V!>

東京ウォーカーの同製品紹介( http://news.walkerplus.com/2009/0705/8/ )によれば、ジョージアの担当者が「何かをはじめる時に飲みたいチャージ飲料」というポジショニングを紹介している。
このポジショニングをオケージョン(occasion)という概念で考えると、新製品の狙いが見えてくる。
基本のマックスコーヒーが、何かをやった後、「疲れを癒し、元気にしてくれる」というポジションなのに対し、マックスコーヒーVは、「これからいっちょ、やったるか!」的な、何かをはじめる前に気合いと元気をくれるというポジションだ。明らかに別のオケージョンを狙っている。

「朝専用」などとして、1日のはじめに飲ませるというのは、缶コーヒーの常套手段だ。その意味では、マックスコーヒーもその定石にしたがったといっていいだろう。しかし、マックスコーヒーの場合、その意味合いはさらに重要だ。

同製品の中核価値である、超絶的な甘さは、恐ろしいほどのカロリーを伴っている。平均的な缶コーヒーの1.5倍だという。そのカロリーを摂取し続けるのを厭わない層は、カロリーが気にならないスレンダーなすてきなボディーをもった人々か、もはや、「メタボだなんだとか、関係ねー!」と反動的需要に走っているそうだといえるだろう。確かにコアなファンは抱えている。しかし、世の中の流れから考えて、その拡大はあまり望めない。

ターゲットを拡大できないとなると、ターゲットの購入機会を増やすしかない。そこで、「元気の補給」や「事後の癒し」というオケージョンに加えて、「これから気合いを入れる」というオケージョンに注目し、新製品を開発したわけだ。つまり、明らかに既存ユーザーへのアップセリング(買い増し)狙いである。

マーケティングのフレームワークは一見、MECE(モレなくダブリなく)になっているようで、実はそうなっていない。具体的な施策を検討する、マーケティング・ミックスの4Pには、時間の概念やオケージョンといった概念が含まれていないのだ。故に、実際の展開を考える際には、フレームワークに含まれない要素を見つけ、考慮することが求められる。
マックスコーヒーの新製品は、その一つの好例といっていいだろう。

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July 02, 2009

これも王者の生きる道・花王「スタイルフィット」のリニューアル

6月15日にリニューアル発売された花王の「スタイルフィット」。液体洗剤&柔軟仕上げ剤だ。その競争戦略を読み解いてみよう。

「シワなくキレイ 香りもキレイ」。リニューアル前から訴求ポイントは概ね一貫している。ターゲットは「しっかりママ」だったか。
旧CMでは、働きながら、小さな子供を育て、夜はご主人を洗濯を済ませて軽い運動をしながら待つという、若いしっかりママが描かれている。演じるは自らも結婚4年目・2歳児の母である渡辺満里奈だった。

リニューアルにおいて大きく変わったのは、CMがとにかく賑やかで派手になったこと。
BGMは東京スカパラダイスオーケストラ。キャラクターは、しっかりママ代表・渡辺満里奈に加えて、ステキな奥様代表・真木明子(真木蔵人夫人)、カワイイギャル代表(?)・柳原可奈子と強化体制を組み、若年層に引き下げている。
CMは「私スタイルで洗おう」をテーマとして、キャラクター3人の洗濯の様子と洗濯後の様子を伝えているが、共通のコピーでは「香りと肌触りこだわってますから」「シワなくキレイ 香りもキレイ」と、「香り」を強調していることがわかる。香りはベルガモット、ローズ、フランキンセンス。<リラックス効果の知られる3つのアロマエッセンスを配合>したという。
製品の特徴としては、製品パッケージが全面リニューアルされている。いかにも「洗剤!」という顔つきのパッケージがオシャレに大変身。<化粧品などの有名ブランドを手がけるフランスのデザイン事務所とのコラボレーション>だという。(同社ホームページより)。

