東京から100Km弱の地域は昭和62年(1987年)を境に風景が一変した。世は金余りのバブル経済に沸いていた。総合保養地域整備法、通称リゾート法の制定によって地域は環境破壊の批判もどこ吹く風でゴルフクラブの開発が相次いだ。大量の雇用も産んだ。地域の主婦の多くがキャディーとして採用された。ゴルフ客の落とすカネで地域の経済も潤った。飲食などの直接的な消費によるものだけではない。現金収入が増えた地元住民。とりわけキャディーとなった主婦たちは、家の外に出て働くという意識から美容に金をかけるようになった。その恩恵を受けたのが美容サロンである。新規出店が相次いだ。しかし、出店を上回る需要が眠っていたために、数多くのサロンが大きなパイを分け合い、好景気をエンジョイしたのである。 バブル経済は1991年に崩壊した。実際にはそれに気付かずに踊っていた人も多かったため、「失われた20年」は1993年を基点としているが、ともかく祭りは終わったのだ。一時は高騰したゴルフ会員権も値を大きく下げ、破綻するゴルフクラブも相次いだ。キャディーたちを顧客としていた美容サロンは顧客の来店頻度の低下にあえいだ。収入がなくなった、もしくは減った主婦たちが財布のひもを絞ったのだ。パーマにヘアカラーなどをやめて、カットのみにするという客も増え、客単価も低下した。 その後、生き残ったゴルフクラブを見ると、キャディーたちの...
ホームレスの自立支援の雑誌「BigIssue」。その売り子を有楽町駅前でやっているおじさんと知り合ってから、もう2年ぐらいになる。彼との何気ない会話からいろいろなコトを学ばせてもらったが、また少し発見があったのでご紹介したい。 今までの経緯は↓のとおり。 http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2011/10/post-9606.html ■戻ってきた出張族 彼にとってうれしいお客は、一度に複数冊まとめ買いしてくれる客だ。それはなにも同じ雑誌を大量に買うのではなく、久々にやってきてバックナンバーを半年分(12冊)とか買って帰る客だ。その多くは出張族だという。 以前はそうした人がそれなりにいて、売上のベースを構成していたが、震災以降ぱったりと途絶えてしまったとのことだった。それが戻ってきているという。彼の分析によれば、震災以降に広まった「直帰志向」は出張族にも顕著に表れ、用事が済んだら日帰り。もしくは元々日帰りの予定でもとにかく速い列車で帰るという傾向がしばらく続いていたのだという。それが、ルミネや阪急メンズ館のオープンなど街の変化にも後押しされ、再び有楽町に足を運ぶようになったのではないかという。 商売の基本はとにかく外部環境、顧客環境の変化をつかむことだ。おじさんはしっかりそれをやっている。その姿勢に学びたいものだ...
朝日新聞のサイト『ウェブ「広告月報」』に、今年のマーケティング展望を語ったインタビュー記事を掲載していただきました。 「2011年の生活者意識と企業活動は、震災前後で大きく変わったと思います」と話す、金森努氏。企業の事業戦略・マーケティング戦略の立案・実行や、マーケター育成を支援する同氏。様々な実践に携わる立場から、消費者の新しいニーズや企業の目指すべき方向性について語ってもらった。 続きはこちら↓ ■金森のインタビューページ→ http://adv.asahi.com/modules/feature/index.php/content0516.html 同サイトでは「スペシャルインタビュー」として同様のテーマで、クリエーティブディレクター 箭内道彦氏、電通 電通総研 ヒューマン・インサイト部長 四元正弘氏、谷山広告 クリエーティブディレクター/コピーライター 谷山雅計氏が同様のテーマで語っています。 ■トップページはこちら→ http://adv.asahi.com/
店内に椅子やベンチが異様にたくさん設置してある百貨店といえば・・・答えは、京王百貨店新宿店。ターゲットを高齢者に定めた施策の一環だ。その京王百貨店新宿店が大変身しようとしているという。 同店のターゲットの絞り込みとその展開は明確でスピーディーだった。2004年11月に創業40周年を迎える新宿店は、高齢社会に対応した改装や売場づくりを打ち出し、新宿店の5・7・8階の3フロアを高齢社会や中高年層の生活感変化などに対応した売り場に改装。商品構成を変更し、フロア構成も見直した。3フロアにわたる大規模改装は1989年、つまりバブル期以来の大改装だった。そして、新宿店は改装によって、中高年顧客を主要ターゲットとしてきたポジショニングを一段と進化させ、競合環境の中でひときわ目立つ存在となったのだ。 顧客は歳を取る。いくら高齢者ターゲットで突出した存在となっても、徐々に寄る年波で来店回数を減らし、逝去する顧客も出てくる。囲い込み自体に意味がなくなる。そこで新方針を打ち出したのだ。 1月11日の日経MJインタビューコーナー「消費見所カン所」で、同社の林社長が「ポスト団塊世代をつかむ」というタイトルで語っている。「現在の団塊世代より上のシニア層から、団塊世代より若い消費者も開拓し顧客層の拡大を目指す」とある。団塊世代より下の層には、いわゆるバブル層が控えている。圧倒的なボリュームを持っていた団...
<GLOBIS.JP( http://www.globis.jp/ )の新春企画より転載します。> 大震災からの復興が一層進んでいく今年、2012年はどのような一年になるのだろうか。さまざまな環境変化や急速なグローバル化に直面する私たちの社会、世界は、どこへ向かうのか。GLOBIS.JP執筆陣が漢字一字でその方向性を示す。(このシリーズは3回連載です。書:編集部・藤井亜希子) 金森努(グロービス経営大学院客員准教授 連載「それゆけ!カナモリさん」著者) 緩 財団法人日本漢字能力検定協会が、その年の世相をあらわし毎年12月に発表している「今年の漢字」。2010年は「絆」だった。京都・清水寺の貫主が揮毫した実物を見たが、その墨文字は驚くほど太く黒々として力強かった。 昨年は3月11日の震災を機に、日本中がかつてないほど「絆」を意識・実感した年であった。太く黒々とした墨文字のように力強く。だが、張りつめた糸は太くともいつか緩んでいく。ともすると、時の流れは記憶を風化させる。2012年は「緩」の文字を見て、「気持ちは緩んでいないか」を内省しながら、「緩やかだが、よりしなやかな絆」を広めることに注力したい。 インターネット時代の「絆」の特徴は「緩やかで幅広い」ことだ。より多くの人が結びつき、少しでも自分のできることを自然体で探す。そんな思いを込めて、「今年の一字」を「緩」としたい...
本日は1つのチャートをご紹介したい。筆者オリジナルだが、1つ1つはありふれたフレームワークだ。大前研一がマッキンゼー時代に考案した「3C分析」。マイケル・ポーターが自動車会社のGMを研究して作り上げたVC(バリューチェーン)。大学やビジネススクールの基礎コースで習うものばかりである。 あえてここに取り上げたのは、フレームワークは事実関係を埋め込んで整理するためのツールではなく、「意味合い」(結論)を出さねば意味がないいということ。そしてそのためには、時に複数のフレームワークを連続して使わねばならないということを強調したかったからだ。 もちろん、はじめは1つ1つのフレームワークから意味合いを抽出することすら慣れるまでに時間がかかる。だが、その先、実務で活用するためにはどのような工夫が必要かを示したかった次第だ。 是非、ご活用あれ。
昨日の記事「サービスの価格と価値を再考する」では、端的に言えば一つの結論は「業界の中心的相場=中価値戦略に安穏としていることはできない」ということだ。そこは既に、W・チャン・キムの「ブルーオーシャン戦略」がいうところの、血みどろの戦いの場である「レッドオーシャン」になることが運命的になっている。サービス品質はそのままに、価格を下げて提供する「グッドバリュー戦略」に転換することが一般的だろう。しかし、固定比率の引き下げができなければ収益的に破綻を来すことになる。 では、どうするか。 その一つの形が写真の「頭専門マッサージ」だ。 マッサージ店は乱立し、近く過当競争に入るだろう。一部では「30分2000円」という店も増えている。大抵がビルの空中階(2階以上)に立地し、中国人などがサービスを提供している。地代家賃と人件費を抑制して損益分岐点を引き下げているのだ。しかし、それにも限界はある。 写真の店は京都で見つけた。四条烏丸と四条寺町の2店展開だという。「頭専門」というからには、精神的ストレスや眼精疲労などで凝り固まった頭をほぐしてくれる。サービスが終わるとパンパンに張ってた頭皮が緩んでいることに気付く。サービスを受ける姿勢もリラックスチェアで楽々である。で、気になるお値段だが、キレイに「10分ごと1000円」のメニューとなっている。「中価値戦略」を保っているのだ。 マイケル・...