さて、ターゲット年齢を微妙に引き下げて、「香り」を強調。さらにオシャレなパッケージに変身させた意図はどこにあるのだろうか。

「ダウニー」。
売り切れ続出のアメリカ製の柔軟仕上げ剤だ。ダウニーは、アメリカンな強烈な香りが乾いたあとも残り、乙女な香りが女子の間で話題になっている。楽天市場の売れ筋ランキングではトップ10に入っている。
日本ではこの「嫌になるほど残る香り」の商品は今までなかったが、そのインパクトで売れまくっているのだ。アメリカンな香りといえば少々ビビルものはあるが、ダウニーには全11種類の香りがあるという。その中から好みの香りを見つけ出すクチコミも人気に一役かっている。さらにクチコミ人気は女子中高生をから、奥様、ママ層にも拡大している。

さて、花王はこの「ダウニー人気」をゴッソリ奪い取るために、スタイルフィットをリニューアルさせたのだろうか。確かにリーダーの戦略の定石は、「同質化」。下位のポジションにある企業やブランドの商品で成功しているものを見つけ、優れた開発力によって同等の商品を作り上げ、強大な営業力によってチャネルにくまなく送り出して市場を席巻。競合商品を市場から閉め出す戦略である。
だとすると、「ダウニー危うし」なのか。「ダウニー、にげてー」。

と、実は筆者は思っていない。
ダウニーが開いた強烈な香りの残る柔軟仕上げ剤というポジション。強力な支持層を作りはしたものの、今までの「さわやかに香る」「ほのかに香る」ぐらいの日本の仕上げ剤に慣れた消費者の多くは一気に移行はできない。
スタイルフィットの<リラックス効果の知られる3つのアロマエッセンス>ぐらいが落ち着く人は多いはずだ。
さらに、ダウニーのパッケージを見るとそのインパクトに驚く。とにかくサイズがデカイ。一体どんだけ使えるんだという、4リッター入り。そのラベルにはカワイイ白人の女の子が描かれている。いかにもアメリカン。
それに対して、スタイルフィットは<フランスのデザイン事務所とのコラボレーション>と、いかにも上品なヨーロピアーンな雰囲気を醸し出す。

アメリカンで大人気のダウニー。しかし、それが気になりながら、一歩踏み出せない人々が実はいっぱいいる。花王はそれに気付いたのだろう。
ダウニートうべく、「激しく香る」製品を出すより、その一歩手前で止めて、お上品路線でより多くのユーザーを獲得するという、微妙な棲み分け作戦だ。
市場の中で最強だったり、競合をことごとくねじ伏せるだけがリーダーの戦いではないと、スタイルフィットの巧みなリニューアル戦略から学ばせてもらった。

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July 01, 2009

「スキマなし」。マクドナルドのプロモーション戦略

※ニフティー・ココログの障害のため、6月30日は表示できない時間帯があったり、更新ができなかったりと、ご迷惑をおかけいたしました。

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「マックでDS」を開始し、期間限定で「日本バラ色計画」を展開。これらのプロモーションには、全く「空白を作らない」というマクドナルドの狙いが隠されている。そして、売上げ・利益を確保するには、客数を増し、客単価を上げ、来店頻度を高めることが基本の「き」であるが、マクドナルドのプロモーションはそれがカッチリと励行されているのである。


■昼下がりの風景

不景気でファストフードが活況だ。マクドナルドはとりわけ快走中である。その店内を昼下がりにのぞいてみると、100円メニュー、120円メニューを組み合わせて食べたり、テイクアウトしているランチ価格抑制派の姿がずいぶんと目に付く。この人々が、マクドナルドの快進撃の一翼を担っているのは間違いない。しかし、低価格ランチ客のみではダメなのだ。もっと幅広い客層を確保し、さらに、その客がたまにではなく頻繁にきてくれるようでなくては。なぜなら、この顧客層は何もしなくても来店してくれる代わりに、客単価が低い層だから。
かつてマクドナルドは価格破壊によって「デフレ時代の勝ち組」と言われたが、その後ブランドイメージの低下と収益性の悪化で長く苦しんだ。その経験から、低単価・低収益メニューと高単価・高収益メニューのバランスを取る、マージンミックスに最も慎重になっているのだ。


■「マックでDS」http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2009/promotion/promo0615.html

そんなターゲットの一つが親子連れだ。<無線通信装置を使い、市販ゲームのキャラクターの配信、スタンプラリー、市販DSソフトの体験版配信>
継続的なプロモーションであるが、6月19日から7月17日の期間第一弾は、DSのポケモンソフトを持参すれば、オリジナルキャラクターである、幻のポケモン「ジラーチ」の配信が受けられる。さらに<来店するごとに自分のDSへキャラクターが貯まっていきます>という、スタンプラリーも開催だ。
DSやポケモンにはまっている子供を持つ世帯は多い。たぶん大変な騒ぎだろう。「ジラーチもらいに行こう!」「またマクドに行って、キャラクターをもらおう!」と来店頻度が高まったこと、必定ではないだろうか。
お昼ご飯を作るのがちょっ面倒なお母さんは子供に促され「まぁ、しかたないわね」と。お父さんも一緒の時は、手軽で安価なレジャーとして「じゃぁ行こうか」と子供の利害とも一致する。家族2人~3人という高頻度の来店客確保ができるわけだ。


■「日本バラ色計画」http://www.mcdonalds.co.jp/quarter-pounder/

<“バラ色でいくぜ”という「BIG MOUTH!」を掲げ「クォーターパウンダー」を食べて、不況で暗くなっているニッポンを明るく幸せな“バラ色”に塗り替えていこうという計画>だという。
まぁ、平たくいえば、「クォーターパウンダーを食べましょう」と言っているだけなのだが、その持って回ったやり方が出色だ。
まずはオープニングイベントで、人気モデルの益若つばさとタレントの桃華絵里が登場。「バラ色缶バッチ」と「バラ色Tシャツ」を披露。さらに安室奈美恵を起用した超クールなCM・バラ色でいくぜ宣言「VS.」篇を展開。明らかに女子狙い。
高価格メニューであるクォーターパウンダーは、低価格メニューの利益率を補完するマージンミックスの要だ。しかし、メイン購買層は20代男性、サブが30~40代の男性。確かに女子には手を出しにくいボリュームを感じさせる。そこでこの、バラ色だ。
「バラ色Tシャツ、って本当にこんなの着られるの?」と大人の男性から見ればちょっと躊躇しそうなデザインだが、そこは夏を迎えるこの季節。クォーターパウンダーにノリで手を出す若い女性、主に学生の心理を突いているといっていい。
部活に、夏フェス、海に山に、花火に祭りになんやかんや。そんな楽しい夏の日々に着用すれば仲間内でウケること間違いない。さらに、シャツが欲しくて、食べまくるほどに貰えるバッチ。かばんに無数についたピンクのバッチもまた、ウケる。「なにそれ。あんた食い過ぎだよ!」というコミュニケーションも設計されているように思える。
黙っていても食べてくれる男性層はおいておいて、クォーターパウンダーにハマッてくれそうな元気な女子のハートをつかむ戦略が「バラ色」なのだ。無論、その女子につられて一緒に食べる男子の取り込みも狙っているのは間違いないが。


■次はどう来る?