本日からBlogを再開します。 昨年後半から業務多忙で更新頻度が落ちていましたが、今年は週3回の更新をめどに、息の長いBlogとなるよう頑張ります。 ちょっとイメージが伝わりにくいかもしれないが、「特殊技能を持った無名のスタッフが提供する、原材料比率が低いサービス業」という業種の大きな括りを定義してみる。具体的にいえば、理美容、ネイルアート、マッサージ、スポーツトレーナー等々だ。何らかのサービス提供の場(ハコ)は必要で一定の固定費は発生するが、サービスに要する原材料の費用は総じてゼロか低い。 では、それらの価格の相場はいくらかといえば、概ね「10分1000円」だ。最もわかりやすい例でいえば、低価格理髪チェーンとして有名な「QBハウス」。カットのみ。洗髪、ヒゲ剃り、セットなしで10分1000円。だが、同チェーンが理容業界で価格破壊を起こしているかといえば、実はそうではない。フルサービスの旧来の理髪店もサービス提供時間が40分程度で価格は4000円程度のはずだ。つまり、10分1000円。美容室もカットで60分6000円。パーマで90分9000円。10分1000円換算になるだろう。 理美容だけではない。ネイルアートもツメの形を整え、甘皮処理をし、表面を磨くという最も基本のコースだと40分4000円。マッサージは大手チェーン「てもみん」の価格がスタンダードとなってか、30分なら3...
あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願い致します。 2010年は大震災にも見舞われ大変な年でしたが、日本中が「絆」を意識した年だったといえるでしょう。NHKの紅白歌合戦では、司会者や出演者、審査員がこれでもかというほど、「絆」というキーワードを連呼して、少々お腹いっぱいの感もありましたが、今年も引き続き意識し続けるためにも、あれはあれで正しい発信だったといえると思います。 機会があって昨年末に京都・清水寺を訪れ、貫主が揮毫した「今年の漢字」である、「絆」という文字を観ました。太く力強く黒々と書かれた文字は、震災を風化させないための「アイコン」たり得る迫力を持っていました。 では、実際に今日の人と人とのコミュニケーションはどうかといえば、例えばFacebook。何年も会っていない人を発見しネットを介してつながりが復活したり、実際に対面する以上にコミュニケーション頻度が高まったり、実際には面識の薄い人と深く知り合ったりという現象が起きています。「遠くのリアル友より、近くのFacebook」というところでしょうか。 Facebookの特徴は、そのレスポンスと伝播の速さにあるといえるでしょう。例えば昨夜アップしたスカイツリーの写真には、ちょうど「あけおめ」タイムだったことも手伝ってか、100件近い「いいね!」と10件ほどのコメントを寄せていただきました。 では、企業...
今回は住宅です。旭化成の「ヘーベルハウス」。 実は、金森の実家もヘーベルファミリーだったりします。 鉄骨と軽量気泡コンクリートパネル「ヘーベル」を建材に使用し、耐震性、耐火性に優れ、60年先まで快適に住み続けられる「ロングライフ住宅」を提供する「ヘーベルハウス」。1972年の創業以来、ライフスタイルの新風をいち早くとらえ、「二世帯住宅」という言葉を生み出すなど、画期的な間取りの提案を続けてきました。マーケティング本部 営業推進部課長の中村干城氏に聞きました。 <金森努のロングセラー商品の戦略を聞く!・第9回:旭化成「ヘーベルハウス」> ○記事はこちらから!→ http://adv.asahi.com/modules/long_seller/index.php/asahikasei_0.html
報道によれば、複合ビルのサンシャインシティ(東京・豊島)が運営する「サンシャイン水族館」が、リニューアルオープンした8月からの4ヶ月で100万人の入場者数を達成したという。その人気のヒミツはなんだろうか。 サンシャイン水族館は1978年に「サンシャイン国際水族館」として開業したが、設備の老朽化対応と魅力度向上のため、2010年9月から1年間の休業期間を設け30億円の費用をかけて全面改装したという。 リニューアル後の人気のヒミツは同館の館長の言葉に隠されている。「生き物に注目してもらう展示の工夫が誘因となっている」(日経MJより)とある。 水族館の中核的価値とはなんだろうか。普通に考えれば、「魚や海洋生物が見られること」だ。それを実現する実体価値が「館内設備」であり、中核の実現には直接関わらないが全体として魅力を高める要素としての付随機能が、「館内のアメニティー施設」などであろう。 動物園のリニューアル成功例として有名な旭山動物園(北海道旭川市)。動物の姿形を見せることに主眼を置いた従来の展示方法に対して、同園では1997年度から、動物本来の生態や能力を引き出して見せる「行動展示」に取り組んでいる。水中を空飛ぶように泳ぐペンギンを見渡せる水中トンネルや、ホッキョクグマと“獲物”の視点で対面できる透明カプセルなど、動物の自然な姿を間近で観察できる施設を次々と導入し、改良を重ね...