「マックでDS」の第1弾であるポケモンのキャンペーンは7月17日。「日本バラ色計画」のバラ色Tのキャンペーンも7月16日まで。夏休み本番にはさらなるキャンペーンが用意されているのは想像に難くない。
手堅い支持層の低価格ランチ客とガッツリ食べたい男性客。それに、あしげく通ってくれる親子と、ノリでガッツリ食べてくれる女子を取り込んで、次はどこに行くのか。
夏休みに学生の利用は黙っていても増えるだろう。だとすれば、狙いは他の層。暑い夏場にちょっとあっさりヘルシーなメニューで、ガッツリ食べないお姉さん女子を狙うか、はたまた、暑さに負けるなと、ちょっと年齢の高い層に「土用のマクド」でも仕掛けるか。キッチリと白地を埋めていくマクドナルドのプロモーション戦略にも目が離せない。

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June 29, 2009

「カルピス」~変えてはいけないもの、変えるべきもの:定番のヒミツ第13回

日本実業出版社の季刊誌「ザッツ営業」好評発売中です。

ザッツ営業 http://www.njh.co.jp/that/that.html

同誌に連載中のコラム「定番のヒミツ」第13回が掲載されています。

・・・が! 残念なことに「ザッツ営業」誌は今号で休刊とのこと。
「定番のヒミツ」も最終回となってしまいました。
季刊で13回なので、3年ちょっとの連載でしたが、もっとロングランにしたかったのです。
奇しくも90年間という超ロングセラー商品が、最後に紹介する定番商品となりました。

以下、記事転載。

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 世の中には常に売れ続ける「定番」と呼ばれるものがある。なぜ定番は売れ続けることができるのか。当連載はその謎をマーケティングのセオリーから考察する。

『 「カルピス」~変えてはいけないもの、変えるべきもの 』


 今年で90周年だという。日本初の乳酸菌飲料として生まれたカルピスは、まぎれもなく国民的飲料だ。「おいしくて、からだにも良く、安心して飲め、経済的であること」。創業者の思いを受け継ぎ、90年間を過ごしてきた製品である。
 製品の源となる乳酸菌と酵母菌からなる「カルピス菌」で脱脂乳を発酵させて作った、「カルピス酸乳」。それが、製品の甘酸っぱさの秘密であり、製法も90年間変わらないという。その甘酸っぱい味を一度も口にしたことのない人は、恐らくいないはずだ。
 しかし、口にする形態は実に様々になっている。
 カルピスの原液は非常に高濃度だ。通常は2.5~5倍程度に希釈する。濃いゆえ、腐敗しない特性が普及に大きく寄与した。冷蔵庫のない時代でも家庭で保存しやすいという、消費者のニーズに適合していたのである。
 しかし、高度成長期を経て豊かになった消費者は、いちいち希釈する手間を厭うようになった。冷蔵庫も各家庭に普及し保存の心配もない。何も手を打たなければ、カルピスは時代の波間に消えていったことだろう。
 カルピスは原液を炭酸で希釈し、缶飲料の形態にした「カルピスソーダ」を発売。乳酸炭酸飲料ブームの先駆けとなった。高度成長最後年、1973年のことだ。炭酸飲料とすることによって、子供を中心としたユーザーを若年層や大人にまで広げる効果もあった。
 「炭酸もいいけど、普通のカルピスを手軽に飲みたい」というユーザーニーズに応えるには、保存技術の開発が必要で時間がかかった。1991年、ついに「カルピスウォーター」を発売。大ヒットとなる。
 同年、味の素グループとなって、両社の飲料事業を統合した頃から、カルピスのバリエーション展開は加速する。味の素の得意なアミノ酸を使ってダイエット志向の消費者にゼロカロリータイプを提供。酒をたしなむ層には、カルピス味の低アルコール缶飲料を。さらには、血圧など健康を気遣う層にはカルピス酸乳の特性を活かした特保飲料まで開発し
た。沖縄ならゴーヤー、シークワサー、パイン。信州は林檎、北海道なら夕張メロン。各地のお土産需要にも対応し、ご当地カルピスも展開する。
 創業者の思いと製法を90年間継承し、様々な形に展開していったカルピス。変えてはいけない意志とこだわり。適合させるべき環境の変化と消費者ニーズ。
 90年の歴史から学ぶところは大きい。

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June 26, 2009

iidaの新機種「misora」こそ、真の次世代ケータイか?