髪は美容サロンで切るけど、時々、理髪店でヒゲを剃ってもらう。ヒゲは毎朝自分で剃っているけど、人にやってもらうと気持ちがいいから。それが理由。気持ちがシャキッとして、少し気合いも入る。 ちょっと豆知識だけど、理美容業界の基本的なサービス料金(技術料)は稼働時間に比例していて、標準的には10分で1,000円。なので、実はQBハウスとか格安床屋は業界相場と合っているのだ。 私が時々ヒゲを剃ってもらうのは、15分で1,500円の店と、25分で2,500円の店。どちらを選ぶかは、混み具合を見て。あ、少しウソをつきました。懐具合も関係します・・・。 2,500円の店は「理髪職人」然としたオヤジが剃ってくれる。アゴの辺りのクセヒゲも皮膚をあっちに引っ張り、こっちに引っ張りして徹底的に丁寧にやってくれる。そしていつも終わるとひと言。「お客さんのヒゲは大変だよ」。 1,500円の店はイマドキの髪型をした若いお兄さんか、かわいいお姉さんが剃ってくれる。こちらはとにかく剃るのが早い早い。切れたらどうしよう。皮がむけたらどうしようと思うような、ちょっとしたスリルも味わえる。ナゼ、手早くやるのかと言えば、15分をフルにヒゲ剃りに使うのではなく、まゆ毛の手入れや鼻毛、耳毛(←ジジイ化しているのか、最近少しあります)切りや、少し崩れた髪の再セットまでやってくれる。その時間を稼いでいるのだと思う。 理容室は男性も...
映画館のスクリーン数が減っているという。(11月29日付日本経済新聞)スクリーン数はシネコンの台頭により増加を続けていたが、18年ぶりに減少に転じたという。原因は、スクリーン数5未満の一般の映画館の閉館が進む一方、シネコンの出店好立地がなくなってきたためだという。 では、映画館というビジネスのどこに問題があるのだろうか。4P的に考えてみよう。 ・ Product:メガヒット作はないものの邦画人気も高まり大きな問題とは考えられない ・Place:記事にあるように旧来の映画館の淘汰は顧客利便性の観点から考えて致し方ない。しかし、シネコンは映画の流通チャネルとして理想的だ。好立地が減ってるいという問題は否めないかもしれないが、集客という意味においてシネコンは映画館ビジネスの問題を劇的に改善させた。 ・ Promotion:テレビやOOH(屋外広告)連動など、プロモーション手法は高度化し集客に貢献していると思われる。 となると、残りひとつのP、Priceの問題が考えられる。しかし、一般1,800円。割引によっては1,000円。この価格妥当性を論じるよりも、映画館としての「売り上げ」や「利益」を考えた方が問題は見えてくるように思う。 問題の根本はスクリーン数を増やし続けるだけでなく、「稼働率」を向上させることにあるはずだ。新作の封切り直後や土曜日曜など以外の映画館のシートは、恐ろしい...
後発だったり、圧倒的に彼我の力に差があったりするとき、戦いはどのように展開されるべきなのだろうか。2つの事例から考えていこう。 11月25日付日経MJに紹介された、資生堂「スーパーマイルドシャンプー」のアプローチが面白い。狙っているポジションは「親子で使う家族のシャンプー」だ。しかし、「家族のシャンプー」というポジションには強力な先行ブランドがある。花王「メリットシャンプー」である。 メリットシャンプーが登場したのは1970年のこと。コマーシャルは女優の田中裕子が若い女性に向けてアピールしていた。しかし、それから四半世紀以上が経った今日、若い女性向けシャンプーは最新の成分を配合し、華やかな広告で訴求する新しい商品が目白押しだ。故に、その後は歴代有名タレント夫婦をCMキャラクターに起用し、「家族全員が健やかな髪と地肌で過ごせる」ということを訴えて、「家族のシャンプー」というポジションを確固たるものにしている。 メリットシャンプーにチャレンジャーとして戦いを挑んだのがスーパーマイルドシャンプーだ。同紙には「父と子の入浴を応援 資生堂“スーパーマイルド”で “風呂場遊び”カード配布」とタイトルにある。<育児期の父親と子どもの楽しい入浴を応援する「パパフロ」キャンペーン>を始めたとある。そのキャンペーンもなかなか大がかりだ。入浴中の遊びを提案する12種のカードを店頭で配布し、ワーク...