au(KDDI)の夏モデルが出そろい広告も賑やかになった後で、KDDIの別ブランドiidaから第2弾の端末が発売された。

今年の春からau(KDDI)は明らかに戦略を二面作戦で展開をはじめた。その動きがこの夏、一層顕著になったといえる。
春モデルでは「auケータイでサプライズな日々を」。と、様々な機能を盛り込んだ携帯端末を投入した。夏モデルは「去年と違う夏」のコピーだ。充電用ソーラーパネルなどの目新しい機能を搭載した機種のほか、まるで携帯電話機能がオマケに付いているかのような、「電子ブック」や「ハイビジョンムービー」という機能特化した機種もある。確かに使われ方や使用目的は「去年と違う」ことになるだろう。

もう一方の動きが、今年の春から投入された別ブランドiidaである。ブランドの発表会において、小野寺社長が「機能競争は終わった」として「次の競争」として示したのがiidaである。
(関連記事:KDDI(au)の新ブランド「iida」。その先鋭的な狙いとは?

ところがどっこい、本体のauブランドは夏モデルが示すように、さらなる機能強化が図られているが、iidaにおいては、確かに機能ではない、その正反対の性格がさらに強められている。
最初に登場した「G9」はシャープな男性仕様と感じられたが、今度はシンプルでスマートな女性ターゲット仕様といったところだろうか。
<au、iidaブランドの第2弾「misora」を6月27日発売>
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20395610,00.htm

この「misora」はau(KDDI)のデザインプロジェクトを吸収したiidaブランドの真骨頂といえるだろう。<理屈抜きに手にしっくりとなじむ、触っていて気持ちのいいデザインにこだわった>との同社デザインプロデューサーのコメント通りの仕上がりだ。気持ちの良さへのこだわりは、カラーリングにも現れている。white、pink、blackのカラーは水と空を表わすといい、時間によって表情を変える空とそれを映し出した水面を表現しているようだ。
機能的に特筆すべきはメールのさりげない機能だ。<待ち受け画面から直接文字入力ができる「すぐ文字」機能を搭載>だという。
コミュニケションツールである携帯の中核たる価値の一つであるメールの機能を、コミュニケーションが取りたい時、すぐに入力ができるという実体の要素を付け加える。さらに「手にしっくりなじむ」という「持ちやすさ」は付随機能として考えられる。

製品の価値構造はこのように「中核」「実体」「付随機能」に分解して考えるとわかりやすい。本体のauケータイはもはや、「中核」とは関係ない「付随機能」をひたすら高める方向で走っている。一方、「misora」の価値は「付随機能」をも超えた、「気持ちの良さ」という価値を提供することを目指している。

どちらを選択するかは、ユーザーの価値観の問題であるが、au(KDDI)はauケータイ本体で他のキャリアと機能競争をする一方、全く異なる価値観を持ち込んで「次の競争」に向けて加速を高めている。
他のキャリアが「次の競争」へと追随するかわからないが、徐々にユーザーの支持は高まっていくように感じられる。

「ケータイ疲れ」なユーザー動向・携帯電話業界はどう動く?
以前、上記の記事で、高度複雑化した機能を追いかけるのに疲れ、携帯にいつでも縛られているかのような息苦しさと、高価格化した端末の費用負担をユーザーが感じていることを紹介した。
「気持ちの良さ」にこだわった「misora」はシンプルな機能に徹し、価格も2万円台前半だという。ターゲットの女性という枠を超えて多くの支持者を獲得できるのではないかと筆者は考えている。

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June 25, 2009

キリン「コクの時間」が仕掛けるガチンコ勝負

「あ、清冽!」。元フジテレビアナウンサー・内田恭子がCMでグラスを傾け一口飲んでつぶやくセリフだ。6月24日発売・キリン「コクの時間」。
同製品は全く新しい製法によって「コクの概念を変える全く新しいコク」を実現したという。同製品紹介のWebサイトによると<清涼感のあるホップの香りが、引き締まった後味を生み出し飲んだ瞬間に実感できる、新しいおいしさ>とある。「清冽」とは「水が清く冷たいこと(広辞苑より)」。つまり、引き締まったのどごしを端的に訴求する言葉なのだ。