あなたがもし、担当商品の「売り上げを倍増させよ」と命じられたら、どうするだろうか?商品に新たな特徴を加える。価格を改定する。販路を拡大する。広告を増やす・・・。それらは全て4P(Product・Price・Place・Promotion)の一要素だ。それらを1つ、2つ思いつきでいじっても効果は出ない。 11月23日付日経MJのコラム「早耳遠耳」に青山商事社長のコメントが掲載された。 タイトルは「少子化でも若年層は魅力」。コメント内容によれば<「(若い世代向けの商品は)稼げる所だし、稼いでいかないといけない」>と、顧客生涯価値の高さという魅力を獲得すべく市場のパイは縮小するも重点ターゲットとする構えだ。 マクロ的に見れば、あまり時間はない。来年、2012年問題がやってくる。団塊の世代の大量定年による社内ナレッジの確保が問題になった2007年問題。多くの企業の解決策は根本的なものではなく、「5年間の定年延長。嘱託職員としての5年間再雇用」など、問題の先送りだった。そのいわば「社内職人からの借り物の時間」を返すべき時が来年やってくるのだ。完全リタイヤ。もうスーツは着ないだろう。ついでに日経新聞も読まなくなる。否が応でも若年層にフォーカスせざるを得ない。それが、社長コメントの底流にあるのである。 記事によれば、若年層ターゲットへの手は打っている。<今秋冬に「次世代スーツ」と称して...
トヨタの大ヒットCM「のび太のバーベキュー」篇。路線バスでバーベキューに出かけたのび太(妻夫木聡)はクルマで来たスネ夫(山下智久)に、しずかちゃん(水川あさみ)をあっさり連れ去られる。いつもの如く机の引き出しから登場したドラえもん(ジャン・レノ)に「クルマ出して~」と懇願するが、「ダメ、免許ないじゃん」と諫められる。CMのメッセージは「免許を取ろう」だ。 2011年11月22日付日本経済新聞の記事によれば、免許取得率は20代前半層は77.6%と4年で4.6%低下しているという。免許を取ってもクルマの購入にはハードルがある。ソニー損保が新成人1000人に実施したアンケートによれば、車を持たない理由として7割が「経済的余裕がない」と回答したという。 「若者のガム離れ」に対し、シェア6割のロッテはフィッツで「ガムの楽しさ」を訴求し復活した。しかし、低価格なガムと違ってクルマは「買いたくても買えない」 という現実がある。「若者のクルマ離れ」と揶揄する言葉が出ると、必ず若者側からは「離れているのではない、近づけないのだ!」と反対の論が起きる。机の引き出しから出てきたジャン・レノが、ドラえもんではなく不景気の元凶を探しだして、ぶち殺してくれるレオンだったらよかったのだが、コトはそんなにカンタンではない。 「楽しい」「便利」「カッコいい」でみんなが購入するのはもう無理で、クルマは嗜好品・...
2011年11月21日付日経MJ記事に「ジーバ、地域電器店向け蓄電池発売」という記事が掲載された。電気製品の企画・開発をするジーバ(東京・港)が発売した製品に関する内容だ。タイトルに「小型・低価格で量販店と一線」とある。その戦略の要諦はどこにあるのだろうか? 製品は容量150ワット時と小さいが、その分価格も49,800円と手軽に手を出せる設定である。そして、販路は同社が東京都電気商業組合(東京・文京)と組んで開発したこともあり、地域の家電販売店に絞っており、大手家電量販店では発売しない。地域密着型の家電店チャネルのいいところは、設置・メンテナンス・修理などを通して家庭に深く入り込んでいるところだ。 大手は店舗での販売→業者による配送・設置→メーカー(関連会社)による修理・メンテナンス対応とバリューチェーン(VC)の担い手が分断されている。多くの地域家電店は、店主・社員が顧客の家におもむき自ら対応する。販売・プロモーションも、いわゆる「人的販売」として行うが、蓄電池に関しては「高額・大容量」の製品には関心のない一般消費者に提案・説得するというプッシュセールスがかけられる。こうして考えると、大手との展開はターゲットと4Pの組み方が根本的に異なることがわかる。 記事によれば家電量販店が震災後にこぞって販売を始めた蓄電池は、価格は15万~180万円程度と高額で、ジーバの商品の150...