この「コクの時間」は第3のビールという、いわゆる新ジャンルビール系飲料である。迎え撃つアサヒの第3のビールにおけるフラッグシップは「クリアアサヒ」。「クリア」というネーミングと「うまみだけ。雑味なし。」というコピーで製品の特性を訴求する。
「うまみだけ。雑味なし。」のアサヒ「クリアアサヒ」。それに対して、「コク」で「清冽」なキリン「コクの時間」。どう見てもガチンコ勝負である。

因縁浅からぬ両社ではあるが、キリンはアサヒになぜ、ガチンコ勝負を挑んだのか。
第3のビールには、麦芽を原料とする発泡酒にリキュールを加えた「リキュール(発泡性)」と、麦を使わず大豆たんぱく・えんどう・とうもろこしを原料とした「その他醸造酒(発泡性)」がある。キリンビールの第3のビールにおけるフラッグシップ「のどごし生」は後者である。
キリンビールの戦略の特徴は、この第3のビールの両カテゴリーに商品を配していることだ。ライバルのアサヒビールは選択と集中で、「リキュール(発泡性)」にのみ特化して製品を開発・販売している。
ビール系飲料は昨今、ビール、発泡酒カテゴリーとも売上げの減少が止まらず、低廉な第3のビールカテゴリーのみ成長が続いている状況だ。しかしその中でも「その他醸造酒(発泡性)」の成長が鈍化し、「リキュール(発泡性)」の成長が顕著になってきたのだ。ある意味、アサヒビールの戦略があたったといえる。しかし、キリンとて、そのまま指をくわえてみているわけにはいかない。かくして、ガチンコ勝負の戦端が開かれたというわけだ。

ガチンコ勝負ではあるが、キリンの戦略は勝負の「軸」を微妙にずらしていることが伺える。もはや苦くてもったりコッテリした昔の「コク」が受け入れられないのは明らかなので、「清冽」を訴求している。しかし、あくまで中心とした訴求ポイントは「コク」であり、パッケージに描かれた「麦」と新製法でさらに香りを高めたという「ホップ」なのである。対するアサヒは「クリア」とスッキリしたのどごしを中心に訴求する。
キリンには「のどごし生」がある。「その他醸造酒(発泡性)」は少なからず「コク」を求める層には薄味過ぎるが、「のどごし」好きは、そのスッキリ加減がいいという。
つまり、スッキリ好きは「のどごし生」でしっかり囲い込み、さらに「コク」を求める、ビールや発泡酒から低廉な第3のビールからの乗り換え層を取り込もうという戦略である。それは、「リキュール(発泡性)」「その他醸造酒(発泡性)」両カテゴリーを抱えるキリンだからこそできる二面戦略である。対するアサヒは「クリアアサヒ」の単発エンジンで迎撃しなければならない。

第3のビールという薄利で苦しい戦いカテゴリーが、唯一残された成長分野であり主戦場となった。低価格志向を高めながら価値を求め、さらには嗜好が多様化しているという、厄介な今日の消費者のハートを捕らえるのはキリンかアサヒか。その戦いの趨勢が両社の今後を占うように思えるのは筆者だけであろうか。

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June 24, 2009

「ペプシしそ」にはやられたぜ!