日清食品が11月28日に「日清のラーメン屋さん ちゃんぽん シーフード風味」を発売する。11月18日付日本経済新聞に掲載された記事によると、最大の特徴はタイトルが表している「レンジで楽チン 袋入り即席麺」。<丼に水と一緒に麺を入れ、500ワットの場合で7~8分加熱すれば完成する>という。この商品に込められた戦略意図は何だろうか。 読者の家に電気ポットや電気ケトルはあるだろうか。かつては一家に一台、アタリマエのようにあったが、もしそれがあれば昨今では少数派ということになる。インターネット調査のマイボイスコムの調べによると、「電気ポット」所有率は40.2%。「電気ケトル」所有率は19.0%だという。つまり、4割以上の家庭にお湯を沸かす専用調理器がないのだ。では、ヤカンや鍋で沸かすのかといえば、カップに水を入れてレンジでチンして沸かす派も多いのだという。 1989年、アーノルド・シュワルツネッガーが筋骨隆々とした肉体にヤカンを2つ持って体操を披露するカップヌードルのCMが一世を風靡した。それから20年。ヤカンやポットが家庭から消えている。使用調理器の変化はカップ麺の最大手・日清食品にとって由々しき自体である。それに対して、今年8月には「冷凍 日清 太麺堂々 辛味噌ラーメン」を発売したが、実はレンジ対応食品にはその前段がある。「お湯をかけて調理」という商品が得意であるが、レンジ対応商...
11月10日付日経新聞に来春の開業予定として<羽田に「メンズ館」 三越伊勢丹 新規立地を開拓>という記事が掲載されたが、その戦略意図を考察し、以下の記事として掲載した。 < 夢のパラダイス「三越伊勢丹・羽田メンズ館」?> http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2011/11/post-5822.html 売り場面積が伊勢丹新宿本店のメンズ館の約10分の1・1千平方メートルという陣容で望む、昨今の流通グループの戦略である狭小店開発と一線を画す展開だ。 一方、セレクトショップのユナイテッドアローズは、その狭小店フォーマットに磨きをかける展開で勝負をかけてきている。11月9日に東京メトロ表参道駅地下鉄構内(改札外)に小さなショップをオープンした。看板には「ザ ステーションストア ユナイテッドアローズ」と書いてある。 開店から1週間の11月16日に現地取材をしてみたが、改札を出てすぐの良好な立地とも相まって、店舗内に足を踏み入れる人、商品を手に取る人、レジに並ぶ人が引きも切らない状態だった。品揃えは雑貨、女性向けアクセサリーと袋物、衣料品。通行客のついで買い、衝動買いの取り込みを狙ったと思われるが、狭い店舗にオンナゴコロをくすぐる商品の数々をよくもここまで詰め込んだという感じのショップとなっている。ユナイテッドアロー...
11月10日付日経新聞に<羽田に「メンズ館」 三越伊勢丹 新規立地を開拓>という記事が掲載された。そこには、どのような意図が隠されているのだろうか。 記事によれば、羽田空港への出店は来春であるという。売り場面積は伊勢丹新宿本店のメンズ館の約10分の1とあるが、それでも1千平方メートルと、昨今都心で流通グループの戦略として散見される「狭小店開発」という規模では全くない。 強気の背景は、まずメンズ館のノウハウにある。記事では同館は<東京地区の百貨店の紳士服売上高の3割を占めるまでになった>とある。そして、もう1つは羽田空港の市場としての有望性だ。<国交省によると、羽田空港の10年の乗降客数は約6421万人と前年比約4%増加。今後も発着枠の拡大などで利用者の増加が見込まれる>というから、「縮む日本市場」においては見逃せない優良立地なワケだ。そこでのターゲットは<30~40代を中心とする男性出張客>だという。 前出の通り伊勢丹メンズ館は、バブル崩壊後のアパレル冬の時代における数少ない成功事例のひとつである。それを追撃しているのが阪急だ。梅田に続き有楽町メンズ館を先月オープンさせ、連日活況を呈している。しかし、それら以外の多くの百貨店の紳士服売り場に集う顧客は決して多くないという状況だ。では、「オシャレ男子」はどこにいるかといえば、いわゆる「セレクトショップ」に多く生息している。 ...



