6月23日発売のシソ風味のコーラ、「ペプシしそ」。その味のほどを筆者は事前にペプシのマーケティング戦略から考察し予想していたのだが、果たしてその結果は・・・。

5月29日に公開した記事「「シソ風味ペプシ」の味を大胆予想する!」
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2009/05/post-e0e7.html

筆者の予想では、「ペプシしそ」はオイシイ!という味であった。まさに、ボトルのパッケージに書かれている「清涼感あふれる香り しその風味が爽やかなコーラ!」そのままの味わいを予想したのであった。

ペプシは毎年1~2回、「変わり種コーラ」を発売する。近年最も話題になったのは、一昨年夏の、キュウリ味の「ペプシペプシ アイスキューカンバー」。うす甘くて青臭い、はっきり言ってマズイ、衝撃的だ、などネット上では大きな話題を呼んだ。
ペプシがこのような商品を出すのは、ひとえに「リーダー」であるコカ・コーラに対する「チャレンジャー」だからだ。王道をいくリーダーと比較して「自分たちは違うんだ!」と差別化を市場にアピールすることが目的。故に、おいしさよりも話題になることが重要なのだ。

その意味では、昨年夏の「ペプシブルーハワイ」も期待を裏切らなかった。カクテルのブルーハワイを模した真っ青な色。パイナップル甘く、どこか苦みの残るようで、何となくドロリとした後味は、これまたオイシイというよりは衝撃的であった。
しかし、昨年冬に登場した「ペプシホワイト」は、乳性炭酸飲料の風情でフツーにおいしかった。コンビニでもかなりのフェイス数を確保し、長い期間販売されていた。

おいしくなった変わり種コーラの背景には、ペプシの大きな挑戦が隠されていると筆者は予想した。

「チャレンジャー企業は刮目せよ・サントリーの戦い方」
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2009/04/post-6b9d.html

3月31日に公開した上記にあるように、ペプシを発売するサントリーは、今年1月と3月にコーラ市場でリーダー企業の日本コカ・コーラを追撃し、シェア逆転を狙うという発表を行っていた。かなりアグレッシブな目標だが、リーダー企業にチャレンジする力がなければ、いずれはフォロアーのポジションに転落するのが市場のルール。さすがの展開だといえる。
その中で、オイシイ変わり種コーラであった、「ペプシホワイト」もペプシの売上げを底上げする尖兵として機能したのだとすれば、今回の「ペプシしそ」もおいしくなるハズだと予想したのだ。

・・・ハズレました。スミマセン。

目に鮮やかな、「アイスキューカンバー」を思い起こさせる緑の液体を、グラスに注いでみると、確かにしその香り。一口飲んでみると、少し甘さ控えめの味わいに、しその香りが口腔から鼻腔に充満する。
しかし、甘さと香りがどうにもマッチしない。「青じその砂糖漬け」というモノがあれば、恐らくこんな味なのではないかという想像力がかき立てられるも、500ml飲みきることができなかった。「キューカンバー」以来の衝撃であった。

予想が外れた言い訳ではないが、再び変わり種コーラが「衝撃の味路線」となった背景が見える記事を見つけた。

<【ブログトレンドウォッチ】多様化する味、コーラ商戦の行方は?>(livedoorニュース:提供・kizasiジャーナル)
http://news.livedoor.com/article/detail/4215022/

インターネット上の書き込みを分析すると、事前の話題は6月8日に日本コカ・コーラから発売されている、カテキン入りという、カラダにいいんだか悪いんだかわからない「コカ・コーラ プラス カテキン」の話題が上回っている。
もう一つ気になるのが、変わり種ペプシとしての話題性が、「アイスキューカンバー」以降、かなり低迷しているのがわかる。
話題に上りにくくなっており、しかも、挑戦すべきリーダーの日本コカ・コーラにまで話題をさらわれている。これはチャレンジャーとしては致命的な状況だ。

しかし、そんなことは分かっているといわんばかりに、サントリーのペプシは「ペプシしそ」を「衝撃の味」に仕上げてあった。
筆者もその一人であるが、一夜明けて、今日、ネット上に「ペプシしそ」の衝撃性を書き込む人間は多いだろう。筆者の予想は外れたが、サントリーの狙いはズバリ的中というところだ。
チャレンジャーがチャレンジャーらしいと、少し安心する。「ペプシしそ」を全部飲みきることはできなかったけれど。

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